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【AW2020NY】マルチスクリーン視聴にはマルチスクリーン配信が必要(Multiscreen consumption requires multiscreen delivery)

久し振りの更新は、AW2020から、日本では配信されたなかったテレビの未来に関するセッションの要約です。まだ購入できる在庫量が少ないという課題もあるものの、アメリカでは、リニア放送におけるアドレッサブル広告が、デジタル広告と比較しても高い評価を得ていることが興味深いです。

VABのDanielle DeLauro(EVP)です。VABの調査によると成人の3分の2が、COVID-19で、マルチスクリーン視聴が主流となり、新しいテレビ技術やプラットフォーム利用が加速したと答えています。マーケターは視聴者を追跡する必要があります。本日は3つの視点からテレビCPの知見を共有します。業界のイノベーター3人にご参加頂きます。Andy Fisherはマークル(電通グループ)のM1アドバンストTV責任者。Cara LewisはAmplifi(電通グループ)のビデオ投資担当EVP。Ari TurnerはAmpersandのSVPセールスオペレーション担当。Ariから始めましょう。パンデミックに視聴者はどの様に動画を消費し、メディアやプラットフォーム間で行き来しているか調べたところ、基本的にはテレビしか見ていないことが分かりました。デバイスやプラットフォームに関係なく、良質なテレビコンテンツを見たいだけでした。この事実クライアントへのアプローチにどの様な影響を与えていますか?

- Ari Turner (Ampersand)
良いポイント。全てはテレビなんですよね。人々は、あらゆる画面でプレミアムコンテンツを見つけます。コンテンツは断片化していますから、私たちはクライアントにあらゆる画面での広告機会を提供する必要がある。Ampersandには、アドレサブル広告製品がありますが、リニア・アドレサブル、VODに対応。OTTやCTVにも配信可能です。これらの画面を組み合わせて、視聴者が求めるフロントエンドだけでなく、バックエンドでも成果を提供できます。レポーティングについては、これら全てのスクリーンで測定とアトリビューションを両方出来ることが重要。当社のアドレサブル製品は、現在、世界の60%に広がっています。4,200万のライブ・リニア世帯に他の製品を合わせて、あらゆるスクリーンのオーディエンスへ配信できるようにすることが、私たちの注力していることです。

- Danielle DeLauro (VAB)
Amplifiも同様にアプローチしてますか? 動画を全体的に見て、クライアントのために纏めようとしていますか?

- Cara Lewis (Dentsu Aegis)
その通りです。パンデミック前から動画を全体的に見ていました。私たちは、動画をバイイングのあらゆる方法を横断的に見ています。マークルのM1もです。総合的に投資判断していますが、動画を単なるリニアTVとして見ている訳ではありません。パンデミック後も加速すると思います。消費者は変わっています。

- Danielle DeLauro (VAB)
(プランニングは)今でもまずリニアからですか? 或いは、多くの議論は デジタル動画から始まりますか?

- Cara Lewis (Dentsu Aegis)
デジタルを第一に考えます。多くのクライアントの為にリニアTVをレイヤーしていますが、様々なアプローチが取れます。ブランドによっては、スケールや認知を高めるためにTent Pole(大ヒット番組)的アプローチをとる場合もあります。如何にデジタル中心でプランニングするか、アドレサビリティやオーディエンスを構築するか、リニアを重ねていくか、基本的には連携します。多くはアドレッサブルですが、本質はリニアTVですよね? それはネットワークが販売するハイパーターゲティングやオーディエンスツール、オーディエンスにアプローチ出来るコネクテッドTV。全てがプランニングされており、デジタルファーストのアプローチを取ることもあります。多くの場合は、リニアよりデジタル、デジタルよりTent Poleアプローチです。

- Danielle DeLauro (VAB)
視聴者はリニアTVをその様に見ているので、いい方法です。ではどうやって重ねる? そしてコンテンツを見ているとき、どの様に、どこへ行って、それをまとめていく? Andy、あなたの仕事の多くは、様々なプラットフォームを追加していくことだと思います。測定について話しましょう。現在16以上のイニシアチブがあり、真のクロスプラットフォーム測定ソリューションへの道を見つけようとしています。あなたのソリューションを教えて下さい。

- Andy Fisher (Merkle)
不可能な質問です。ありがとう。

- Danielle DeLauro (VAB)
簡単な質問から始めてるわよ。ついてきて。

- Andy Fisher (Merkle)
課題は、世界が断片化していることです。多くのプラットフォームがあります。プラットフォーム毎に異なるアプローチを持っていますから、完璧な答えはありません。しかし、ここ2~3年で良い方法が沢山出てきています。オーディエンスから始めましょう。共通のオーディエンスがいなければ、あなたの戦術は終わっています。広告主は自分たちのオーディエンスを構築すべきです。プラットフォームにオーディエンスがプッシュされることで、測定は簡単になります。そうすれば、プラットフォームから情報を取得できるように交渉、異なるプラットフォーム同士を組み合わられます。
ウォールド・ガーデンには課題があります。多くの場合、妥協も必要です。特定のパブリッシャーやプラットフォームのために、ある種のウォールド・ガーデン専用の測定を構築します。幾つかのウォールド・ガーデンとクロスプラットフォーム・アプローチがあれば、非常に良い仕事ができるでしょう。それは挑戦です。
常にオーディエンスから始まるのです。多くの広告主がそれに気づき始めているのは興味深いです。ペルソナやクッキーベースのオーディエンス、その他のオーディエンスなど、企業全体で定義は多岐に渡りますし、広告以外のチャネルでもオーディエンスの定義は多岐に渡ります。eメールやダイレクトメール等のチャネルでも定義できますので、それらをまとめて扱えるのは、広告主にとって非常に重要です。

 - Danielle DeLauro (VAB)
オーディエンスファーストのアプローチですね、Ariの意見は? Ampersandで重要なのは分かってますが、クライアントと話し合って、随時修正していくことだと思いますが、テレビとデジタルという異なる媒体について、どうやってハードルを乗り越えますか?

- Ari Turner (Ampersand)
Andyの発言に戻りますと、オーディエンスについて考えるのは私たちも重要です。完全に同意です。クライアントが探すオーディエンスについて話している際、彼らが1stパーティデータを持ってこられる様にしたいと思います。Ampersandプラットフォームで何ができるか話す時は、ローカルや全国でリーチ可能なオーディエンスを探します。同じオーディエンスをデジタル・アタッチメントに適用できれば、広告主はローカル、全国のリニア空間で見つけたのと同じオーディエンスを、デジタル空間で見つけられます。それがプラットフォームの目標であり、やろうとしていることです。
技術面ではいつもマントラを唱えています~「完璧は善の敵」。リニア空間では、確かにデジタルでは可能なリアルタイム最適化のアーキテクチャは多くありませんが、だからといって、スクリーン上で求めるオーディエンスを販売したり、視聴出来ない訳ではありません。リニアではリアルタイム最適化ができないため、配信状況を理解して表示、キャンペーンのデジタル部分を最適化することで、全体的に支援できます。
マルチスクリーン・テレビのパラダイムに向かう機会は既に存在していると思います。

- Andy Fisher (Merkle)
Ariさん、自分を安売りしないで。仰る通り最適化の観点ではリニア・アドレッサブルの世界はかなり遅いですよね? でもアトリビューションの観点では、かなり質が高いですよね? (しかも)PII(Personally Identifiable Information=電話番号、メアド、名前等プライバシー性の高い情報)に紐付いていますよね? お金を払ってくれる世帯がありますから。その空間にフラウドがないという事実。ボットがいないという事実。ビューアビリティの問題がないという事実。 ある意味、リニア・アドレッサブルの世界は金字塔であり、デジタルより遥かに優れています。

- Ari Turner (Ampersand)
一長一短です。Andyに同意です。私たちはそこに到達するために、妨げとなるものをそのままにしませんが、双方にメリットがあるのは間違いない。(リニア・アドレッサブル)短期間で随分成長しましたね。

- Danielle Delauro (VAB)
Caraのクライアントは? 2つの差を考えてみて下さい。Andyは良い指摘をしたと思いますがデメリットもあります。クライアントはどの様に是正している? 日常のシナリオであなたはどう対応しているの?

- Cara Lewis (Dentsu Aegis)
素直に「学んでいる」と言わねばなりません。100%でも、完璧でもないかもしれませんが、乗り越えられると思います。多くのクライアントがいますので、他社から学ぶこともできる。キャンペーンで得たフィードバックや、他社での実施内容をまとめ、社内で話し合うだけでなくAmpersandの様な外部にもフィードバックを持ち込み統合していくことが必要です。
課題は2つある。まず、私たちのところに来るのは、使用データが安全かということ。だから、Andyやチームと話してM-oneをどの様に使用しているか、私たちの持っているデータも確認します。もうひとつはオーディエンスの数はまだ少ないこと。理解せねばならないのは、マスを買うよりもスケールが小さいということです。しかし、マスには沢山の無駄打ちがあります。大量購入していたらどうなるかを理解して貰うことが大切なのですが、つまり、もっと小さくなりますがより効果的、ということです。
クライアントと話した2つのポイントはこれだと思います。

- Danielle DeLauro (VAB)
ご存知の通りオーディエンスは少し違いますね。また、リーチを少し拡張可能にするでしょう。Andy、多くの人がクロススクリーン測定に取り組んでいます。そのひとつはプラットフォーム間で重複しないリーチやフリークエンシーです。質問は、実現まであとどれ位か?  フォローアップすべきものは何か? ということです。ビジネスの成果についてはこれまで多くのことが語られてきましたが、マーケターにとって本当に重要なのはそれです。KPIを満たすことではありません。それでもリーチやスケールは重要ですか? 或いはセールスやローワーファネルの指標に集中すべきですか?

- Andy Fisher (Merkle)
ワオ、質問が多いですね。(今日は易しいのにしてるわよ、いつもはもっと難しいから)重複しないリーチについては多くの取り組みがあります。それは良いことです。完璧な解決策はあるか?答えはNO。しかし我々はニーズを感じており状況は良くなっています。広告主がそれを要求し始めたのです。多くの統合も進んでいますね?それもプラス要因です。異なるウォールド・ガーデンにまたがる複数チャネルで、重複しないリーチを得るには、現実的な課題が幾つかあります。リニア・アドレッサブルでは質の高い重複排除リーチが出来ますよね? そこは非常に明確です。そしてチャネルをまたいで他のチャネルと一緒に。重複リーチの観点ではリニア×リニア・アドレッサブル、リニア×デジタルで行うのは困難ですが、少なくとも推定し、最適化が可能な技術はありますね。

- Danielle DeLauro (VAB)
測定が重要な理由は、様々なスクリーンでコンテンツを見ているからです。多くの断片化があります。全てのスクリーン、全てのプラットフォームでの測定は難しいものです。ご指摘の通り、多くはウォールド・ガーデン化しており、それにまつわる難しさがあるのです。しかし最終的には"Follow the Audience "。Ariに質問ですが、コンテンツは戦略にどう関わっているのでしょう? テレビのキャンペーンを考える時、コンテンツはどう戦略に組み込むのでしょう? コンテンツファーストのアプローチですか? クライアントと話すとき、コンテンツはどう関わってくるのですか?

- Ari Turner (Ampersand)
「コンテンツが王様」というパラダイムからの脱却は興味深いですね。今でもコンテンツが王様で、どこで探しているオーディエンスを見つけるかは、コンテンツが決定的な要素です。20年前と比べると、分析やデータドリブンの世界では、オーディエンスだけを見る様になってきました。恐らくその中間位でしょう。しかし、私たちは、コンテンツは依然重要と考えています。コンテンツを活用したいのです。私たちはコンテンツからその視聴者を理解する能力を持っています。広告主は、プレミアムコンテンツや、オーディエンスが視聴している他の場所を購入できるように、分析やインサイトを利用できます。コンテンツは、パズルの大きなピースです。重要であることに変わりはありません。コンテンツはそのもの・実体と、求めるオーディエンスを統合して、全てのスクリーンで購入できます。つまり今でも大きな役割を果たしています。

- Danielle Delauro (VAB)
クライアントはコンテンツに何を見ていますか? コンテンツが重要だと彼らから聞いていますか? 或いは純粋にオーディエンスを求めていますか?

- Ari Turner (Ampersand)
代理店の皆さんにも聞いてみたいのですが、両方と思います。プレミアムコンテンツの重要性は変わらない一方、コンテンツを通じてリーチするオーディエンスからインサイトや分析を得られます。皆さんはどう思います?

- Cara Lewis (Dentsu Aegis)
クライアントは今でもコンテンツを求めています。先ほども言ったように、Tent Pole的なものがコンテンツで、様々な場所にあり、私たちはそれに合わせています。コンテンツへのアプローチは、ブランド側に統合して(番組を購入して)もらうか、構築したオーディエンスに合わせて番組を選ぶかです。構築においては、何を視聴していて、どこにいるのか。そして購入可能な場所を探します。オーディエンスを使う時は、基本的に「購入したいコンテンツでオーディエンスを探したい」となります。それは意味のあることで、私たちはそこへ向かいます。コンテンツは消費者が言う様なものではありません。「そんなの見たかなあ、覚えてすらいないなあ」といった具合。チャンネルやデバイスすら覚えていないこともあります。彼らは「サムスンのTVにRokuをつけて『Xショー』を見た」と言い「OK」と答える。「そういうことか...他には何か?」と尋ねる。実際彼らはどこで見たかは気にしていません。彼らが見るもの。コンテンツは極めて重要です。

- Danielle DeLauro (VAB)
それを聞くと、無料ストリーミングサービスの話をしたくなります。特にCOVID-19以来多くの話がありました。人々は本当にサービスをスタッキングしている様です。有料サービスから始まって NetflixやDisney+が人気に。COVID以降、より多くのコンテンツを求めるようになりました。ピーコックは6週間で50%登録者数を増やしたと言います。そして今、勢いとスケールを増しています。質問ですが、無料ストリーミングサービスはどうなりますか? スケールや質・量のある本物のプレーヤーにいつ頃なると思いますか? クライアントに対してはどうアプローチしていますか?

- Cara Lewis (Dentsu Aegis)
無料領域には間違いなく投資しています。AVODスペースもです。予測できませんが、スケールを得るのはすぐだと思います。消費者は半年以上前から家にいてリモートに対する認識を改めています。以前の様に、まずテレビを点けてチャンネルXを選局すようなことはありません。Rokuを介してHBOを見ます。急いで仕事から帰ってきて、子供たちを寝かしつけ、夕食を食る様なものではなく、時間が出来たから様々なことをしています。今、彼らには番組を見たり、プラットフォームを試す時間がある。それはこれからも続くと思いますので、スケールの拡大が見られると思います。しかしそれは断片的です。見る場所が沢山ある。それが最大のピースです。ケーブルチャンネルが多い気がします。かつては、多くの異なるデジタルの場所がありました。今では、多くの異なるコンテンツを見る場所と方法があります。間違いなく断片化していくでしょう。そのためにはどう購入し、どう投資するか。完璧なフリークエンシーキャップはないことを知る必要があると思います。非常に重要です。電通は、その点で良い仕事をしてきたと思います。私たちには、CTV分野でクライアントに構築した戦略があります。

- Danielle DeLauro (VAB)
Andy、最後だけ簡単な質問です。ストリーミングのローンチに伴い、人々はサブスクに興味津々です。成功と失敗に伴って指標も良くなっていくと思います。成功の判断に相応しい指標は何ですか? コンテンツはそこに含まれますか? ストリーミングにおいて、コンテンツの量と質を表す指標はありますか? 我々はもっとコンテンツを評価すべきですか? 45秒で答えて下さい。

- Andy Fisher (Merkle)
そうです。答えはYesです。最初に言いますが、データの観点から見ると、私たちは多くのストリーミングサービスと統合しています。小規模で断片化されていますが、集計して結果を出せるのは特筆すべき点。サムスンやVizioの様なOEMがやっています。CTVにはその様な市場がありますので、我々は既に沢山買収を実行しており、成長・統合を期待しています。これは良いことだと思います。
オーディエンスの質を高める点では良い仕事をしてきたと思いますが、コンテンツの質を高めるという点ではそうは言えません。そのため、この領域の動きが活発になっています。私たちが最初にコンテンツに数学を適用したのは、「1 :ブランドセーフ。ゼロ:ブランドセーフでない」ということ。今はコンテンツにメタデータが関連付けられていて、そのデータを使って入札するような広告商品も出ています。そして文脈を理解し、それに沿って最適化する様な道を歩んでいますが、まだ先は長いです。広告主が私たちに求めるのは良質なコンテンツであり、お金を払っても見たいと思うか確認することは重要です。私たちもコンテンツを消費しているので、私たちにとっても重要なことです。エコシステムがうまく機能し、良質なコンテンツを作った人が報酬を得られるようにすることが重要です。改めて思いますが、これは視聴者が話していることなのです。コンテンツに関する調査や分析があまりに少ないと思います。願わくば、コンテンツをより良く分類できるAIの様な新技術が登場することで、この分野の研究と開発が進んでいくことを期待しています。

- Danielle DeLauro (VAB)
終わりに相応しい話でした。広告主として、オーディエンスについて話すことができると思います。指標について話すこともできます。しかし、最終的に重要なのはコンテンツです。今日はパネルを見て下さった皆さんに感謝したいと思います。非常にインサイトに富んだ議論ありがとうございました。

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