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小説「ぼくと彼の夏休み」

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2020年7月の記事一覧

ぼくと彼の夏休み(16)

 祐人と過ごせないだけで、こんなにも手持ちぶさただとは。1週間前のぼくには想像もつかなかったろう。本に依存していたぼくが、今や友人に依存しているなんて。ぼくの世界の何もかもが、すっかりひっくり返ってしまった。
 のんびりひとりで朝食を食べていると、早朝の仕事を終えた祐人とジロさんも朝食を食べにやって来た。祐人とすこしでも長く過ごすために、ぼくはますますゆっくり朝食を食べた。そんなぼくのことを知って

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ぼくと彼の夏休み(15)

 だらだらとおしゃべりをしていたら、いつの間にか眠ってしまった。深夜にふと目が覚めて、祐人が隣で寝ているのを確認する。
 次に目を開けたのは早朝で、祐人がぼくの顔をのぞき込んでいた。
「おはよう。俺は仕事に行くよ。」
 ぼくはねむい目をこすりながら返事をした。
「行ってらっしゃい……」
 そうか、今日は月曜日なんだ。祐人は働いているから、夏休みがない。昨夜は「夏休みが永遠に続けばいい」なんて、無神

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