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24年2月の「消費者マインドアンケート調査」の「物価見通し」に変化。ロシアのウクライナ侵攻後、初めて「やや上昇する」が「上昇する」の回答割合を上回る―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年2月26日)―

22年3月から24年1月の23カ月間は、世界的なエネルギーや穀物価格の上昇などが強く意識され、5段階で最多割合は「上昇する」だった。

 内閣府「消費者マインドアンケート調査」(試行)は16年9月から実施されています。「消費動向調査」など通常の調査では、調査対象に選ばれないと回答する権利はありませんが、誰でもが回答できるユニークな調査です。こうした回答方法のユニークさから、最も身近な経済指標のひとつと言えそうです。月により回答数が異なり、振れを伴う面はありますが、調査は毎月20日が締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~24日頃と早く、消費者マインドの基調を的確に把握することができます。
 
 質問数は「暮らし向き」と「物価見通し」の2問だけです。「暮らし向き」の質問は、「あなたの世帯の暮らし向きは今後、半年間にどうなると思いますか?」というもので、「良くなる」「やや良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」の5つの選択肢から回答します。「物価見通し」の質問は、「あなたの世帯で日ごろよく購入する品物の価格は1年後どうなると思いますか?」というもので、「上昇する」「やや上昇する」「変わらない」「やや低下する」「低下する」の5つの選択肢から回答します。
 
 景気ウォッチャー調査と同じ5段階での評価なので、同調査と同様に、それぞれ「1」「0.75」「0.5」「0.25」「0」の点数を割り振り、加重平均して「暮らし向き判断DI」と「物価見通し判断DI」を算出することができます。DIは50が判断の分岐点になります。
 
 24年2月の「消費者マインドアンケート調査」で物価の先行き見通しに頭打ち感が出てきました。「上昇する」の割合が43.5%で、「やや上昇する」が44.9%を下回りました。これはロシアがウクライナ侵攻した22年2月24日直前の調査である22年2月以来のことです。この時は「上昇する」の割合が42.7%、「やや上昇する」が53.8%でした。22年3月から24年1月の23カ月間は、「上昇する」の割合が「やや上昇する」を上回りました。世界的なエネルギーや穀物価格の上昇が意識され、物価上昇見通しがかなり強かったことがわかります。

24年2月「物価見通し判断DI」は81.1で、ロシアのウクライナ侵攻以降の2年間(平均87.7)で最低。

 「物価見通し判断DI」でみるとロシアのウクライナ侵攻した22年2月24日直前の調査である22年2月調査は84.7と85.0を下回っていましたが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーや穀物の価格上昇が懸念されるようになった22年3月から24年1月の23カ月間で、23年10月の82.8を除き、「上昇する」の回答が物価上昇判断DIは85~91の高水準で推移し、23カ間の平均は87.9と2016年9月以降の全調査期間の平均76.0を上回りました。24年2月は81.1で1月の86.4から鈍化しました。ロシアのウクライナ侵攻以降の2年間(平均87.7)で最低水準と、だいぶ落ち着いてきましたが、まだ高水準です。
 
 こうした動きは、全国消費者物価指数の消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比が22年1月の+0.2%を底に上昇し、22年4月から8月が+2%台、9月から11月が+3.0%台、12月+4.0%のあと、23年1月に+4.2%とピークをつけたあと、2月から8月が+3%台、9月から12月が+2%台で推移し、2月27日発表の24年1月で+2.0%を若干割り込みそうだと予測されています。前年同月比での過度な物価上昇はおさまりましたが、目先+2%前後での推移が見込まれ、かつての+0%台まで戻ることはなさそう状況であることは、「物価見通し判断DI」と似たような動きだと思われます。

「暮らし向き判断DI」は最近2年間の平均は30.8だが、直近1年間の平均をみると31.7とやや持ち直し傾向。

 「暮らし向き判断DI」は全調査期間の平均の36.7になります。22年2月は35.2で、22年3月から24年2月までの2年間の平均は30.8でした。ウクライナ情勢が物価面などを通じて暮らし向き判断の悪材料になったと思われます。22年3月から23年2月までの最初の1年間の平均は29.9でした。直近1年間の23年3月から24年2月まで1年間の平均は31.7とやや持ち直しています。24年2月は31.5です。これから、物価判断の改善が、暮らし向き判断のさらなる改善に結びつくことを期待したい局面です。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。