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成功体験を鵜呑みにしてはいけない理由

こんにちは。
予備校講師の大北あきやです。

今回は受験生に向けてちょっとした注意点です。

よく、受験に成功した大学生が自分で勉強してきたことをもとに、それをやれば受かるよと受験生に伝えることがあります。
これを鵜呑みにしすぎるのは危険だという理由を説明したいと思います。


1.生存者バイアス

まず、成功している人がいる一方で同じ方法でも失敗している人がいてそこは無視されているという点です。これを生存者バイアスと言います。

たとえばAという参考書を使用して東大に受かった人が100人いたとしましょう。そうすると合格者100人が使っているから間違いないと思われがちなのですが、それは誤りです。Aを使って不合格だった人が1000人いるかもしれません。そもそもある程度知名度のある参考書は使っている人が多く、それのおかげとは言いづらい面があります。

Aを使った人は合格100人 不合格900人
Bを使った人は合格10人 不合格10人

このような例だったらどうでしょう?Bのほうが良いと言えると思います。なぜなら、Aを使用した上での合格率は10%に対し、Bのそれは50%だからです。それゆえ使っている人が多い等の理由はあてになりません。これは条件付き確率の話です。一方で、合格した人が全部で200人だったとすると、合格した人がAを使っていた確率は50%、Bを使っていた確率は5%となり、一見Aが良く見えがちです。データというのはどういう確率で比べるのかによって全く違う印象を受けるので注意しましょう。

とは言え、この場合もBが優れているとは言い難い点があります、というのは、相関はあっても因果がない可能性があるのです。たとえば、Bという本はもともとかなり難しく上級者用の本だったとしましょう。買って試そうと思う人自体のレベルが高いのです。Aを使った人はもともと偏差値40程度の人ばかり、Bを使った人はもともと偏差値70の人ばかりだったらどうでしょう?それならもとから出来るんだから受かって当たり前じゃないかとなります。

結局は同じような集団に対して、複数の選択肢を実験してみないとわからないわけです。Aを使って合格した人がAは良かったと言ってももしかしたら、Cを使えばもっと楽にさらに良い大学に合格できた可能性もあるのです。



2.そもそも自分とレベルが違う

トップレベルの進学校から東大理Ⅲに受かるような人はそもそも理解力、集中力、その時点での学力何もかも桁外れです。いやいや、実は浪人している、もともとは成績悪かった、なんて言い出すかもしれませんが、それでも偏差値50程度の公立高校の数学苦手な層からすると何もかもが違います。

そうした人のアドバイスとして、まずAを完璧にして、とにかく教科書レベルで良いから先取りして、みたいなものをよく見受けます。ただ、それが出来たら苦労しないというものが多いのです。処理能力や理解力が違いすぎるのですから。

仮に参考にするのなら自分ともともと近い境遇の人のものを参考にすると良いでしょう。


3.過度の一般化

少ない例なのに、みんながそうであるかのように考えられることがあります。例えば、5年に一度しか東大合格者が出ないような学校ではその生徒が神格化され、その生徒の勉強法こそ唯一正義、それを真似しろみたいなことを先生たちがおっしゃっていたりします。ただ、これもその生徒がたまたまその勉強法で受かったに過ぎず、世間では少数派だったり、他の勉強法ならもっと多くの生徒がその学校から受かっていたりするかもしれません。


4.成功者の過去は美化されがち

「予備校や学校の授業なんて時間の無駄だから参考書だけで十分だよ。」こんなことを言う人がいたとします、実は僕もこういうタイプでした。ただ、それは色々紆余曲折を経て出来るようになって、出来るようになった目線で見ればたしかに参考書に必要なことは全て書いてあった、なんていうことが多いのです。

あと、そもそもとして、Aだけで受かった、あまり勉強しなかった、なんていう話は基本盛られがちなので話半分に聞くようにしましょう。本人にその意識がなくても人間の記憶というのは都合の良いように美化されがちです。



まとめ

僕も大学生の頃バイトで塾講師をしていたころは、自分の経験をもとに、生徒を指導していました。ただ、それは美化されている面もあったり、あくまで出来る人目線の意見に過ぎなかったのです。これは何年か経たないとわからないし、実際にかなり数学が苦手な層を指導する経験をしてみないとわからないことです。塾で5年ほどの指導経験があっても、偏差値50を切るような私立高校の非進学クラスで非常勤を経験したときは別の世界にいるような感覚でした。

僕自身は様々な層への指導経験をもとにその人にあった指導がある程度できているという自負があります。(もちろん、まだまだ未熟ですが。)
それでも教え子が、先輩がやっていたから等の理由でどう見てもレベルに合っていない参考書をやりたがったりすることは良くありとても困るのです。もちろん説得しますが、わかってもらえないこともあります。

そこらへんの部分も踏まえて、今回は伝えたいことを連ねてみました。ややポジショントークになりがちな面もあると思いますし、優秀な大学生のアドバイスを全否定するわけではありません。特定個人を批判する内容ではないので、不快になったかたがいたら大変申し訳なく思います。

大学生の先輩等にアドバイスを受けることがあれば、それを頭ごなしに否定するのも違うし、ある程度参考にはしてほしいと思います。ただ、あくまで成功者の一例だと思って冷静な視点を忘れないでください。

鵜呑みにするのはとても危険だということを受験生には十分に留意してほしいと思うのです。

現実問題として、Twitter上でも明らかにその受験生のレベルに合っていないものを大学生や高校生が薦めているというのを数えきれないほど見かけました。

今回は参考書の例を挙げましたが、勉強法全般等においてもあてはまる話で、これは受験に限ったことではないということを意識しておくと良いでしょう。

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