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【MediaTel】イギリスのアドレッサブル広告の未来 (2020)

ampersandのニコル・パンギスさん曰く、アドバンストTVとアドレッサブルTVは、意味は殆ど同じとのことでしたので、イギリスのアドレッサブルTV事情はどうなってるのか気になり、調べてみました。
Decipher Group(デサイファー)は、2001年に設立されたイギリスのコンサルティング会社です。
何事もダイナミック&ワイルドで、フリーダムなアメリカとは違った、イギリスならではの、複雑な業界事情が垣間見える内容になっています。
※オリジナルの動画はYouTubeで公開されています⇒コチラから。

こんにちは、ナイジェル・ウォーリーです。Mediatelの未来のTV広告セッションへようこそ。今回はイギリスのアドレッサブルTVの未来についてお話します。

現在の状況を見てください。課題の視点から、英国のプラットフォームの状況と、取り組みを見ていきます。業界は、アドレサビリティを広告主に提供するために、変わる必要があると考えています。テレビの機会について幾つか深刻な事実を説明します。多くの場合、アドレッサブルTVには、2つの異なる行動様式という観点があります。昔ながらのテレビと新しいデジタル…私はこの構造はあまり役に立たないと思っており、ここではオーディエンスvsユーザーといった議論でお話しします。アドレッサブルTVや、オーディエンス文脈について議論するに、より便利であり、ユーザーグループ、個人や小型デバイスといったユーザー文脈を扱っていきます。これについては、この後説明していきます。

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スライドに入ります。2つの接点の考え方を少し説明します。視聴者を見ると、大画面やラウンジでは、共有した視聴者を相手にしています。通常複数の人を相手にしますが、スマホ、タブレット、ラップトップなどでは、個人を相手にします。ログインしていない可能性が遥かに高い。小さな画面を使っているときは、ログインしていることが殆ど。これは、データやターゲティングの面で大きな影響を及ぼします。大きな共有画面でインタラクティブな広告を実行することは殆ど不可能です。新しいインタラクティブなフォーマットをサポートするのはスマホやタブレットの様なデバイスだけです。大画面では、少なく共オーディエンス測定とサーバー測定の組合せが必要です。パネルと調査データを組合せた新しいモデルが登場するいっぽう、(スマート)デバイスは、ウェブ測定に対応しています。商業的な意味合いでは、明らかに大画面の取引の方が多いのですが、興味深い活動の多くは、ユーザーの世界で行われています。これは、広告費がそちらに流れていくということを意味します。

ターゲティングの選択肢について考えたいと思います。繰り返しになりますが、しばしば、大画面テレビは全国レベルのターゲティングのみ、という思い込みがあったからです。イギリスでは、幾つか注意点もありますが、殆どの放送局は全国放送で、巨大な全国のテレビ視聴者にしか配信できません。インターネットと常に比較されますが、ここではアドテクを使って、ユーザーを特定、ターゲットを絞ることができます。私たちは、明らかに、現実は違うことを知っています。例えば、テレビを見てみると、多くの放送局が独自のターゲティング機能を持っています。洗練されたメディアプランナーは、テレビを使用して、伝統的なメディアプラン上でターゲットを絞った配信をするために、時間帯や番組を選んでいます。ウェブでは、アドテクのかなりの部分が、ユーザー(個人ID)の識別ではなく、実際は属性で配信しているのが真実です。加えて、その属性は世帯レベルです。つまり現在のテレビのターゲティング能力にはこのような対立性があると考えます。そしてインターネットは明らかにフラウド。しかし、非常にエキサイティングなのは、アドレッサブル広告がどの様にこの中に加わるかです。

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テレビは、ウェブで開発されているデータ、ツール、技術に対応します。同時に、私たちは、インターネットのベースをテレビにより反映しなければなりません。特に、YouTubeの様なものが大画面化してきています。特に、リニア放送を中心としたアドレサビリティは、更なる次元をもたらします。地域ターゲティングの話をしましたが、最近では、コンテキスト(文脈)ターゲティングもみられる様になっています。これは、メディア代理店が、特定番組の視聴者をターゲティングしたり、テレビに関連した特定の行動特性を示す視聴者をターゲティングしたり、アドレサビリティを利用、メディア代理店が、デモグラや年収などに基づいて、視聴者を選ぶことを可能にするものです。既存のテレビでは、純粋なジオターゲティングは難しいものの、アドレサビリティは超ローカルな地域ミックスをもたらします。これは非常にエキサイティングで、非常に狭い地域や、郵便番号を絞って、視聴者をターゲティングできます。この様に、アドレサビリティがテレビに新たな次元をもたらすという点で、多くの作業が行われています。重要なメッセージです。アドレサビリティが、テレビで初めてターゲティングをもたらすということではありません。

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機会はどこにあるのかについて話したいと思います。
左側にあるのが Thinkboxのドーナツチャート「1日の動画視聴」です。調査と幾つかの分析を使用しています。重要なのは、リニアテレビ(生放送、録画番組)が、今でも重要な部分を占めているということ。更に分析を進め、大画面と小画面という2つのコンテクストに分けてみました。アドレサビリティの機会を見ていると、やはり注目すべき重要な領域は、左側の列であることが分かります。右側の列を見ると、こちらも全ての視聴者が対象です。YouTubeは全4時間の中で大きなセグメントを持っていることが分かります。SVODは広告を持っていません。YouTubeは既にアドレッサブルプラットフォームを持っています。NetflixやDisney+の様な新しいSVODが大画面で視聴できるようになったことで、これら2つ(YouTube, SVOD)の視聴ブロックが大画面に移行しています。右ブロックも重要ですが、私たちはそれが左側のパネルに戻ってくることを期待しています。それを待っているのは、私たちがアドレッサビリティの機会の中核として、大画面にフォーカスしているからです。

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左側の伝統的なテレビは、歴史的に、リニア放送以外何もありませんでした。番組⇒広告⇒番組⇒広告。録画が登場しても、広告の風景は全く変わりませんでした。録画番組でのターゲティング広告の機能については、Sky以外のプラットフォームで、話題になっているのを見たことがありませんが、徐々に成長分野になると思います。今のところ、動画視聴時間全体の10%程度であることを考えれば、未来の機会の領域です。2005-6年頃、インターネットに伴い、キャッチアッププレイヤーが、初めてAVODをもたらしました。当初はアドレッサブルではありませんでした。AVODは、非常に多くを解決します。そして、放送局がAVODミックスに性年齢のアドレッサビリティを持ち込むまで、随分時間がかかりました。そして、AVODローンチ直後、各キャッチアップ プレーヤー内にストリーミングIPチャンネルが開設されました。それが、業界が言うところの、サイマルキャストの機会です。左側のテレビと右側のキャッチアッププレイヤーの区別は、テレビとデジタルは別々という考えに基づくものでした。しかし残念なことに、世界は急速に変化しています。VODがテレビプラットフォームの大画面に移動するのを見ました。その後、リニアIPが大画面に登場。YouViewは100のIPストリームのリニアチャンネルを持っていますが、今日イギリスでは放送とIPストリーミングの組合せで、リニアチャンネルを受信するTVプラットフォームを持つことは珍しくありません。それが現実です。インターネット側では、広告型短尺動画~YouTubeやFacebookを見てきました。イノベーションです。ネットではSVODが登場しました。Netflix、Disney+、iQの登場により、SVODはプラットフォームへと飛躍します。AmazonプライムやNetflixがYouViewやFreeviewベースのスマートTVで視聴できるようになって長い時間が経ちました。今では、ソーシャルビデオがテレビにまで進出しています。これがテレビの風景なのです。
今日の議論では、これを取り上げます。イギリスのアドレッサブルTVの風景を見たとき、これはツールのスイートです。これら全てはデジタルですから、テレビvsデジタルの議論に抵抗する理由が分かるでしょう。しかし、更に重要なのは、大規模な視聴者層のテレビでは、IP配信と放送局の番組が非常に強くミックスされているということ。このチャートでは、IPはどこにでもありますが、勿論1つ余分な混乱があります。残念ながらアドテクの世界には2つのバージョンがあります。

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一つは、クローズドプラットフォームによって構築されているもの。SkyやVirginは独自サーバーから独自にIPビデオを運用配信しています。その様なプラットフォームで構築されているアドテクスタックは、独自プロトコルやコードに基づいていますが、Webベースのプラットフォームは違います。FreeView Play、YouView、スマートTVでは、スマホやタブレットで見るようなWebサービスに近いもの。放送やサーバーからのWebビデオです。

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左側はプラットフォーム中心で、プラットフォームがアドテクスタックを制御右側放送局が中心で、アプリでのアドテク開発を推進。これら2種類のアプローチは、イギリスのプラットフォームにおいて非常に重要です。Skyは900万人弱の加入者を抱えています。ブロードバンドやその他サービス(VirginやC-4)を利用している加入者もいます。加えてWebベースプラットフォーム、YouView、FreeviewPlay、Freesat、その他のスマートTVの世界。つまり、2,500万~2,600万世帯がこれらのプレーヤーで分割されているということです。

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これがイギリスの世帯ならば、アドレッサブルTVの機会はどこにあるのか。また、テレビ視聴の何%がアドレッサブルなのか。分割して順番で分けたとき、最後の薄いグレーの箱がイギリスのリニアテレビ。イギリスならではのユニークなものとして注目すべきは、広告無しのBBC チャンネルが、リニア全インプレッションの30%を占めていること。つまり、イギリスでアドレッサブルな機会を考慮するとき、リニア視聴の30%がアドレッサブルの能力を持っていないということを押さえる必要があります。奇妙なことに、BBCは自らのPRを配信するためアドレサブル技術を採用しないのです。代理店からすると、これは重要なリミッター要因です。もう一つ、ITVはイギリスの視聴率の約20%を占めていますが、現在、リニアアドレッサブルの選択肢はありません。チャンネル4(C4)は10%。彼らのSkyとの契約については詳しくお話しします。チャンネル5やその他の有料チャンネルもあります。
繰り返しになりますが、我々が注目すべきポイントがあります。左下の黄色い箱を見ると、現在のところ、アドレサブルはリニアとその他のフォーマットでしか配信されていませんが、SkyとVirginでは配信されています。つまり、リニアアドレサビリティを見ると、利用可能なオプションはこの黄色の箱の下の方にしかなく、英国の視聴環境の約5分の1を占めます。この黄色い箱にチャンネル4が含まれていないのは、Sky-Qであと1年は放送されないためです。リニアの観点から見ると、現在、選択肢は非常に限られており、潜在的な選択肢をどうやって広げていくかということが、私たちの課題の一つです。それについては、後ほどお話ししたいと思います。

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各チャネルの機会を個別に見ていくのですが、少し違う方法でレイアウトしたいと思います。英国の取り組みを幾つか挙げてみます。無料放送の放送局(BBC/ITV/C-4, 5)は英国の全プラットフォームで視聴できます。米国視聴者のためには、アメリカの各CATVネットワークに、広告枠を空の状態にして、BBC-1,2,3,4に相当するチャンネルが配信されています。ローカルCATV事業者が、ローカル広告の販売に使用できる広告枠となります。アメリカでのアドレッサブル広告のローンチに大きく貢献しています。ローカルCATV事業者レベルで、空の広告枠の利用を許可しているからです。英国にはそれがありません。英国には無いということを覚えておくことが重要です。有料チャンネルについて見ると、明らかに有料TVプラットフォーム上にしか存在しません。ですので、有料チャンネルのアドレサビリティは、Freeview、Freesat、その他スマートTVにはないことを覚えておかねばなりません。YouViewではIPチャンネルとして再生されるので、将来的にはそこでの利用可能性があります。

今までの市場の活動を見ると、グラフの黄色い部分はSkyプラットフォームでのリニアアドレサビリティを示しています。Sky-Qが市場に登場してから5~6年が経過しており、Skyメディアが販売するチャンネル、Skyが許諾したチャンネル、チャンネル5やViacomスイートにリニアアドレサビリティを提供しています。既に確立されています。最近では、VirginがSkyと契約してSky-Qの機能を採用、Virgin独自の広告挿入システムに組み込んでいます。英Virgin自身はチャンネルを保有していませんので自身ではセールスチームを持っておらず、アドレサブル広告を販売していません。しかし、この取引が彼らに与えたものは、Skyメディアが販売した取引を実装する能力です。つまり、Skyメディアが、Skyチャンネル/代表チャンネルでアドレサブルCPを販売した場合、それはネットワーク内のどこでも再生されるということです。そのため、Skyボックス、Virginボックスどちらでも、アドレッサブルCPを配信でき、SkyとVirginは、レポーティングとデータ構造でも合意しています。Virginホームズからのデータは、Skyホームズのデータに統合されます。それが何を意味するかというと、それらの2つの住宅における時間のほぼ半分は、アドレッサブルを受信することができます。そして、そのミックスにチャンネル4が加わります。完全に実装されるまでもう1年かかると言われていますが、Sky-Virginの新チャンネルになります。販売事業者についての情報はまだありません。チャンネル4の販売は、調整可能なCP(枠)中心に販売されると推測しています。Sky-AdSmartの技術チームによって実装され、Sky、Virginのプラットフォームの両方に渡って配信されます。

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他にも色々なものが出てきています。YouViewのリニア挿入トライアルに注目したいと思います。それは非常に良い独自技術で、Sky-AdSmartとは異なるアプローチです。IPで放送に広告を挿入します。そのため放送局の管理下でアドレサビリティを提供します。ですから、AdSmartで見ているような、プラットフォーム毎のアプローチではなく放送アプローチです。技術が実装されれば、そこにあり、構築されており、機能します。市場への展開については、今はまだ放送局からの情報を待っています。数年前には他にも幾つかの取り組みがありましたが、ITV/Samsung/Sorenson(Media)は、SamsungのスマートTVで、リニア挿入の実証実験がありましたが、製品化には至りませんでした。英国と汎欧州では多くの作業が行われました。全スマートTVには、HBBTVという固有技術が組み込まれており、リニア広告挿入を提供できるのですが、今のところ展開されていません。Sky-AdSmartプラットフォームを見ると、リニア配信のみならず、AdSmartを使って、STB経由やアプリでのVOD、Webプロパティにも広告配信が可能です。また、全放送局やサービスの全データを取得するプラットフォームワイドなアプローチのため、リニアとVODで連携した広告CPを展開できます。ですので、VODだけのCPを行いたくない幾つかの放送事業者は興味を持っています。これは我々が常にみているポイントです。私は、ライブリニアと、大画面のVODとスマホ等の小さな画面のVODを連携させた広告CPを打つことはできるのか?

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興味深い問いです。英国ではどの様な放送局が行っているでしょう。そして、プラットフォームの右側、YouView、Freeview、他のスマートTVを見ると、Sky-Virgin以外の無料放送局で、ライブリニア・アドレサビリティは実現できるでしょうか。技術の幾つかはYouViewと他のスマートTVで研究されていますが、展開されておらず、現時点では、英国Sky-Virgin以外の放送局では、リニアアドレサビリティを提供できません。これは、本当に対処せねばならない問題です。勿論、“大画面や小画面のテトラパック”(スマートTVでのTVerの様なもの?)でもアドレサビリティを提供することは可能です。個々の放送事業者は、アドレサブル広告を配信できると主張するでしょうが、それは、小さなデバイスで表示されるアプリのVODに過ぎません。

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大きな問題は、彼らはリニア(アドレッサブル)を開発できたとしても、現時点でライブとオンデマンドでの連携はできません。今のところ、Sky-Qプラットフォーム上ではできません。ですので、放送局のアプリでCPを実施し、並行してSky-Virginで配信されている放送でCPを実施することになります。しかし、時間帯や、放送スケジュールを除き連携できません。数字の面ではまだ非常に小さいです。Samsungは、スマートTV上のAVODアプリにアドレッサブルTV機能を構築しています。英国で既に展開されています。そして勿論アマゾンもプレーヤーのひとつ。大小両画面のFire TVデバイスアプリに膨大なデータを活用、アドレサブルTVの配信を考えています。そして、それが今の英国の風景です。

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誰が地上波で(アドレサブル広告を)配信できますか? 誰がIPでアドレサブル広告を配信できますか? 誰がVODに広告を配信していますか? 英国に関しては、現時点でほぼドライブ出来ているのはSkyプラットフォームだけです。無料放送を見てみると、それは本当に問題のある領域です。現在のところ、無料放送プラットフォームの性質上、各放送局が協力するコンソーシアム方式を採用しています。それはつまり、プラットフォームレベルではなく、放送局レベルでの広告イノベーション推進に重点が置かれ過ぎているということです。英国ではそのように呼びかけています。放送局に、キャッチアップアプリへアドレサビリティを提供するといった個々のプロジェクトから、重点を、プラットフォームレベル(の改善)に移してもらう必要があります。そのことで、Freeview Playやその他スマートTVレベルにおいて、アドレッサブルTVの重要なイノベーションを実現しましょう。プラットフォームレベルで、YouView上でその様なケーパビリティを起こしましょう。このチャートの右側では、やるべきことが沢山あります。

お疲れ様です。お分かりのように、英国ではアドレサビリティについて多くの作業が行われてきましたが、やるべきことはまだあります。私たちは、メインストリームのテレビ以上に、個人的なユーザーデバイスの世界に重点が置かれ過ぎているという、重大な懸念を持っています。また、多くの視聴者は大画面の共有テレビへ移行しています。だからこそ、業界は、それに対応すべくフォーカスを変更すべきだと感じます。また、有料放送だけでイノベーションが起きているのも問題です。そして勿論、英国では、50%以上の家庭が無料放送のプラットフォームを持っていますが、そして今のところ、そこでの広告イノベーションについては、十分に作業が行われているとは言えません。ですので、私たちの行動喚起(Call To Action)は、放送事業者が個々のキャッチアップアプリ周りのイノベーションから、FreeviewやYouViewの様に、一緒に参加しているコンソーシアム内のイノベーションに移行して欲しいということです。そして我々は、代理店にもそのシフトを支援頂きたい。放送事業者に、視聴者が共視聴する大画面のTVプラットフォーム周りでのイノベーションに集中するよう、働きかけて頂きたいと思っています。以上、ご清聴ありがとうございます。未来のメディアTVでお会いできるのを楽しみにしています。

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