「淵」第２４４号が届きました。

「淵」第２４４号が届きました。
淵の会は、歌人・書道家・教育者でもある会津八一先生の系譜を継ぎ植田重雄先生を経、その歴史と伝統に基づいて真文化を創造し、日本の再興を期す。・・と規約にうたっています。

今回は、植田重雄先生の短歌を載せてみたいと思います。
さらに、
いつものように二人の「私の好きな一首選」を載せたいと思います。

 植田重雄の秀歌 

大き蛾の雨戸につきて動かざり産卵終ふるや地に落ちて死す 

虫籠より黄蝶しじみ蝶みやまあげはきらめくごとく飛び立ちゆけり 

森の中きのこかぶとむしあかとんぼおもひおもひに子らゑがきをり

 大人にははや閉ざされし世界なり子供が遊ぶ森の虫と花 

年どしに花は開きて散りゆけり想ひ出でてはまた忘るかな

 新しき想ひをこめて生きゆかむそはわがつねのかなしみなりき

 瞑想の閉じし眼を見開けば蛍飛びかふ光曳きつつ

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私の好きな一首選　　　　大野雅子 選
 
もみの木の枝にもかかる白雲の崩れて寺の屋根に落ちるは
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐々木誠吾

 切り通し苔生す石の温もりと野菊の白き鎌倉の谷戸
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋谷富子

 君若く清々しくて惚れたのよ年甲斐もなく一夏の恋
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　角田章予

 古 の達人学びし 道場に息をひと飲み一歩踏み出す
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大木静花

 すれ違う言葉流れてとどまらず秋の音色を探して和む
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木下容子

 空高く紅白の玉投げる手と小さき身体は空に舞い飛ぶ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大宮ふじ江

 まるでバラ大輪のごと輝きし亡き姉の服着てみる秋に
                                                                        　　　丹波ともこ

 わづかばかりふるさと岩手の香を纏ひ雑踏の中のひとりとなりぬ
                                                                           　    伊達美智子

 豆柿を食みつつ上るその先に八一の影見ゆ滝坂の道
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　澤田毬子

 人文字に寝て幸せよ涼風よ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　澁谷孝男

 鰯雲西から東へゆっくりと朝の刹那を紅に染む
                                                                     　　　   大野雅子
 
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私の好きな一首選　　　伊達美智子選
 
回廊を歩みて軒の美しき先の雲井に秋の過ぎ行く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐々木誠吾
 
 暗がりに十六の井を教へたり観音像の見守るなかを
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　澁谷富子
 
ラジオから流れる曲はメッセージ月の光の心に沁みる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　角田章予
 
 戦争は人の営み破壊して憎しみの渦広がるばかり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大野雅子
 
各地より集う同志の新陰合宿　 響く竹刀の気高き音よ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大木静花
 
 大落喗真近にきたり田園を染めておおいなる命吹き込む
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木下容子
 
 金メダル胸に光らせ帰りつつ園の坂道友とかけゆく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大宮ふじ江
 
 一輪のヒマワリあげたいウクライナ戦禍の子にもロシアの子にも
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丹後ともこ
 
西陽さす大正色の眼鏡店 　まあるいレンズの祖父を偲べり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　澤田毯子
 
 夏の日や孫に揉ませりわれの肩
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　遊谷孝男
 
 農民の暮らしを案じ導きぬ賢治の情に触れし花巻
                                                                   　　　    伊達美智子

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※　お読みいただきありがとうございます。

※　私事ですが連続投稿３０回完了です。
　　ありがとうございました。