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令和5年大相撲秋場所の懸賞本数2,325本、好調な企業収益など背景に、過去最多の平成30年秋場所を165本上回る―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2023年9月25日)―

大相撲秋場所は、前の場所を全休したカド番の大関・貴景勝が復活優勝

 大相撲秋場所は大関・貴景勝が11勝4敗で並んだ前頭15枚目・熱海富士を優勝決定戦で退け、4場所ぶり4度目の優勝を果たしました。春場所、夏場所、名古屋場所と怪我に悩まされた大関・貴景勝が復活優勝し、番付の権威を守るかたちになりました。
 
 前の場所を全休したカド番の大関が優勝したのは平成15年春場所の千代大海以来2人目です。また、カド番の大関の優勝は平成28年秋場所の豪栄道以来7年ぶりです。
 
 秋場所の三賞は、殊勲賞、技能賞が、該当者なし。序盤戦から白星を重ね、11日目には小結・翔猿を破るなど11勝3敗の単独トップで迎えた、21歳の前頭15枚目・熱海富士が初めて敢闘賞を受賞しました。 

 単独トップだった熱海富士は本割で朝乃山に寄り切られて4敗目となり、優勝決定戦になることが決まりました。千秋楽の「これより三役」の取り組みに、優勝の可能性のある4力士が登場し、大関と対戦するという異例の組み合わせになりました。新大関・豊昇龍は前頭11枚目・北青鵬を破り勝ち越し。大関・霧島は結びの一番で前頭7枚目・高安を退けて9勝6敗。貴景勝が4敗同士の関脇・大栄翔に勝ち、熱海富士に並びました。4人によるトーナメント、3人の巴戦の可能性もあった優勝決定戦は、結局、2人によるものになりました。
 
 優勝インタビューで貴景勝は「絶対負けられないという強い気持ち」で臨んだとし、立ち合いについて「右差しを徹底して封じようと思った。ああいう形で決まるとは思わなかったですけど、きちっと集中して自分のやるべきことをやりました」と説明しました。熱海富士については「将来必ず強くなると思います。そのために自分は壁になれるように強くなるだけだと思います」と話しました。

秋場所千秋楽の懸賞本数合計は204本で、1日の本数として最多に

 令和5年秋場所での懸賞の事前申し込みで、力士別(「結び」や休場力士を除く、100本以上)のランキングは、①貴景勝151本、②霧島143本、③御嶽海118本、④豊昇龍116本。⑤琴ノ若106本、⑥朝乃山103本でした。この6人は今場所全員勝ち越し、6人中5人が、1位霧島の295本をはじめとして、懸賞獲得本数ベスト5に入りました。 

 6位の翔猿は118本のうち中日に貴景勝に勝った取り組みで53本を獲得しました。7位の北勝富士は105本でしたがこのうち54本は初日取り直しで貴景勝に勝って獲得したものです。8位大栄翔は98本でした。こうした力士には抜かれましたが、御嶽海は86本を獲得し9位に入りました。
 
 秋場所千秋楽の懸賞本数合計は204本で、1日の本数として最多だった今場所初日の198本をさらに上回わりました。14日目の豊昇龍VS.貴景勝の58本、千秋楽の霧島VS.高安の58本がこの秋場所で1つの取り組みに掛かった最多本数でした。

秋場所15日間の懸賞本数2,325本は、事前の申し込み2,154本を上回る。

 今年の秋場所15日間の懸賞本数が合計で2,325本となり、1場所の本数として過去最多だった平成30年秋場所2,160本上回りました。事前の申し込み2,154本も上回りました。企業の広告費の代理変数といえる、大相撲の懸賞本数がコロナ禍前の過去最高を上回ったことは、企業収益などが好調なことを裏付けると思われます。また、両国国技館館内には外国人が多くみられたことで、好調なインバウンドを背景に多くの外国人の相撲ファンが来場することを見越して懸賞を出したことも影響していると思われます。また、この秋場所は、事前に休場が決まっていた横綱・照ノ富士と、前頭9枚目の伯桜鵬以外に、場所が始まってから休場した幕内力士が皆無だったこともプラスに働いたと思われます。

過去最高水準を更新した4-6月期の経常利益。好調な企業収益が過去最多の懸賞本数の背景に

 直近の企業収益の状況をみると、財務省が9月1日に公表した法人企業統計では、23年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比+11.6%で1-3月期の+4.3%に続き2四半期連続の増加となりました。季節調整済の経常利益は前期比+9.5%で1-3月期の+7.4%に続き2四半期連続で増加しました。23年4-6月期の経常利益(季節調整値)は26.9兆円で、2四半期連続で過去最高水準を更新しました。好調な企業収益を背景に、企業が懸ける大相撲の懸賞本数が増加していると思われます。秋場所の懸賞が過去最高を更新したことからみて、7-9月期の経常利益もしっかりしたものになりそうです。
 
 一方、季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比▲1.6%と5四半期ぶりに減少し、季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)でみても前期比▲1.2%と5四半期ぶりに減少しました。先行きの不透明感などから企業収益の割には、企業が設備投資に慎重になっている感じがします。
 
 設備投資の先行指標も弱めの動きとなっています。7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である船舶・電力を除く民需の機械受注額(季節調整値)は、前月比▲1.1%の減少です。7-9月期の見通しは前期比▲2.6%と2四半期連続の減少見込みです。内閣府の機械受注の基調判断は「足踏みがみられる」が続いています。但し、電力や官公需を含む「内需」の7月の前月比は+15.9%で4か月連続の増加になっています。民間企業の設備投資マインドが前向きになって欲しいところです。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。