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書評(2020年12月)

1.ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務

ファイナンスは用語が特殊かつ結論が曖昧なことが多い。重要なことはわかっているが、非常にとっつきづらい分野であった。ただ、本書は題名の通りざっくりしているため初心者にはちょうど良い。会計(アカウンティング)とファイナンス(財務)の違い、そもそもなぜ会計は日本語でファイナンスは英語?というところから教えてくれる。

個人的には、株主と債権者といったどちらも広義の「投資家」のマインドの違いが面白い。債権者はリターンが予め契約で決まっており、有利子負債は増やさず格付けの上昇をしたいがために安定した経営(=倒産しない)を求める。一方で、株主は収益から原材料費や人件費、元本、利息、法人税、役員報酬など全て引かれた残りを受け取るため、収益を増やさなければ手元にこない。そのため、有利子負債をある程度まで増やしながら株主価値を高めたい。

ROICやWACCなどから企業価値を求める方法までなんとなく知っているから、意味を理解できるところまでは持っていってくれる。概観を掴むにはオススメの本。

2.読書を仕事につなげる技術

読書というものをビジネス書とリベラルアーツに分けなければならない。

ビジネス書:名著。ビジネスパーソンとしての基礎体力をしっかりつけることができる。メモをとったりエッセンスを抜き出すだけでなく、何度も読み込むことでそのまま明日から役に立つ。                      リベラルアーツ:教養に関連する本。ビジネスパーソンとしての個性を形成するための本。得た知識や感性はいつ役に立つかわからない。

自分の読書は幅広い教養を得ることを目的としているためリベラルアーツが多かった。ただ、ビジネスのベースを身につけるために、古典的な教養書もしっかり読んだ上でリベラルアーツを読むことで、その人らしい知的成果物を生み出せる。重要なのは、読書によって得た知識や感性を自分の仕事や人生に当てはめて考えること。得た知識を自分の中で示唆や洞察に変換する作業。読書法関係の本では一番しっくりきた本。

3.革命のファンファーレ

率直に仕掛けがすごい。自身のプロジェクトにしっかりデザインされた販売戦略がある。クリエイターとして創作活動だけでなく、自ら販売、営業も担っている。

ここの戦略、絵本の無料公開、読み物からお土産へと意味を変えるなど様々な実験に裏打ちされた納得感がある。おそらくどれもマーケティング論としては常套の手法を用いているのだと思うが、これだけ行動に移し、実際に結果として出している点は称賛せざるを得ない。やはり、どれだけ素晴らしい戦略を考えられる能力よりも、実際に行動できる能力の方が素晴らしい。

4.AI分析でわかった トップ5%社員の習慣

トップ5%社員の行動特性を検証し、特徴的な要素を抽出している本。どの職場だろうが通用するポータブルスキルの紹介がされている印象。特に目新しいものはなかったが、考えられていた効果的であろう習慣が実際に効果的だったという分析結果があるということは勉強になった。

中でも歩数計をつけて、一般社員よりも14%多く歩き回っているというのは興味深いデータであった。優秀な人が担う仕事ほど座ってするような仕事ではない。

5.採用のストラテジー

学術書という感じで読み応えがある。採用を広義に捉え、社外、学校機関から人材を獲得するだけでなく、その人材の労務、育成なども含めた包括的なホイールモデルこそ、「人を生かし、短期長期の組織パフォーマンスを上げる」本来の人材マネジメントの目的を達成し得る。

採用×育成でいうと今まさに自分にできること。むしろ自分にしかできないことなのかもしれない。これでこの職場で自身がなし得たい事が決まった。

興味深いことに採用がうまくいかない大きな原因が、「採用部署と受入部署のギャップ」が挙げられている。改めて採用部署と受入部署の一貫性の強みを感じた。離職率の低さはここが大きな要因なのかもしれない。

6.官邸vs携帯大手 値下げを巡る1000日戦争

菅総理となったことで今後も大きく動きそうな携帯業界。歴史を見ると異常なまでの官邸の参入が伺える。どこまでもシンプル化を求める官邸と、制度の隙間を縫おうとするソフトバンクの戦いが面白い。

顧客を理解するマーケティングが主流になっている一方で、ここまで顧客に向き合わないことで利益を上げ続けているビジネスモデルを有する業界は他にあるだろうか。ただ、色々な仕掛けで契約を縛り、顧客に他社乗り換えを考えさせないルール作りは文化に昇華された。この携帯大手の努力は敬意を表する。

ahamoが登場しまた状況が一変した。今後がとても楽しみ。

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