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【表現力豊かな踊りを踊るために大切なこと ②】

こんにちは、アキです。
京都でフラメンコを教えています。
今回は前回に引き続き、踊りに必要な表現力について、もう少しだけ付け加えようと思います。

先日、ある生徒さんから自主練習の動画が送られてきました。
今、レッスンで行っている「グァヒーラ」をソロライブに向けて練習していらっしゃるのですが、練習の経過を見て欲しいとおっしゃられました。

動画を見た瞬間、多少の柔軟不足を感じますが、私が彼女から一番感じた印象は「硬さ」と「ザ・真面目」でした。
とにかく「覚えた振付をきっちりと、1ミリのズレもないように踊らなくてはいけない!」そんな、超真面目な「先生!宿題をやりました!」みたいな踊り方になっていました。
私は彼女に上半身の引き上げと、体幹を固めすぎずに少し柔らかく動かす事と、目線の使い方だけをアドバイスしました。

その数時間後、再び彼女から「練習しました。どうですか?」と動画が送られてきました。
見た瞬間、本当に驚きました!
最初の立ち方から歩き方、所作や表情まで、すべてがさっきとは打って変わって変化していました。
動画を見た後、私は彼女に賞賛の言葉を送りました。

普段、レッスンを行っていて思うのですが、彼女だけでなく生徒さんの大半の方が『踊りが上達しない&踊りが上手くならない原因=テクニック不足』だと思い込んでいらっしゃる方が多いと思います。
踊りが上達しない原因が、すべてテクニック不足ではないと、私は思います。
振付の反復練習やテクニカルな練習が不足しているから、踊りのすべてが上達しないとは限らないと思います。
【踊りが上手くならない=練習不足】
【踊りが上達しない=テクニック不足】
と、考えている方が非常に多いと彼女を見て痛感しました。

確かに、テクニカルな練習や振付の反復練習はとても大切です。
しかし、テクニカルな練習や反復練習ばかりに溺れてしまうと、「踊る真の目的」を見失ってしまい、踊る楽しさや喜びを感じなくなり、いつかは踊ることが苦痛になってしまうかもしれません。
「踊りたい!」「やってみたい!」気持ちが、「踊らなければならない・・」「練習をしなくてはいけない・・」と、好奇心や探求心が消えてしまい、義務感や脅迫観念に変化してしまう恐れがあります。

スペイン人のフラメンコアーティストのレッスンを受けた方なら、ご存知だと思いますが、ほとんどのスペイン人フラメンコアーティストは生徒にフラメンコを教える時、表現や感覚を重視し、体の動きやテクニックを比喩を使って説明をされる方が多いんです。
例えば
「自分の体が2倍ぐらい大きくなったと思って、どっしりと構えてみて!」
「体を石や岩のように、カチカチにしっかり固めてみて!」
「体の周りの空気を、手でかき集めるように柔らかく、ソフトに!」
こんな感じで、テクニックを教える時も言葉の比喩を使って説明をします。
どうして、スペイン人フラメンコアーティストの方は、このような抽象的な表現をされるのか?
スペイン人アーティストの頭の中には、教える曲の全体的なイメージと踊りの表現方法がハッキリと見えるからだと思います。
(例えば、映画を1本見て、映画を見ていない人に説明するような感覚だと思います。)

体の機能的な動きや技術力は、表現というよりは手段の一つだと思います。
料理に例えると、料理をする時、包丁の裁く技術はいろいろあります。
短冊切り、イチョウ切り、千切り、みじん切り、輪切り、乱切りなど。
しかし、料理の目的は美味しく作った料理を食べる事だと思います。
どれだけ、1ミリの狂いもない綺麗な千切りや短冊切りが出来たとしても、調味料の分量を間違えたり、煮込み時間を間違えたら、その技術力は無意味になります。
常に全体的な流れや全体像をイメージして練習することが、とても大切だと私は思います。

「自分は、踊りで何を表現したいのか?」
「私はこんな踊りの表現をしたいから、このテクニックが必要だ!だから、このテクニックを集中して練習しよう!」
そう考えて、自主練習に取り組めば、もっと上達は早くなると思います。

私自身も、ダンスを習い始めた頃やフラメンコを習い始めた頃に、自主練習をしていた時
「あぁ、これが出来てないから練習しないと・・」
「これも、出来ないから練習しないと・・」
「これも!あれも!それも、やらないと!」
と、テクニック不足のロジックにハマり、自信をなくしたり、落ち込んでしまう事がよくありました。
テクニックだけに囚われ、すべての原因がテクニックだと思い込んで、そこに溺れて行くと、そこから出られなくなってしまいます。

いつも「自分は何を伝えたいのか?」「何を表現したいのか?」を常に意識しながら、まず自分のやりたいことを明確にハッキリと見つけて、そこに向かって試行錯誤しながら工夫して行けば良い結果が得られると思いますし、違っていれば変えれば良いと思います。そうする事によって、新たな発見や新しい才能が出てくる場合もあります。
そして、何より「魅せる技術力」が身に付くと思います。


個性豊かな表現力は、優れたテクニックより勝る場合もありますし、人の心に感動と素晴らしい思い出を与えてくれます。
実際、冒頭でご紹介した生徒さんが良い例です。
テクニックに優れた方は、確かに表現の幅も広いし、クオリティの高い踊りが出来ると思います。
しかし、何かを出来るが最終目標ではなく「何を伝えるか?」「何を残すか?」を、絶対に忘れないで、日々の練習に励んでいただきたいと思います。

皆様が、表現力豊かな素晴らしい踊りが踊れる事を祈っております。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。

また、次回もどうぞよろしくお願い致します。






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