見出し画像

8月家計調査・実質消費支出・前年同月比は6カ月連続減少か。8月景気動向指数・一致CIは前月差僅かに下降だが、基調判断は5カ月連続「改善」継続に―日本の主要経済指標予測(2023年9月29日)―

8月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は7月から若干減少率縮小も、6カ月連続の減少か(10月6日発表)

  7月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比で▲5.0%と5か月連続の減少になりました。2021年2月の▲6.5%以来2年5カ月ぶりの大きな下落率です。新型コロナの5類移行後初の夏休みで外出した人が増えたことなどを背景に、飲酒代などの「外食」、鉄道運賃などの「交通」、国内パック旅行費などの「教養娯楽サービス」が増加する一方、物価上昇に伴い、「食料」や「住居」など幅広い分野での減少が見られました。
 
  季節調整済み実質・季節調整済み前月比は▲2.7%と2カ月ぶりの減少になりました。ちなみに名目消費支出の前年同月比は▲1.3%で4カ月連続の減少です。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+3.9%でした。
 
  財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲3.9%と5か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲5.4%と2か月連続の減少になりました。
 
  8月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲4.5%程度と減少率は7月から若干縮小するものの。6カ月連続の減少になると予測します。前月比は+1.4%程度の増加とみました。猛暑で夏物需要が出たものと思われます。
 
  家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は7月+3.9%、8月+3.7%と推移しています。デフレーターは、8月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に対しては7月と比べて若干の増加要因になります。
 
  関連の消費統計をみると、8月新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は+19.8%で7月の+11.4%から増加率が8.4ポイント高まっています。また、8月全国百貨店売上高・前年同月比は+11.8%で7月の+8.6%から3.2ポイント拡大しています。一方、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の8月の前年同月比は+3.4%と7月+4.9%から1.5ポイント増加率が鈍化しました。なお、商業販売額指数・小売業の前年同月比は、8月速報値+7.0%で、7月+7.0%と同じ伸び率でした。
 
  景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、1月44.2、2月50.2、3月50.1、4月50.7、5月50.7、6月50.0、7月52.8、8月52.7と推移しています。
 
  こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

 ※23年8月は筆者予測

8月の景気動向指数・一致CI前月差▲0.1程度で、2カ月連続下降の見込み。(10月6日発表)

  景気動向指数・4月改定値で景気の基調判断は景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に、それまでの景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」から、上方修正されました。その後5月、6月、7月では速報値、改定値とも「改善」になり、4カ月連続「改善」となっています。
 
  景気動向指数では、一致CIを使っての基調判断が機械的に行われています。当月の一致CIの前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も加味して行われます。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方へのor下方への)」「悪化」「下げ止まり」の5つがあります。
 
 一致CI前月差・7月速報値は▲1.1の低下でしたが、7月改定値で労働投入量が前月差寄与度▲0.48で加わったことなどで、前月差は▲1.4に下方修正になりました。
 
  8月速報値の一致CIは前月差▲0.1程度の下降と予測します。一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列が前月差寄与度プラスに、生産指数1系列が前月差寄与度ゼロ、輸出数量指数1系列が前月差寄与度マイナスになると予測しました。
 
  一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・8月速報値・前月比は0.0%の横這いとなりました。全体15業種のうち、石油・石炭工業、電気・情報通信機械工業など5業種が上昇、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業など10業種が低下となりました。
 
  8月の先行CIは前月差+1.4程度の上昇と予測します。3カ月ぶりの上昇になるでしょう。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、日経商品指数、マネーストック 、東証株価指数の7系列が前月差寄与度プラスに、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※23年8月は筆者予測

8月の先行DIは66.7%と2カ月ぶり50%超、一致DIは37.5%と2カ月連続50%割れか。

  8月の一致DIは37.5%程度と2カ月連続で景気判断の分岐点の50%を下回ると予測します。8月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列がプラス符号に、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の5系列がマイナス符号になると予測します。
 
  8月の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を2カ月ぶりに上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の6系列がプラス符号に、新設住宅着工床面積、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になるとみました。


8月・9月も景気基調判断は「改善」継続の可能性が大きいか

  8月でも景気の基調判断は5カ月連続で「改善」になると予測します。景気拡張の動きが足踏み状態になって いる可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるための条件は、「当月の前月差の符号がマイナス」かつ、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(1.16)以上」です。一致CIの前月差は下降になると予想されますが、3カ月後方移動平均(前月差)2カ月の累積が▲0.27程度の小幅マイナスにとどまると予測されるため、8月でも景気の基調判断は「改善」が維持される可能性が高いと思われます。
 
  一致CI採用第1系列の生産指数(鉱工業)の先行きを製造工業予測指数でみると、9月前月比+5.8%の上昇の見込みです。なお、過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、9月分の前月比は先行き試算値最頻値で+3.7%の上昇になる見込みです。90%の確率に収まる範囲は+2.4%~+5.0%となっています。
 
  生産指数からみて、9月の一致CIの前月差はプラスになる可能性が大きそうです。8月の予測などが正しいとすると、一致CIの3カ月後方移動平均(前月差)のマイナス幅が振幅目安の標準偏差▲1.16超になるためには、9月の前月差が▲1.2程度以上のマイナスになる必要があると思われます。そのため9月も景気の基調判断は「改善」にとどまる可能性の方が大きいと思われます。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。