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祭りの構造

30数年ぶりに開催された祭りに神輿の担ぎ手として参加した。全長4km弱の道のりを神輿を担ぎ練り歩く中で、多くの地域の高齢者が家々から出てきて、手を合わせ深々と頭を下げ神輿を見送っていた姿はとても感慨深いものであった。昨今は国内各地で神輿の担ぎ手が足りず、中止に追い込まれることも多い。元々はその地域で生まれ育った人が担ぐことが、ある種のイニシエーションのように、共同体を形作る一つの役割を担っていたと思うが、高齢化や地方の居住者の現象に共ないこうしたことも変わってきている現実がある。地域の生活におけるハレの場面を作る祭り事は地域のアイデンディティを維持しコミュニティとしての関係性を育む上でも重要な機会だ。これからも形を変えながらもこうした機会をどのように作り出していくのかということは、人口減少が進む各地域にとっては重要な課題だろう。

神輿の担ぎ手不足と同様に、どのように変わっていくか注目したいのが祭りの構造だ。多くの地域で祭りの伝統的な役割を担うのはその地域に長く住む男性が担うことが多い。参加した祭りでも重要な役割や、神社で行われた出発前の儀式において席が割り当てられていたのは全てその地域で長く暮らす高齢の男性のみであった。

今後ますます人口減少と高齢化が進む中、伝統的な祭りにも運営の体制や分業の方法を、性差や年齢差、国籍差を超えて新たに生み出していくこともまた必要になるのではないだろうか。長い歴史を持つ祭りであればあるほど、伝統に対する誇りや継承していく使命感を抱く人も多いかもしれないが、祭りというハレの日を維持していくためにも、現代にふさわしい形に改良していくこともまた重要になってくるのではないだろうか。

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