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建築家の子育て記 002

2020年3月24日、第二子が産まれた。
COVID-19は着実に感染者数を増やしていた。
妻と4歳の娘と新生児と私。
自粛生活とともに4人での暮らしが始まった。


日常

 いつもの通り家族の中で一番早く起床して、春が起きてくるまで仕事をする。自粛生活が続く中、娘をみながら仕事をするというのは本当に難しい。結果として早朝が1番、仕事に適した時間になる。

 仕事をして、娘が起きてきたら家族全員分の朝食をつくり、食べさせる。午前中は晴れていれば娘と一緒に公園へ。お昼ご飯を作って食べさせてから、育児を妻にバトンタッチして、お風呂の時間までの約4時間、仕事をする。ただ、どうしても娘が私と遊びたがるので、なかなか集中しきって仕事をするというわけにはいかない。

 夕方から娘二人をお風呂にいれて、そのあとは夕飯の準備、片付け、そして寝かしつけへ。これで1日が終わる。単純に仕事量でいうといつもの3割くらいかなというのが率直なところになる。

 4月からスタッフ全員自宅作業にしているけれど、改めて保育園のありがたみが身と心に染みる。

 桜が産まれたころの日常はどうであったろうか。


出産直前

 3月下旬。
 すでに、新型コロナの影響が強くではじめていて、緊急事態宣言はまだなのかとヤキモキしていたように思う。ただ、PCR検査による感染者数は、1000人を超えるか越えないかというところで、日毎の新規感染者もまだ二桁で収まっていた。オリンピックの延期もまだ正式に決まっておらず、世間の雰囲気も正直なところ「なんだかヤバそうだけど、まだちょっと実感ないよね」というぐらいだったのではないだろうか。

 自分たちの仕事を思い返しても、まだ対面での打ち合わせをしていたし、中国からの輸入に頼っている建材以外の部分では、現場は通常通り工事が進められていた。建築業界はなんとなく、感染対策への認識は甘い傾向にあったように思う。

 うちの事務所はそもそもテレワークのスタッフが多かったこともあったのと、私が産前産後は自宅作業に切り替わる予定だったこともあり、全スタッフの自宅作業移行の準備もすでに整っていた。
 学校の休校措置によって、いつも通りに仕事ができなくなるスタッフはいたものの、日常的に子育てに関することでのお休みは全て有給の特別休暇にしていたので、大きな混乱もなかった。

 出産への準備についても、3月23日に入院して計画分娩ということが決まっていたので、3月に入ってからは出張や夜の時間帯の打ち合わせをなくして、少しずつ事務所ではなく、自宅で作業する時間を増やしていた。
 保育園の送り迎えや家事に関しても、おおよそ私一人で全てを担えるように少しずつシフトをしていたので、家庭内の混乱もなく出産への準備を整えることができた。

 妊娠当初は里帰り出産を予定していたのだけれど、ひょんなことから里帰り出産が不可能になり、住まいの近くの周産期医療センターでの出産に切り替わっていた。今の日常を思うと、里帰り出産ではなく、住まいの近くで産んでよかったなと心から思う。

 もし、里帰り出産になっていたら、私はいまだ、産まれた子に会うことができなかったに違いない。

読んでくださりありがとうございました。 いただいたサポートは全て『特定非営利活動法人全国ひとり親居住支援機構』の運営資金にまわり、母子家庭の居住支援を広めていくための活動に活用させていただきます。