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「とどまらないので」「月のあなた」「指先、ひとつ」(詩)




【とどまらないので】


染めないで
くるまないで
留め置かないで
私は流れている
小魚よりも
軽々と
波の合いの手
下りてくる光
私は 斑模様で
だから
整えないで
ゆるませないで
言い過ぎたよ なんて
頷かないで
私はどこかになんていかない
いつも ひたすら手は伸びる
流れ着く先なんて
とどまらないもの
激流の中の小石のように
あらぬ方向へと
ためらわないの


【月のあなた】


ぼんやりと雲に沈む月が
息をしなくなったら
私は泣くだろう

鼓動を助けに行くだろう
 
ぽこりぽこり 落ちる呼吸も
上手にうち返して
もうすこし あと少しと願うはず

白い頬を撫でていく
水浸しの淋しさを
どうかあなたはくれてくれるな

すんなりとうつくしい
こころをかざして


【指先、ひとつ】

手を握ってくれたのかもしれない
耳のふたを撫でて
ありきたりに ふふふ、ふ
髪の毛先から跳ねていく

幸福は 幸運が
運んできたなんて
まだ お下がりだなんて
思っているの?

飾り立てた道が
爪先を削るから
すべて端へ
寄せて置いてくれればいい

石の粒くらいなら
遠くの明日がこともなく
吸い込んでいってくれるから
私は 
指先ひとつの指す方へ

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