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共通テスト(数学)対策2

こんにちは。
予備校講師の大北あきやです。

前回に続いて共通テストについて書きたいと思います。
今回は分析と対策についてです。
前回の記事を読んでいない人はそちらをまず読んでください。



共通テストがどんなテストになりそうか


まだ1回も行われていないので、わからない部分が多いですが、わかっていることから予想も含めて書いていきます。

まず、共通テスト以前は何年にもわたってセンター試験というものが行われていました。
これに対していろいろな点を改善しようという目的で共通テストに変更されます。

共通テストに先立って試行調査というものが平成29年度、平成30年度の2回に渡って行われました。

リンクから問題と解答、その他詳しいデータなども見られます。
解説については多くの参考書が扱っています。

試行調査の趣旨としては、共通テストをいきなりやってもみんな対策のしようもないと思うからこんな感じでやるというのをあらかじめみんなに伝えておきます、というものだと思います。

実際に生徒の出来を見たり、教育関係者の声を聴きながら共通テストに活かしていくという狙いもあると思います。


よって、共通テストを予想するうえでは試行調査が一番参考になります
また、センター試験とまるっきり変わってしまうわけではないので、センター試験を知っておくことも意味があることと言えます。

センター試験については以前書いたのでそれも参考にしてみてください。

「センター試験も共通テストも結局数学の力をつけるのが大切!特に対策は必要ない。」

なんていう意見もよく耳にします。

これについては数学の力をつけるのは大切なのですが、個別の対策もするのが近道でしょう。
また、センター試験と試行調査ではかなり変わっている部分が多いです。
そのあたりを具体的に書いていきたいと思います。

まず、以前も記したのですが、センター試験は処理能力と誘導に乗る力が重要な試験でした。
これを鍛えるためにセンター試験と同じタイプの問題を反復演習することが必要不可欠でした。
数学が出来る人は対策をしなくても高得点を取ることもありますが、それは能力に正の相関があるだけの話でしょう。


センターと比べて試行調査はどう変わったか。



基本的にはセンター試験よりも問題にしっかりとした意味があり、より数学の理解が問われる試験になっています。

(ちなみに難易度は難しめで共通テストはこれよりも簡単になるという見方が多いです。おそらく同じかやや簡単程度になり、これより難しくなる可能性は低いです。)

具体的にはまず、一番目につくのが会話文形式になっている問が多いということです。

太郎さん、花子さんという二人の生徒の会話を穴埋めしていく形式です。


なぜ、会話文を取り入れたのでしょうか?


そもそも、会話文形式で書かれた参考書というものは初学者用のものでよく見かけます。
以前薦めた「やさしい高校数学」もそうです。

会話文には単純に読みやすくわかりやすいというメリットがあります。

恐らく試行調査と同じ内容を会話文でなく出題するとしたら、もっと正答率が下がるのではないかと思います。

以前のセンター試験では接続詞に注意しながら読み解くことが重要でした。
このような読解力が以前より要求されなくなり、そのぶん他の部分で難しい問題を出題することが出来るようになったと思います。

英語などでは、会話文問題というのはそれに対応した対策が必要になることがありますが、試行調査の会話文というのはわかりやすくするためのものなので、それ自体を対策する必要はあまりないと言えます。

また、センター試験と比べて文章量が増えたことから読解力がより必要になったという意見もありますが、僕はこれには反対で、純粋な文章読解力の要求される割合は減っていると思います。


まとめると、会話文であること自体には対策の必要はなく、読みやすいというメリットしかありません。


では、それを踏まえたうえでセンター試験と変わったところを列挙しておきます。


1.定理(公式)の証明に関する出題がある。

2.日常に絡んだ出題がある。

3.誤答について考える出題がある。

4.1つの問題について複数の考え方で解く出題がある。

5.あとを読むと考え方が正しいかどうかわかる出題がある。

6.コンピュータソフトを例にした出題がある。

7.意味を考えると計算せずに解答できる出題がある。

8.有名事実など背景のある出題がある。

9.融合問題がある。

こんなところでしょうか。
基本的には全て、類題を解いたことはなくても解けるように誘導があります。
とは言え、知っていたほうが圧倒的に解きやすい問題も多く、対策の必要があります。

では、どのような対策をすべきなのでしょうか。
順に記します。


1.定理(公式)の証明に関する出題について。


正弦定理の証明に関する問がありました。
誘導があるとは言え、知っていたほうが解きやすいです。
また、定理の証明は数に限りがあるため、対策がしやすいです。

まず、教科書に出てくる定理や公式の証明を一度自分でやってみると良いです。正弦定理の証明は教科書どおりの証明でした。ネタ切れになるまでは教科書どおりの証明が出題されると思います。それゆえ、エレガントな証明や変わった証明ではなく教科書どおりの手順でやるのが良いでしょう。

知っていないと難しい証明というのは、それほど数が多くありません。
倍角公式などは加法定理から当然のように証明できるでしょう。

それを踏まえて、特に優先度の高いものを列挙しておきます。

数学Ⅰ
正弦定理(すでに試行調査で出題されている。)
余弦定理

数学A
ユークリッドの互除法
平面図形の様々な定理(選択する人のみ)

数学Ⅱ
点と直線の距離公式
加法定理
和積公式
1/6公式(教科書にはないがカタマリを作る方法)

数学B
等比数列の和
Σ公式
ベクトルの三角形の面積公式2つ

こんなところです。
もちろん、これが全てではないのですが、時間がない人もこれくらいなら最悪、直前にでも確認できるのではないでしょうか。


2.日常に絡んだ出題がある。


これは試行調査の中で特に見えやすい部分だと思います。

階段の高さに絡めた三角比の問題など様々な日常に絡んだ問題が出題されています。

これについて、そのほとんどはその話題に触れたことがなくても問題ないものです。階段の話や、天秤ばかりの問題などがそうです。一方でその話題に触れたことがあったほうがだいぶ有利に働く問題もあります。
たとえば、食品のエネルギーのカロリーを線形計画法を用いて求める問題です。これは図形的に解くという誘導もなく、線形計画法の文章題を解いたことがないとかなり難しいのではないかと思います。そもそも、線形計画法の文章題はこのテーマをそれなりに理解している受験生でも初見では苦戦する印象です。線形計画法の文章題は薄い問題集ではあまり見かけませんが、傍用や網羅系ではほぼ必ず載っています。
日常に絡んだ問題については普段やっていない問題集でも積極的に取り組むと良いと思います。とは言え、そんなに思い当たる問題がなく、探すのが難しいかもしれません。血中濃度の問題は似たようなテーマを過去問で見ることもあります。もう少し計算よりですが。良いものがありそうなら今習っている先生に提供してもらうのも良いと思います。

また、日常に絡んだ問題は解答は現実的なものになります。血中濃度の選択肢の問題は現実的にもっとも妥当なものになっているのではないでしょうか。選んだ選択肢が現実的に妥当かどうかを考えましょう。また、わからない、時間がないときは現実的に妥当なものを選んでおきましょう


3.誤答について考える出題がある。


相加相乗平均の大小関係について、誤答例を考える問題がありました。おなじみの問題です。丁寧な誘導がありますが、このテーマを全く聞いたことがない人は難しいかもしれません。会話文となじみが良くこれからも出題されそうです。

普段から誤答例について考えるとともに、よくある誤答例を知っておくと良いかもしれません。それだけを集めた参考書があれば面白そうで、役に立つと思うのですが、現時点ではないようです。いずれどなたかに出していただきたいです。僕も時間があればどこかに記そうかと思うのですが。。

なかなか対策しづらいところだと思うのですが、相加相乗のテーマで言えば青チャートにも載っています。網羅系の問題、解答、解説以外のとこにこのような誤答例を扱っていることが多いようです。

比較したところ、これについては総合的研究が読みやすいかなと思います。


この本に質問箱という部分があるので、そこを拾いながら読んでいくのもありかと思います。


このテーマについて

twitterで#大北の数学共通テスト対策
で紹介しています。是非検索してみてください。


4.1つの問題について複数の考え方で解く出題がある。


漸化式を2通りの解法で解く問題が2回連続で出題されました。特に漸化式については複数の解法を知っておくと良いでしょう。これについては、「山本俊郎の数学ⅠAⅡB 発想の原点①」が意外にオススメです。1冊で式変形、漸化式、不定方程式、と3つのテーマだけを扱っていて解説が詳しく、複数の解法を扱っています。そして、先生、男子、女子の会話文になっています!時代を先取りしすぎたのではないかと思ってしまいます。笑

残念なことに絶版のようです。プレミア価格になっていることがあるので注意してください。

漸化式に限らず、別解も意識する癖を普段からつけましょう。


5.あとを読むと考え方が正しいかどうかわかる出題がある。


第2回の確率の問のように、やり方がこっちかこっちかどっちかなと迷ったときにそのあとの7/85という数値を見ると正しいやり方がわかるというものです。これは必ずしもその誘導に乗らなくてはいけないというわけではないのですが、難しい問題で補助的に入れてくる可能性があります。わからないときはそのあとも読んでみる癖をつけると良いでしょう。特にあとに数値が書かれているときはその誘導である可能性が高いです。


6.コンピュータソフトを例にした出題がある。


2回連続で出題されました。必ずしもソフトに触れておく必要はないです。2次関数のグラフから読み取るという問題は以前からあるものなので、そのパターンに触れておくと良いです。

実際にコンピュータソフトで色々遊んでみるのも良いと思います。

例えば、GeoGebraという無料のアプリなどがあります。




7.意味を考えると計算せずに解答できる出題がある。


対数ものさしの複数選択問題など、難しいのですが、意味がわかっていれば瞬殺の問題があります。こういった定性的な問題はかなり増えてくると思います。しっかりと問題の意味を考えることが重要です。独学では難しいところもあり、良い先生の授業を受けるのが良いと思います。



8.有名事実など背景のある出題がある。


フェルマー点を題材にした出題がありました。2回の整数の最後も有名な事実です。これについては対策しようと思っても無限にあるのできりがありません。知ってるテーマが出たらラッキー程度に思いましょう。二次対策をしっかりやっていれば同じテーマに出会えるかもしれません。知らないと解けないということはないのであまり気にしないようにしましょう。



9.融合問題がある。


2次関数と三角比の融合問題が出題されました。ⅠAのなか、ⅡBのなかで融合されるんだと思います。対策はしづらいのですが、類題は経験しておきましょう。点の移動の問題は中学生的なテーマで得意不得意がわかれる印象です。苦手意識のある人は融合でなくても点の移動の問題をこなしておきましょう。


以上、センター試験と変わった点をいくつか挙げておきました。次に変わらない点も挙げておきましょう。

1.誘導に乗るのが大切。


少し誘導の質が変わった気がしますが、前問の結果を利用するのが重要なのは変わりません。常に意識しましょう。


2.穴埋め特有のテクニックが使える。


これは出題者側が排除しようとしても穴埋めゆえ避けられないものも多いです。また、いつか別の記事でも扱いたいですが、1つ記しておきましょう。

一般性を無視して特殊な場合のみ考える。

血中濃度の問題(第1回 ⅡB 第3問)を見てください。
(3)です。数学的にはすべてのnで考えないといけないのですが、どのnでも同じということが解答欄からわかるのでn=1の場合を考えるとb2とa3の話になるので具体的に求めて計算するだけです。

数列だけでなく、いろいろな分野で使えるテクニックなのですが、特に数列ではよく使えます。


まとめ

以上です。
いかがでしたか?
依然として特殊な裏技が完全に使えなくなったわけではないですが、対策をしようとするとなかなかやることが多いです。

センター試験はひたすら誘導に乗りながら計算する試験でした。それゆえ、センターの対策はひたすらセンタータイプの問題を繰り返すというのが主だったのに対し、共通テストは数学というものに対してより深く向き合う必要が出てきたのではないかと思います。

共通テストには反対している指導者が多いのですが、僕は期待を込めて大賛成です。もちろん、記述式についての問題はありましたが、とりあえず見送られました。これから年を重ねるごとに面白い問題がたくさん出てきそうです。試行調査もとても面白い問題だと感じました。共通テストのおかげで学校や予備校の授業でもより深い授業が求められてくると思います。

とは言え、受験年度の人はそんなにやる暇がないですよね。そういう人は今回書いたことを意識しつつ、共通テストタイプの問題演習を繰り返しましょう。そこではここで必要だと書いた能力が身につくようにもなっているはずです。

共通テスト対策の問題集については以下の記事に書いています。


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