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共通テスト数学の振り返りとこれから

こんにちは。
予備校講師の大北あきやです。

2021年1月17日に行われた、2021年度共通テストの数学ⅠAとⅡBについて、前回は解答と解説を書いたのですが、今回は講評や分析などよりくわしく思うところを書いていきたいと思います。

読んでいただきたい対象としては、

1.これから共通テストを受ける人
2.教育関係者
3.既に共通テストを終えた人

1については、これから受ける上で共通テストにどう臨むべきかわかると思います。是非読んでください。

2については、僕自身が何か有益なことを提供できるほどの人間ではないと思っておりますが、結局多くのかたが見てくださっているようなので何かためになることがあればと思います。

3については、優先度は低いです。今やるべきことは共通テストの振り返りではないと思うので解答解説を読んでおけば十分です。2次試験に向けて頑張りましょう。読むのであれば暇つぶし程度に。

複数層を対象とした、僕自身の雑感のようなものですが、他とは違った鋭い分析が多数あると思うので最後まで読んでいただけると幸いです。


まず、共通テストを解いていないというかたは是非解いて、僕の解説を読んでからにしてください。

(ちなみに、この記事はgoogle検索でも上位に来たことからかなりの閲覧がありました。)

とは言え、解いたことのない中学生や高校生もなんとなくの内容はつかめると思うので是非読んでくださいね!

また、今回の共通テストについての見解はあくまで私見であり、今後の予想等もあくまで個人的なものであることはご理解ください。


全体概観

まず、平均点ですが、ⅠAが59.20点、ⅡBが62.85点となりました。

これは例年のセンター平均点から見ても標準程度からやや高めだったと言えます。これについては多くの予備校講師も問題を自分で解いたときよりの想定より高かったと言っており、僕自身もそう感じました。

この原因は

1.難しいところと簡単なところの差がはっきりしていたので難しいところを飛ばせばある程度の点数は確保できた。

2.難しい問題が選択式であったり、勘でも当てやすい問題であった。

3.試行調査を踏まえた市販の問題集が難しかったことから、厳しい問題演習を普段から積んでいた。

このあたりではないかと推測されます。


次に内容についてですが、試行調査を踏まえつつもセンター試験的な誘導の多いものが多く、足して2で割ったような試験でした。

この原因は浪人生と現役生で差が付きすぎないようにするためではないかと推測されます。浪人生は前年まではセンタータイプの模試や演習をこなしていたのに対して、現役生は高1,高2のときから試行調査タイプの問題をこなしてきました。あまりに試行調査タイプに偏ると現役生が有利になってしまいます。このあたりの調整をはかったのではないかと。それゆえ、この先試行調査タイプに寄っていくことはあってもセンタータイプに寄ることはないと思っています。特に今回の平均点が高かったことからも、来年度はもう少し攻めた出題になるのではないかと思っています。

内容については会話文が少なく、試行調査と全く違うではないかという指摘もありましたが、これは全く表面的な見方です。そもそも会話文が試行調査の本質ではないことは以前も述べました。

この記事で会話文は読みやすくするためだけのものであって、注意すべき変更点は次の9点であると述べました。

1.定理(公式)の証明に関する出題がある。

2.日常に絡んだ出題がある。

3.誤答について考える出題がある。

4.1つの問題について複数の考え方で解く出題がある。

5.あとを読むと考え方が正しいかどうかわかる出題がある。

6.コンピュータソフトを例にした出題がある。

7.意味を考えると計算せずに解答できる出題がある。

8.有名事実など背景のある出題がある。

9.融合問題がある。

これを踏まえて今回の共通テストの各問題を振り返っていきたいと思います。なお、この変更点は試行調査で顕著になったというだけで、センター時代も全くなかったというわけではありません。

数学ⅠA 第1問

まず、手元に問題がない人はこちらを。

[1] について

かなり基本的な内容でした。やや計算が重いもののミスなく素早く解答したいところです。上で記した変更点の「9.融合問題がある。」に該当する融合問題で、整数のテーマでもありました。会話文があったのが特徴的ですが、考え方を全て花子さんが教えてくれています。今回の共通テストの多くの問題において言えることですが、肝心の思考力の部分を誘導で与えてしまい、誘導に乗るだけになってしまっているのが残念です。これは初年度ゆえの過ちで改善されていくことを願います。せめて花子さんのセリフが選択式であれば良問になりえたのかなと思います。

[2]について

これは思考力を問う良い問題であったと思います。特に後半は流れに乗るのも難しく、高得点を狙う層は苦戦したのではないでしょうか。一方で選択肢も少なく勘でも当てやすい問題でした。(3)のようなタイプは全て同じが多いというのはセンターからの伝統です。また、ここでいう勘というのは完全に鉛筆を振って考えるというような勘ではなく、なんとなく数学的に確かではないがおそらくこうだろう、というある程度高度な勘を指すことまで含めます。今回の共通テストではこの高度な勘が生きる場面が多かったのではないかと思います。ここではこの勘のことを数学勘と呼びたいと思います。

数学ⅠA 第2問

[1] について

変更点の「2.日常に絡んだ出題がある。」に該当する問題でした。
twitterではオリンピックに絡めて陸上の話題を出してきた、なんていう指摘も見かけて面白いなと思ったのですが、実際のところはどうなんでしょう笑
試行調査でも五輪の図形の問題が出たことからオリンピックに思い入れのある人が問題作成に関わっているのかもしれませんね。


この問題は変更点では挙げ忘れたのですが、試行調査でも見られた中学生的な1次関数の文章題でもあります。こういう文章題に慣れていない生徒は意外と出来なかったりして差が分かれるところでもあったかもしれません。ここで苦戦する生徒は対策しておく必要がありそうです。また、何をどの文字で置いたりとちょっと混乱しやすい部分もありました。

この問題については3点の批判を見かけました。それについて私見を述べます。

1.ピッチやストライドなど専門用語があり、知っている生徒が有利ではないか。

これについてですが、僕自身はこの用語をなんとなく知っていたので、なんとも言えないのですが、問題なく文章から読み取れそれほど差はつかない出題であったと思います。日常を扱う以上この問題は避けて通れないわけで、有利不利の差が顕著でなければ問題ないと思います。逆に言えば顕著ならば問題であると言えます。

2.単位に注目することで簡単に解答できた。

アのところですが、m/歩などに注目して計算するという化学でよく使うテクニックで解答できますし、また選択肢そのものが違う単位のものを足したり引いたりしたものが多く、それらはありえないという物理でよく使うテクニックで選択肢を切ることができます。これについては数学の試験としてどうだという話があるのですが、基本的にこれ以降もこの手の批判に対して僕は共通テストの側に肯定的な立場です。純粋な数学のみの力は二次試験で見れば良いのであって、共通テストが数学以外の力も問われるということは何ら問題ないと思います。選択肢の作り方が良くないという指摘もあり、たしかにそうかとも思いますが、大問の前半であることを考えると難易度を低くしたい狙いもあっただろうし、単位に注目すると有利になるというのは良い点だと思っております。

3.小数と分数が混在していた。

これについては否定的な意見がほとんどだったのですが、僕は肯定的です。共通テストはあくまで実用的な数学に寄せたいわけなので、実用として小数で考えるべきなのか、分数で考えるべきか悩むというのはよくある話です。あえて小数と分数を混在させて解答者に悩ませるというのはとても面白い試みだと思いました。


[2]について

ひたすらデータを読むだけという問題でした。文章も読みづらいところが多く、最後までいくのはきつかったのではと思います。僕自身もここはかなり時間を要しました。前から順番に解いていった人はこのあたりで時計を見ながら青ざめていたことでしょう。選択問題なのでとりあえず完全な勘で選んでおいて先に進むのが良かったかもしれません。僕自身は三角比の後半とデータの後半はいったん飛ばして後回しにしました。

これも僕の意見としては実用的な数学としては良い、となりそうなものですが、ちょっと読解によりすぎかと。ここでいう読解というのは文章読解とデータ読解をまとめて読解ということにさせていただきます。この分野は試行調査はもちろん、センター試験でも良問揃いだったぶん、あまり面白くなかったという印象です。単純な計算ばかりさせるのがないのは良いのですが、一見計算しなくてはいけないものが定性的に考えればすぐ解けるような問のほうが良いなと思いました。とは言え、全体のバランスとしてはここだけ読解に寄せるのもありなのかもしれません。これについてはとにかく類似タイプの問題をこなす必要がありそうですが、またガラッと変わる可能性もありそうです。


数学ⅠA 第3問

くじ引きの問題。くじ引きの公平性が使える出題を期待して予備校の直前講座でやったのですが使えないパターンでした。標準的な難易度で程よい良問だと思います。比に注目して考えるというのがポイントで、ここは花子さんが一方的に答えてしまうのではなくヒントを出して答えさせるというのも良かったです。また、後半は計算が重くなり、ある程度上手く計算するのが重要になってきます。最後の評価もどれだけ楽ができるか。ここらへんは僕の解答解説を参考にしてください。ただ、そんなに上手くない解き方でも完答している生徒が多かったように思います。


数学ⅠA 第4問

この手の問題は僕は時計をイメージしながら解くのですが、点の打ち方が反時計まわりなのでちょっと混乱しました。とは言え、最初が読めていなくてもいつものax+by=c(ベズー等式)を解いていくだけです。センター時代から本当にベズー等式が大好きのようなので受験生はこれについては高速で解けるようにしておきましょう。毎回、一般的な教科書解法が出るのですが、今後は別のアプローチも出題される可能性はありそうですね。

これは答を出すだけなら比較的易しいです。最後は全て調べてもいけるのでそれが現実的な解法でしょうか。実は、偶数は3回でもとに戻ってしまい、奇数は5回でもとに戻ってしまうので、偶数は最大2回、奇数は最大4回、よってこの組み合わせが最大なのです。試験時間中に気付くのは難しかったと思うのですが、気付いた人は優秀ですね。これは調べるのがメインの解法だとすれば変更点の「7.意味を考えると計算せずに解答できる出題がある。」にあたります。そこらへんは良問だったのですが、力ずくでも頭を使わずに短時間で解けてしまってちょっと物足りなさも感じました。ただ、全体のバランスを見ればこんなもので結果的には良問だったのかもしれません。

数学ⅠA 第5問

教え子には確率、整数を解くことを基本的に薦めるのでここはスルーでいきます。なぜかというと、単純に二次試験で確率と整数の出題が多く、その勉強と通じることになるからです。高得点を狙う層がミスしやすい確率より図形を選ぶという話はよく聞きますが、個人的には確率、整数で良いのかなと思います。ちなみに、選択の3つの中で一番解きづらかったように思います。


数学ⅡB 第1問

まず、手元に問題がない人はこちらを。

[1] について

cos合成でした。ここは出る出る言われすぎていて逆に出ないかと思っていたら出たパターンです。初年度なので素直にここをあてにいけばよかったと後悔しています。

これについて、以前薦めた佐々木先生の本はしっかりと的中されていましたね。

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僕は受験生時代は普通は合成はsinでやるものだと知らずにプロの講師になってから教科書がsin合成しか扱っていないことを知りました。それからは僕自身も三角関数の分野ではcos合成を扱うことはほとんどありませんでした。とは言え、しっかり加法定理を用いて教えています。図示するだけのやり方でsin合成している生徒は少し戸惑ったかもしれません。誘導が丁寧なので大丈夫だと思いますが。ただ、sin合成になれていると、読み取るのがx座標であることを間違えそうになったりするかなと思いました。というか、僕が一瞬間違えそうになりました。後半は文字があり、やや難しかった印象です。


[2] について

双曲線関数の問題でした。これは変更点の「8.有名事実など背景のある出題がある。」にあたります。双曲線関数というのは受験生にはそこまでなじみが無くても大学で数学を勉強するとき、かなり最初に出てきます。高校数学でいう2次関数みたいなイメージです。それゆえ、そんな有名なテーマを出してきたことに驚きました。また、これはどちらかというと数Ⅲで出題されるテーマなのでさらに予想できなかったです。とは言え、問題を解いていくだけなら大したことはないです。最後は誘導に上手く乗るのがポイントです。まず、答を予想し、そのあと確認という流れなのですが、穴埋めテストで確認までやるのは現実的ではないので、そこは解答解説でも省きました。今回はそうでもなかったですが、基本的にⅡBは時間がきついのでここで確認なんてせずに時間がどうしようもなく余ったらやる程度にしましょう。また、その前のところも仮に時間がなかったら、数学勘でそれっぽい答を埋めましょう。花子さんが「三角関数の性質に似ているね。」と言っているので。ここについても後から言っており、実は変更点の「5.あとを読むと考え方が正しいかどうかわかる出題がある。」のパターンです。

この問については色々考えさせられることがあります。最初のほうのマークについては知識としてかなり有名な話で知っていれば埋まってしまうのです。さらに、そこまでマイナーな知識ではなく、大学数学を先取りするような数学マニアなら必ず知っている話なのです。そこで差が付いて良いのかという問題があります。

これについて、僕は共通テストの意義は2つあると考えています。

1.できる生徒とできない生徒を振り分ける判別試験としての意義

2.テストでこの出題をすることによって教育そのものを変える教育試験としての意義

です。
今回は主に2のほうです。共通テストはほとんどの受験生が過去問を解きます。さらに学校や予備校で扱うことも多いでしょう。そのときにこの問題を扱うことで双曲線関数というものに触れて、数学に興味を持つ生徒が発生する可能性があるのです。学校も予備校も授業時間はそこまで余裕がないので、必然的に扱わなくてはいけない問題でこういう話題に触れられるのは教育的なメリットが大きいと言えます。また、こういう知識に触れている生徒が優遇されるというのも、将来数学を学ぶべき学生を選別する手法として間違えてはいないでしょう。こういった理由から僕はこれも肯定的です。また、これからもこのような有名な事実に関する出題は続くと思います。今回も知らなくても問題はなかったので特に対策の必要はないし、対策するとしてもキリがないので気にしなくて良いのですが、頭の片隅には入れておきましょう。

数学ⅡB 第2問

これは解答解説のほうで大体書いたのですが、個人的に今回で一番好きな問題でした。具体から一般、二次から三次へと話が発展していきます。とても面白い問題です。さらに積分計算は1/3公式が使えます。1/3公式はカタマリ積分と本質的に全く変わらないので覚えなくても良いと思いますが、一瞬で計算できるようにしましょう。ここの積分で時間をかけてしまう人は勉強不足です。センターの時代から積分計算は1/6公式か1/3公式が使えることを疑うことから始めなくてはいけません。2次の1/12公式は受験知識で差が付きすぎてしまうため、さすがに出題されないと思いますが。そこらへんを踏まえると計算量は大問通してほぼなく、時間差のつく問題だったでしょう。僕自身は4分程度で完答できました。解いていく過程で良問だと思って嬉しくなってなかったらもう少し早く解けたように思います。ただ、今回は全体的にⅡBにしては軽めだったので、ここで時間をかけても致命的にはならなかったようです。その意味ではもう少しどこかを難しくしてほしかったです。また、グラフの形を選ぶ出題がありました。このパターンは強いて言うなら変更点の「6.コンピュータソフトを例にした出題がある。」に近いです。現時点では同一視はとてもできませんが、今後、3次関数の分野においても変更点6のようなグラフの形から色々なものを読み取る問題の出題が示唆されます。類題に慣れておくと良いでしょう。

数学ⅡB 第3問

飛ばします。

数学ⅡB 第4問

これは完全にセンタータイプの問題でした。ひたすら誘導に乗って計算するだけです。最後だけは少し面白い問題でした。僕がセンター試験より共通テストを推す理由の1つとしてこういう下らない問題がセンター時代多かったことが挙げられます。ただ、前述したようにこれからこういう出題は減ることはあれ、増えることはないと思います。rの値を求めるところで少し頭を使いそうで面白いのですが、ここも全て問題文が答えてしまってます。意味がわからなくてもひたすら乗り続けるだけです。せめて、ここの部分だけでも答えさせてほしかったです。初年度ということもあり、調整の段階で易しくしたのかもしれませんね。今後こういった出題は減ってほしいと思いますが、一方で出ないとも言えないので、これについてはセンター試験をこなし、誘導に乗る練習をする必要がありそうです。誘導に乗るというのは出来る生徒からすると当たり前に思えるのですが、出来ない生徒は本当に出来ないです。ただ、正しい意識を持ってセンター試験の過去問を解けばこの能力は必ず上がるので頑張ってください。過去に書いた記事も参考にしてください。

僕が書いた記事の中で最も読まれていない記事です。センター試験が終わってしまったので当たり前なのですが。笑
とは言え、まだセンター特有の誘導に乗る能力が求められる可能性が出てきた以上是非読んでおいてほしいです。

数学ⅡB 第5問

正十二面体のベクトルの問題です。出題を知ったときはやられた、と思いました。というのも、このテーマはかなり好きで授業でほぼ必ず扱うのですが、今年は私大医向けのクラスでしかやっておらず、私大医は共通テストを受けない人が多いからです。共通テストで狙われると思っていませんでした。2011福井大、2019早稲田国際教養で出題があります。また、知らなかったのですが、高校入試でもベクトルではないですが出題される分野のようです。

ただ、実際に問題を解いて安心しました。というのも、経験の有無がほぼ関係なかったからです。結果的には誘導に乗って計算していくだけの問題でした。とは言え、ベクトルは空間になっただけで苦手になる生徒もいて、見たことない図形というだけで怯んでしまうかもしれません。そういった意味では類題の経験があったほうが有利だったかもしれませんが。

正五角形のベクトルは対角線の長さを求めるのがポイントなのですが、一般にはcos36°の利用か相似の利用が多いです。トレミーの定理を用いることもできます。ただ、今回は知識で差がつかないようにそこもベクトルを用いた誘導がありました。さらに対角線の長さも与えてくれていました。これは変更点の「5.あとを読むと考え方が正しいかどうかわかる出題がある。」です。この問では仮に最初のほうがわからなくても対角線の値から2次方程式を作り戻っていってウエオを求めることも可能です。今回はあまり現実的ではないかもしれませんが、このような手法が現実的な問題が今後出題される可能性は多いにあります。わからないときも必ずそのあとまで読んでみるくせをつけましょう。

安心したというのは全く個人的な感情なので、この問題についていうと誘導がありすぎて結局計算していくだけの問題に終始してしまったのが残念でした。後半は僕の解答解説よりさらに計算を工夫することも可能ですが、そのまま計算しても全く問題ないです。最後は正十二面体のなかに立方体があるという有名事実です。「8.有名事実など背景のある出題がある。」のパターンです。これはそこまで有名でもないので知らない人がほとんどだったでしょう。問題としてはここだけはかなり良く、3つの情報から正方形であることを判断することができるとセンタータイプの誘導に乗った上で見抜き答える必要があります。正方形になる条件は案外難しかったりします。また、これは対称性を考えると意外と明らかだったりもするのです。さらに図があることから数学勘で埋めることもできたでしょう。


共通テストの評価と求めるもの

「共通テストはセンター試験と全く変わらなかった。」そんな声も聴こえてきます。これはある意味解いている側からすれば正しいとも言えます。ただ、僕の各問の分析を見れば全く別物になったことがわかってもらえたと思います。試行調査に見られたような変更点が多数あり、センター試験時代では出しえない出題がほとんどだったからです。ただ、誘導が多かったので、解いている側としてはそこを意識する必要はないし、気付かなくても不思議はないということです。

何度も書くようですが、僕は共通テストに賛成派ですし、期待しています。今回は肝心なところで誘導が付きすぎたりしていて少し残念だった部分もありますが、来年度からそこらへんが改善されれば思考力も問える良い問題になると思います。今年度の問題も決して悪い評価ではないです。初年度で浪人生とのバランスも考えると上出来だったと言えるでしょう。具体的なところは各問題について書いたところを見ていただければわかると思います。

今後の対策

まず、センター試験と変わらない誘導が多かったので、苦手な人はこの対策をする必要があります。これについては上でも記したとおり、センタータイプの問題をこなし誘導に乗る練習をしましょう。

次に以下の変更点を振り返りましょう。

1.定理(公式)の証明に関する出題がある。

2.日常に絡んだ出題がある。

3.誤答について考える出題がある。

4.1つの問題について複数の考え方で解く出題がある。

5.あとを読むと考え方が正しいかどうかわかる出題がある。

6.コンピュータソフトを例にした出題がある。

7.意味を考えると計算せずに解答できる出題がある。

8.有名事実など背景のある出題がある。

9.融合問題がある。

今回は1,3,4,6は全くありませんでした。ただ、今後このテーマも出題される可能性は十分にありそうです。この点については共通テスト前に思っていることとそれほど変わらないので上にもあげたこの記事を読んでおいてください。

8.有名事実など背景のある出題がある。については、思っていた以上に有名事実を出題してきました。この傾向は続く可能性があります。自分で対策するのは難しいので積極的に予備校の問題集を解いていれば同じテーマに出会える確率も高いです。今回の共通テストを受けて各予備校も良問を多く作っていき、今回の共通テスト前と共通テスト後では模試や問題集の質もだいぶ変わってくるのではないかと思います。

加えて、
10.数学勘が生きる出題がある。

これを強く感じました。上の9月に書いた記事でも血中濃度の問題は現実的な答を選ぶよう言いました。それに近いことと言えるかもしれません。鉛筆転がしのような全くの勘ではなく、ある程度選択肢を絞ってからだったり、図からだったり、共通テストの傾向からだったり、多少なりとも根拠のあるものを勘で選ぶようにしましょう。これは8割~9割を狙う層にとってはとても大切で、大問後半の難しい問題が選択なら数学勘でとりあえず答えておき他に時間を使うのが良いでしょう。

また、市販の対策問題集は本番より難しいものが多かったようですが、これらをこなした生徒は本番をかなり簡単に感じたようで実際点数も良かったです。点数をネガティブに受け止めず、やや難しめの問題集までやるのが良いと思います。

問題集については共通テストがいったん施行されたことでだいぶ変更される可能性もあります。対策を急がない高2以下の生徒は買い急ぐ必要はないと思います。

色々細かいことを書きましたが、数学の基本的な能力を身に着けるのが何より大切であるのは言うまでもありません。その上でという話です。

まとめ

課題が残ったのは事実ですが、僕はやはり共通テスト肯定派です。また、受験生はテストを批判してもしょうがないです。そのテストで高得点を得られるような実力をつけるようにしましょう。

長くなりましたが、最後まで読んでくれたかたには本当に感謝します。
受験生は心より応援しております、頑張ってください。


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