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7~9月期実質GDP第2次速報値は若干下方修正か。7~9月期法人企業統計は設備投資の変動にはほぼ中立と予測。ソフトウエアは下方修正要因に。民間在庫変動では仕掛品在庫が下方修正要因に。―日本経済の主要経済指標予測(2023年12月1日)―

7~9月期法人企業統計・設備投資(除くソフトウェア)前年同期比+1.7%、季節調整済み前期比+0.3%増加

  7~9月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+1.7%と、4~6月期の前年同期比+4.4%から2.7ポイント鈍化したものの、10四半期連続の増加になりました。4~6月期で前年同期比+4.0%の増加だった製造業は、7~9月期では同+5.6%へと1.6ポイント増加率が高まりました。非製造業は4~6月期で前年同期比+4.6%の増加でしたが、7~9月期では同▲0.4%の減少に転じました。5.0ポイント増加率が悪化しました。。
 
 7~9月期・全産業(金融業・保険業を除くベース)設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の季節調整済み前期比は+0.3%と2四半期ぶりの増加になりました。製造業は+0.1%と4四半期連続の増加、非製造業は+0.4%と2四半期ぶりの増加です。
 
 供給サイドのデータに基づいて算出した7~9月期GDP第1次速報値では、名目設備投資の前期比は+0.2%で、前年同期比は+2.0%と10四半期連続の増加になりました。しかし、4~6月期の前年同期比+5.1%の増加から3.0ポイント伸び率が鈍化しました。
 
 一方、法人企業統計では全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は4~6月期から7~9月期にかけ2.7ポイント伸び率が鈍化しました。GDP第1次速報値の方が0.3ポイント大きく伸び率が鈍化しています。

7~9月期実質GDP第2次速報値で、実質設備投資は前期比▲0.7%程度に第1次速報値の前期比▲0.6%から下方修正か。法人企業統計の影響はあまりないが、ソフトウエアが下方修正要因か

 12月8日に発表される23 年7~9月期四半期別GDP速報(第2 次速報値)では、通常の第1次速報から第2次速報への改定に加え、22 年度国民経済計算年次推計が反映されます。また、法人企業統計調査における開業準備中法人の取扱いの変更に対応した推計方法の変更が行われます。また、季節調整について 新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して設定してきた異常値処理のダミー変数は、22 年1~3月期~ 10~12 月期の期間について11 月 28 日に数値が公表され、加えて、速報期間である 23 年1~3月期以降の異常値処理については、23 年7~9月期第2次速報値以降、外れ値の判定に用いる信頼区間が95%から 99%に変更されます。これらの影響からGDP各系列で、これまでのデータが様々に変更されるところが生じそうです。
 
 7~9月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、7~9月期の設備投資供給側推計値・名目原系列前期比は+5.2%、また供給側推計値の情報を用いて仮置きした需要側推計値の名目原系列前期比は+12.4%であると公表されていますが、7~9月期法人企業統計調査・全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の原数値ベースの前期比は+12.2%となり、仮置き値より0.2ポイントだけ低い増加率になりました。
 
 特定サービス産業動態統計でソフトウエア開発・プログラム作成の前年同月比は7月+11.6%、8月+10.4%でしたが、9月は+9.0%と増加率が鈍化しました。ソフトウエア投資の部分は下方修正要因になりそうです。
 
 総合的に判断して、7~9月期GDP第2次速報値の実質設備投資は前期比▲0.7%程度と、第1次速報値の同▲0.6%から下方修正されると予測しました。
 
 23年7~9月期のGDP第1次速報値の名目民間在庫変動・原数値は1,528億円で22年7~9月期の9,499億円からは▲7,971億円と減少でした。23年7~9月期GDP第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.6%でした。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえませんが、4項目中マイナス寄与は2項目、マイナス寄与が大きな方から、仮置き値の原材料在庫、製品在庫の順になっていて、プラス寄与は2項目、プラス寄与が小さい方から、流通在庫、仮置き値の仕掛品在庫の順だということです。
 
 23年7~9月期の法人企業統計では、原材料・貯蔵品在庫は前年同期差▲1兆8,541億円のマイナスで、マイナス寄与の仮置き値と整合的な数字ですが、仕掛品在庫の前年同期差は▲1兆6,188億円のマイナスで、プラス寄与の仮置き値とは逆方向の数字になっています。このため、GDP第2次速報値の民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は第1次速報値の▲0.6%から▲0.7%程度になるとみました。

実質GDP第2次速報値では、実質GDPは前期比年率▲2.4%程度に第1次速報値の同▲2.1%から下方修正か

 7~9月期第2次速報値では、実質設備投資は前期比▲0.7%程度と、第1次速報値の同▲0.6%から下方修正になると予測します。また、実質民間在庫変動・季節調整値・前期比寄与度は下方修正されますが、少数点第1位までの数字は第1次速報値と同じ▲0.3%程度になるとみました。
 
 なお、公共工事出来高の前年同月比は7月+4.6%、8月+3.5%でしたが、9月は+4.0%と7月と8月の平均に近い伸び率になりました。このことから、9月が加味された第2次速報値の実質公共投資の前期比は第1次速報値の▲0.5%とほぼ同じになると予測します。
 
 7~9月期GDP第2次速報値で、実質GDPは前期比▲0.6%、前期比年率▲2.4%程度と予測します。第1次速報値の前期比▲0.5%、前期比年率▲2.1%から若干下方修正されそうです。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。