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第183回: 転✳職

≡ はじめに

前回は、「統計の実務」の最終回でした。

今回は休憩回ですので技術的ではない話を書きます。

私のここ一年の体験です。ご参考になるかは分からないけど。

「転✳職」と間に✳が入っているのは、検索にかからない呪文です。エージェントさんに無駄なお手間をかけさせたくたくないから。


≡ スペック

私をご存じない方のために簡単なスペックを書きます。1962年生まれで現在59歳の男性です。1985年に某大学の物理科を普通の成績で卒業し、とあるメーカーに就職し、SEのサポートという仕事に就きました。その後、開発を少しした後、1996年にソフトウェアの検証部門ができたときに異動して、最初は自動化ツール(初回のJaSSTでメンバーが発表した)、続いてテスト設計に活動の主軸を移し、原因結果グラフのツールを作ったり、HAYST法(第2回のJaSSTでメンバーが発表した)というのを作って、あと、本を何冊か書いたりしました。

活動の軸を自動化からテスト設計に移すことになった理由は、「オフショアを使った方が自動ツールをメンテするよりも、コストを抑えて品質がとれるんじゃね?」という話になったからです。
裏で自動ツールの方もチマチマ続けていました。

その後、2013年9月に後楽園ホテルの某イベントでスピーチした後に、会場の氷水をグイっと飲んだらブチっと音がして、でもなんでもなかったので、他の人の講演を聴いていたら世界がグルんグルん回りだし(経験したことのない目眩と吐き気)、講演が終わっても一ミリも動けず、突っ伏していたら救急車で隣の駅の東京逓信病院に運ばれて、ICUに。

詳しい話は端折ると小脳出血で4カ月くらい入院しました。小脳なので運動とかバランスとかそっちがやられました。
そうそう、脳外科関係のお話は『アンメット』というマンガがおすすめです。

《ちょっといい話》

入院中に、Yシャツの右袖のボタンをはめることができなくなっていることに気が付きました。(左手の動きがいまいちになってたということです)
まー今も速くつけることはできないんだけどね。

そのときに、リハビリの先生(厳しい女性の先生で、吉留っていう名前なんだけど、みんなには鬼留って呼ばれていた素敵な先生)に、「シャツのボタンがー、もうだめだー--」って訴えたんですね。
そしたら、「そんなの、着る前に右手でボタンをはめてから着たらいいんです」って言われて、、、「秋山さん、以前と違って、できなくなっていることもあると思うけど、目的を達することができるなら時間がかかっても、これまでと違うやり方でもいいんですよ」と。
ふだん、自分がコンサルティングで「目的志向がなんたら」と、言っていたことを言われたのです。自分、目的志向について何もわかっていなかった!



≡ 転機は突然に

自分が定年を待たずして退職するなんて思ってもいませんでした。先の小脳出血から退院後はコンサルティングの仕事を続けていましたし。
定年まではいるし、再雇用制度も使うかなあ、、、と漠然と思っていました。

2018年に割と大きい構造改革があったので退職する気があるならその時がチャンスだったはずです。

好きなことを自由にさせてもらえた会社ですし、家のローンも払い終えた身としては、お給料も十分でした。

ただ、2021年に社名が変わるタイミングで営業専門の子会社に部門ごと移ることになり、テストコンサルの仕事は無くなると聞いて、「うーん」とは思っていました。
、、、で、会社都合で退職することが決まったのは、2021年の2月下旬のことでした。

娘は高校3年生(今は大学1年生)でしたので「就活せねば」ということなりました。

これまで、若者から転職の相談を受けると「黙って転職活動をして、転職先が決まったら、後のことなんて気にせず有給休暇も使い切って、早々と辞めるといいよ。辞めてから就活するなんて有り得ない」と常々言っていたのですが、まさか自分がそうなるとは!? 人生何が起こるか分からないから面白いですね。「まさかやー」(ちむどんどんの暢子の声で再生してください)


≡ 就活

QA人材を求めている会社は多いんじゃないかなと思いますが高年齢のニーズは少ないように思います(業界によらず)。

くにおさん(テスト業界の転職マスター)に相談して、ビズリーチに登録して(プレミアムまでは不要)、オンラインでカジュアル面談して、職務経歴書と履歴書を送って、お試し入社をする。

TwitterとFacebookに『就活中なので紹介してね』と書き込むなどしました。毎日3社は面談するという人もいたけど、私は一日一社にアプローチをしたらクタクタでした。

カジュアル面談が終わったら、その会社に合わせて職務経歴書を書き直しましたし、ハローワークにも行かないといけません。
また、前の会社が支援してくれたリクルートキャリアコンサルティング(以下、長いのでRCCと略す)に行って再就職のコンサルティングを受けないといけませんでしたし。忙しい日々でした。


(再就職先の社名は秘密ではありません。Facebookにも書いています。ただ、中途採用をしないポリシーの会社ですし、学生の入社判断に影響させたくないのでここには書きません)

職務経歴書ですが、学生から就職した時には書きませんでした。(あたりまえ)
RCCでも書き方について教えてくれたのですが、ビズリーチ経由で連絡があった、JAC Recruitmentのエージェントさんが教えてくださった書き方や写真のノウハウが参考になりました。「どういう立場で何をしたかを書く」と良いそうです。添削もしてくださいました。
今はこれらの書類は手書きではなく、プリントでOKなので楽ですね。
これから転職される方は、JAC Recruitmentに登録すると良いかもしれません。
※ 転職支援サイトは、住まい選びをするときの不動産屋さんと似ていると思います。
職務経歴書は超大事です。なにを思って、何を成し遂げたのかを書きましょう。そうそう、全然転職する気がない人も年に一度くらい職務経歴書を書くと良いふりかえりになりますし、いざという時に助かると思います。

なんかねー。面談のときに必ず聞かれるのが「昨年の年収」でした。そして、「テスターにそれだけ出せない」と言われました。同額欲しいなんて言っていないのに。
あと、「いくら欲しい?」とストレートに聞かれることも多かったです。お金は大事ですけどね。

そうそう。RCCのキャリアコンサルタントから、「ご自分が、転職に際して一番大切にしたいことを考えて書き出してください」と言われました。

こう見えて素直なので考えました。その結果、
  【社会のすみっこで日々機嫌良く過ごす】
ことを大切にしたいなという気持ちに気が付きました。
さらに、【優秀な人たちが、それぞれの持ち場で才能を十二分に発揮しているところを見るのが好き】という気持ちにも思い至りました。
「SQiP研究会の委員長」といった、組織を引っ張るお仕事もしたことがあるけど、ずっと「自分には向いてないなー」と思っていました。そういう意味で自分を振り返るよい機会ではありました。



≡ そして一年

就活の結果、「CMMIレベル4」を取る活動を支援するSEPG(Software Engineering Process Group)の仕事を頼みたいという会社に就職しました。「アジャイル開発でCMMIを取った」という珍しい会社ですが、全然そのことをアピールしていない不思議な会社です。

今は、SEPGとは言わずに、 PMG(Process Group Member:プロセスグループメンバー)というのがSEI的には正しそうですが、PMGは聞いたことないです。

毎朝、8:30に出社して、17:30に退社する規則正しい生活です。9時始まりなので、もう少し遅くても良いのですが、もう少し遅い電車が10両編成から8両編成に変わってしまい、座れなくなってしまったのです。(小田急線)

この1年で、やったことは、CMMIの教本を暗記するほどに読み込んだことと、現場で困っていることの支援です。

たとえば、CMMIのレベル4は統計を必要とするのでそのあたりと、CAR(原因分析と解決)の進め方とかです。
品質工学の時に勉強した統計や、品質管理で勉強したTQMや、SQiP研究会の特別講義で聞いた話が大変役に立ちました。

※ もっとも、勉強してこなかったことは役に立ちようがないので、“やってきたことが役に立った”と思い込んでいる認知バイアスの可能性は大です。

おかげさまで、2022年2月に無事にCMMIのレベル4を取得して、今は、レベル5に向けた活動を行っています。

CMMIのことは、ライセンスの関係で書けないことばかりです。
ただ、これから取る人は2.0だけではなく、バージョン1.3の教本も読んで、内容を取り込んでおくほうが良いです。詳しく書けないけど信じて。


≡ 楽しいの?

楽しく働いています。RCCからアドバイスいただいた「転職に際して一番大切にしたいこと」は叶えられているように思います。

せっかく神田に勤務しているので神田古書街と「とやま館」に行かねばと、ずっと思っているのですが、会社は日本橋の方面で古書街とは逆(そもそも神田古書街って御茶ノ水や神保町の方が近くない?)ですし、とやま館も神田駅とは反対側なので行っていません。今年の課題です。

前職では長く六本木一丁目に勤めていたのですが、その時にも、「六本木ヒルズ スカイデッキ」に行きたいと思いつつ行かずじまいでした。
毛利庭園や森美術館や国立新美術館には行ったからいいけど。

仕事ですが、まず、バグが出ていないので、自分の専門のテスト技術の出番がありません。どのプロジェクトもテスト期間中に見つかるバグは数件ですし、リリース後の本番障害なんて、全プロジェクトで年間あるかないかです。

オープン系(ウェブとか)やアジャイルプロジェクトではテスト期間中に多少は出ているようなのですが、、、。

テスト以外にも開発の仕事はたくさんあります。

サービス提供管理
  (Service Delivery Management, SDM) 
戦略的サービス管理
  (Strategic Service Management, STSM) 
成果物統合
  (Product Integration, PI) 
技術ソリューション
  (Technical Solution, TS) 
ピアレビュー
  (Peer Reviews, PR) 
プロセス品質保証
  (Process Quality Assurance, PQA) 
要件の開発と管理
  (Requirements Development and Management, RDM) 
検証と妥当性確認
  (Verification and Validation, VV)
供給者合意管理
  (Supplier Agreement Management, SAM)
供給者選定
  (Supplier Source Selection, SSS)
継続
  (Continuity, CONT)
インシデントの解決と予防
  (Incident Resolution and Prevention, IRP) 
リスクと機会の管理
  (Risk and Opportunity Management, RSK) 
組織トレーニング
  (Organizational Training, OT)
見積もり
  (Estimating, EST)
監視と制御
  (Monitor and Control, MC)
計画
  (Planning, PLAN)
原因分析と解決
  (Causal Analysis and Resolution, CAR)
構成管理
  (Configuration Management, CM)
決定分析と解決
  (Decision Analysis and Resolution, DAR)
実績と測定の管理
  (Managing Performance and Measurement, MPM) 
プロセス管理
  (Process Management, PCM)
プロセス資産開発
  (Process Asset Development, PAD)
統治
  (Governance, GOV)
実装のインフラ 
 (Implementation Infrastructure, II)

CMMIのプラクティスエリア

上は、CMMIのプラクティスエリアです。たくさんの活動がありますよねー。

それぞれのプラクティスの概要については、「CMMI 2.0モデル早わかり」を参照ください。テストは上のVVのところです。

ということで、これらの色々なことを実務に落としていかなければならず、楽しくやっています。リードアプレイザーの小林浩さん(リードアプレイザーについてはこちらで検索すると出てくる公開情報です)とも知り合いになれましたし、今は、S谷さんと協業して面白い仕事を2022年7月1日から始めることができていて、ワクワクもんです。(公に発表できないのがなー。)


≡  おわりに

テスターのといいますか、開発者のキャリアとして、このような仕事があるんだということを頭の片隅に置いておいても良いかもしれません。
給与ということであれば、リードアプレイザーの資格を取って、認定を審査する人になると食いっぱぐれがなさそう。(私は認定する側になりたいとは思わないのですが……)

次回はいよいよ新連載です。


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