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最近の円ベース入着原油価格は概ね安定推移なのに、レギュラーガソリン価格は8月28日185.6円/㍑に、最高値を15年ぶりに更新。年末まで補助金が延長へ。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2023年8月30日)―

6月の実質賃金の前年同月比は▲1.6%と15カ月連続で減少

  6月の名目賃金は前年同月比+2.3%と18カ月連続で増加しています。実質賃金を求めるときのデフレーターは、日銀が物価目標にしている消費者物価指数・生鮮食品の除く総合でなく、帰属家賃を除く総合を使います。帰属家賃を除く総合の6月の前年同月比は+3.9%で、+3.3%の生鮮食品の除く総合より、高い伸び率になります。生鮮食品の除く総合が+3.1%になった7月でも帰属家賃を除く総合は+3.9%の高い前年同月比です。
  6月の実質賃金の前年同月比は▲1.6%と15カ月連続で減少しています。長引く物価高で消費への下押し圧力は強いものがあります。家計調査の2人以上世帯の6月実質消費支出・前年同月比は▲4.2%で4か月連続の減少でした。景気回復の勢いを弱めかねません。適度な物価上昇と賃上げの好循環の実現はまだ遠い状況です。

毎月かなりの値上げ品目が報道される、帝国データバンク「食品の価格改定動向調査」

  残念ながら、政府の物価対策には疑問を感じる点も多くあります。例えば、23年4月期の輸入小麦の政府売渡価格は、消費者の負担などを考慮し激変緩和措置として上昇幅が一部抑制されました。すなわち、22年10月期比+13.1%上昇のはずが+5.8%に抑制されたのです。しかし、上昇率が鈍化しても、値上げが実施されたことには変わりはありません。小麦を使った商品は値上げに向かいました。帝国データバンクの食品の価格改定動向調査の値上げ品目数は22年10月がピークですが、足元でも毎月かなりの品目数の値上げが大きく報道されています。これは、上昇率は関係なく品目数の調査なので、消費者マインド抑制要因になっている可能性が大きいでしょう。

レギュラーガソリン価格、23年8月28日185.6円/㍑に。08年8月4日の185.1円/㍑の最高値を15年ぶりに更新

  ガソリンなどの燃料価格の負担軽減策として国が給付している補助金の補助率が、6月から段階的に引き下げられています。資源エネルギー庁が8月30日に発表した石油製品価格調査によると、8月28日時点の全国平均のレギュラーガソリン価格は、185.6円/㍑と5月15日時点の167.8円/㍑から15週連続の値上がりとなった。90年の統計開始以降の最高値だった08年8月4日の185.1円/㍑を更新した。

最近の円ベースの入着原油価格は安定推移だが、レギュラーガソリン価格は史上最高値更新

  貿易統計の円ベースの入着原油価格を算出すると、5月~7月まで7.1万円/㎘台~7.3万円/㎘台と安定推移で、8月上旬も71,390円/㎘と概ね横ばいです。こうしてみると、決定事項だからとガソリン価格抑制のための補助金事業を9月に終了させる方向での動きを見直さなかったことが、レギュラーガソリン価格の史上最高値更新を促進してしまうという、皮肉なことになっているようです。 

ガソリンなど燃料価格の上昇を抑える補助金について年末まで延長へ

   岸田総理は8月22日になってやっと、ガソリン補助金の延長を検討するよう与党に指示しました。それを受け、自民党は29日、党本部で政調全体会議を開きガソリン価格高騰への対応策を協議したと報道されました。9月末で終了予定だったガソリンなど燃料価格の上昇を抑える補助金について年末まで延長するよう求める提言案をまとめ、近く党内手続きを経て提言案を首相官邸に提出するということです。
   レギュラーガソリンの小売り価格を170円/㍑台に抑えられるよう石油元売り各社に対する補助金を今より拡充する方向で調整すると報じられています。但し、22年9月20日~23年6月12日までレギュラーガソリン価格(全国平均)は補助金対策もあり、160円/㍑台で安定推移してきたので、それとの比較で170円/㍑台は高い水準です。
   電気・都市ガスの価格抑制策が、総務省によると7月の消費者物価指数の前年同月比を0.99%抑制しているということです。自民党の提言案は2023年1〜9月使用分を対象に講じてきた電気・都市ガスの料金の負担軽減策にも触れ、「経済対策が実施されるまでの間、9月末までの支援を継続」するよう提案したということです。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。