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【表現力豊かな踊りを踊るために大切なこと】


こんにちは。
アキです。
京都でフラメンコを教えています。
久しぶりの投稿になります。

今回は、『表現力豊かな踊りを踊れるようになるためにはどうすれば良いのか』をテーマにお伝えしたいと思います。

先日、ある生徒さんから、こんな悩みの相談を受けました。
「ソレアの曲を自主練習して、自分の踊りを動画で見た時に、自分のイメージとは全然違う踊りだったのでショックでした・・・」と、おっしゃってこられました。
彼女の動画を拝見しましたが、私は特に問題はないとは思いました。
しかし、本人があまり納得していない様子でした。
後日、私は彼女に「今、練習しているソレアを何度も何度も人前で踊った方が良いよ。人前で踊る度に、踊りに艶(ツヤ)が出てくるから!」と伝えました。
後日、彼女は自主練習したソレアの動画を送ってきてくれました。
すると、明らかに無駄な動きや余計な力が削ぎ落とされ、シンプルかつ洗練された感じが出てきました。
しかし、無駄な動きや余計な力が無くなった分、更なる弱点や欠点、今後の課題もハッキリと見えるようになってきました。

彼女の質問や疑問に答えるために、テクニカクラスで「踊りに必要な表現力の練習」に取り組もうと思いました。

私はフラメンコを始めてから、スペイン人の先生や日本人の先生、クルシージョなどの短期講習なども合わせると約30人ぐらいの先生にフラメンコを習いました。
先生によって教え方は様々ですが、今でも私がフラメンコを教える基本となり、基盤になっているのは、スペインで留学していた時に習っていた3人の先生方です。

私がスペインでフラメンコ留学をしていた時、毎日習っていた先生は3人でした。
●一人目は、女性のルルデス先生。
踊りはノーマルで普通タイプの方でした。

●二人目は、小柄な男性のフェリペ先生。
踊りはシャープで直線的な動き。
典型的な男性らしさを強調した踊り方でした。

●三人目は、容姿もお顔も美しい女性のマリア先生。
踊りは優雅でエレガントで曲線的な動き。
典型的な女性らしさを強調した踊り方でした。

私は約半年間のスペイン留学中に、この三人の先生方から毎日レッスンを受けていました。
当時、一番困惑して戸惑ったレッスンは、フェリペ先生とマリア先生の対極した指導方法でした。
午前中、フェリペ先生から男性的な踊りの指導を受けた後、午後からマリア先生のレッスンを受けている時に、フェリペ先生から習った踊り方をすると、マリア先生は「違う!違う!そんな踊りは女性っぽくない!女性なら、もっとこう踊らないと!」と、よく注意されました。
翌日、フェリペ先生のレッスンでマリア先生に教わった踊り方をすると、フェリペ先生は「違う!違う!腕はもっと力強く、力を入れて!強く!」と注意されました。
今でこそ、多少の使い分けはできますが、当時は本当に戸惑いました。

私自身、生徒さんを指導する上で「自分の踊り方が一番正しい」とは思いません。
人それぞれ、骨格や筋肉、体格や経験値によって、動きやすい動きや踊りやすい踊りは違います。
それが、表現力なら尚更、踊る人自身の心理状態や経験値で大きく変わってきます。

・踊りに表現力を出したいけれど、どう出せば良いかわからない。
・人前で踊る時に緊張や不安、心配などのマイナス要素が出てきて、表現力どころではない。
・表現力を出しているつもりでも、これが正しいのかどうかがわからない。
などなど、お悩みは人それぞれだと思います。

今回は【表現力豊かな踊りを踊れるための練習方法】を、お伝えしたいと思います。
『表現力に必要な事』
①呼吸
②手と腕の動き
③足の運び方と目線、です。

順を追って説明して行きましょう。
①『呼吸』
まず、お好きな曲に合わせて、ただ歩くだけの練習をします。
この時、踊りのテクニックとしては、前に足を出した時に、地面にはつま先から着地をしてください。
つま先からの着地歩行は、バレエやモダンダンス、コンテンポラリーダンス、ジャズダンスなど、ほとんどのダンスに共通したテクニックです。
普段、歩く動作は「前に進む」ことを目的としますが、踊りで歩く動作は「魅せる」ことが目的になると思います。
まず、「魅せる歩き方」を意識してください。
歩く時、地面につま先から着地をしようと思うと前に進みにくく、膝が曲がったまま歩いたり、腰が沈んでしまう場合があります。
つま先からの着地歩行は、まず膝下からの足を後ろに蹴り上げながら進みます。
サパテアードを打つ瞬間のような足の蹴り上げ方をします。
つま先が地面に着いた瞬間、腰を前に押し出し、足の上に体をすぐ乗せて歩きます。
そして、腰を少し前に押されるような感じで歩いて行きます。
この歩き方のテクニックに、表現力をつけるために最初に行うことは「呼吸」を意識的に使います。
大袈裟に、ハッキリと呼吸をしながら歩いてみてください。

なぜ、呼吸を使う事が表現力に大切なのか?
まず、人と会話している時のことを想像してみてください。
例えば、自分が凄く面白い映画を見たとします。
その面白かった映画を友人や知人に話す時、面白さを伝えようとして興奮したり、ゼスチャーが大きくなったり、声が大きくなったり、呼吸が荒くなったりした事はありませんか?
逆に、何か深刻な話や大切な話を友人や知人に説明しないといけない時は、冷静に淡々と話をすると思います。
話をしている人達を第三者が目撃した時に、「楽しそうに話をしている」か「喧嘩をしている」か「深刻な話をしている」かは、顔の表情と手の動き、そして呼吸だと思います。
「表現」が、目に見えるために最初に行う肉づけは「呼吸のパターン」だと思います。

音楽に合わせて、先ほどの歩くテクニックを行いながら、呼吸を足して行うと「表現」が目に見えてきます。
呼吸の方法は音楽にもよりますが、暗い曲ならゆっくり長くしたり、大きく長くしてみる。
明るい曲や早い曲なら呼吸を少し激しくしたり、細かくしたりして、それを動画に撮って確認します。
最初は動きが見えにくかったり、自分が思っていたイメージとは違っていたりしますが、やり方をいろいろと変えてみて何度もチャレンジしてみてください。
これを繰り返すことによって、呼吸が波になり自分の体に馴染んでくると思います。
まず、音楽と呼吸を意識してみることをお勧めします。

②『手と腕の動き』
心の状態が、一番体に現れるのは手足だと思います。
(個人差はありますので断言はできませんが)
人は緊張したり焦ると手足が震えたり、握りしめたりします。
踊りで何かを表現する時に、下半身だけで喜怒哀楽を表すのは非常に難しいですが、上半身だけで喜怒哀楽を表すのは、そんなに難しくはないと思います。
表現力をハッキリ表したいと思う場合は、手や腕をしっかり動かすことをお勧めします。
そして、この手や腕の動きは高さや位置、曲げ伸ばしによって表現力がガラリと変わります。
冒頭でお話をしましたマリア先生は、常に「女性らしさ」を強調するために、手と腕は胸の高さより下に下ろしすぎない様にと教えてくれました。
動きによって例外はありますが、常に手と腕は胸の位置より上に持って行きなさいと言われました。
よく、女性アイドルが顔の横にピースの手を持ってきたり、顔や顎らへんでハンドサインをします。
女性らしく可愛らしさを表したい時は、顔や首周りに手や腕を近づけると良いと思います。
そして、手のマノや腕の動きも、出来るだけ曲線を描くように動かすと踊りに丸みや優雅さが出ると思います。
マリア先生とは逆に、フェリペ先生は「男らしさ」を強調する踊り方を教えてくれました。
常に、手や腕は真上や真横、真ん前にしっかり伸ばし、力強く振ったり止めたり、指先まで力を入れなさいと教えてくれました。
常に、力強くて真っ直ぐで、はっきりとした線やラインを作りながら踊りなさいと教えてくれました。
腕や手だけでも、男性的にも女性的にも印象を変える事ができます。
更に、手を握りしめたり、思いっ切り開いたり、スカートや上着をガッツリ掴みながら踊っても、そこから表現は生まれます。
呼吸がハッキリと見えるようになったら、手や腕の動きを意識すると、自分らしい表現が出てくると思います。

③『足の運び方と目線』
呼吸と手や腕の動きが、ハッキリ見えるようになれば、次は足と目線を意識していきます。
曲によって足の運びは、まったく違う動きに変化させた方が良いと思います。
暗い曲を踊る場合、重量感と暗さを出したい時は足が空中に浮いている時間を極力減らしていきます。
足を引きずった感じでも良いと思います。
明るい曲を踊る場合、軽さや軽快さを出したい場合は、暗い曲とは逆に足が空中に浮いている時間を増やしていきます。
目安としては、スカートを1回づつ蹴り上げてスカートの裾が一瞬一瞬、舞うようにします。
そして、「歩く」から「マルカール」にレベルを上げて行きましょう。

暗い曲、或いは明るい曲のどちらでも構わないので、お好きな方から練習して行くと良いと思います。
足の動きと②の手の動きをハッキリ動かせるようになったら、上半身と下半身の動いてを一致させて、体全体で音楽と表現が見えるようにしていきます。
上半身と下半身の動きを一致させるための連結部分が①の「呼吸」になります。
呼吸をすることによって、手や腕や胸の動きと腰と足の動きを一つに連結させて、体全体の動きが大きくハッキリ見える役割を果たしてくれます。
例えで言うと、呼吸は電車の連結部分みたいな役割だと思います。
呼吸によって、お腹や胸下あたりが数㎜~数㎝の動きを作り、その呼吸に合わせて手や腕や肩、そして腰や足の動きを繋げていくように練習していきます。
そして、最後に「目線」や「目力」が大切になります。
踊りに必要な表現力の骨組み「呼吸」「ブラソの動き」「足の動き」ができたら、ケーキで言うデコレーションを「目線」や「目力」で更に補っていきます。
まずは、どこを見るか?
どんな見方をするか?
次は、どこを見るか?
この動きによって、踊りは更なる説得力と表現力が増して行きます。
毎回、同じ所を見ても良いですし、どこをどう見ても良いとは思います。
大切なのは、ハッキリ見ることだと思います。
ぼんやり見たり、ボーッと眺めたりするよりは、焦点をハッキリ合わせて見るが良いと思います。

「身体的テクニック」→「呼吸」→「手と腕の動き」→「足と腰の動き」→「目線と目力」
これで、今までとは違った踊りに変化出来ると思います。


先日、私のレッスンに来てくれているギターリストに、曲の構成を相談した時に「フラメンコに正解はないから!」と教えてくれました。

一つだけの正解を求めずに「あれをやってみよう!」「こうしてみよう!」「もっと、こうしてみよう!」と、いろんな表現力にチャレンジする事によって、踊りの広がりだけでなく表現力の広がり、印象やインパクトもドンドンと変化出来ると思います。
まずは、お好きなようにいろいろチャレンジして欲しいと思っています。

【おまけ】
フラメンコを始めて、数年後にフェリペ先生が日本に来日した時、フェリペ先生と2人でゆっくりフラメンコの話をする機会がありました。
その時、フェリペ先生が私に「フラメンコは上手い下手ではない。見た人の記憶に残ることが大切だよ」と教えてくれました。
「リズムが面白かったり、綺麗な踊りだったり、表現力が豊かだったり、何でも良いから見た人に大きな印象を与える踊りをした方が良いよ」と言われました。
私は、その話を聞いた時に冗談で「じゃ、めちゃくちゃふざけて面白い踊りでも良いの?」と聞くと、先生は即答で「claro(もちろん)!」と言ってくれました。

自分らしい踊り、自分にしか出来ない踊りを目指し、常に進化と発展出来るように自分を成長し続ける事が大切だと思います。

この記事を読んでくださった皆様が、もっともっと発展し新しい個性と才能を発見できますように、祈っております。
最後まで、読んでいただき本当にありがとうございました。

次回も、よろしくお願い致します。

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