見出し画像

我が家の、ちょっと前に起こっていた問題


去年のことだったか、もう少し前のことだったか、
私の祖母の、母親の違う妹のシズコおばちゃんが、
私の母に養子にきてほしい、と言ってきた。

うちはどの世代もちょっと面白い家系図になる特徴をもっている。
祖母は、田舎の(ちょっと権力持ってるよみたいな)大きな家の娘
だった。
だった、というか、だった瞬間はあったのか微妙だ。
それは祖母が女だったから。
祖母の母親は祖母を生んで二時間後に亡くなった。
しかし父親は祖母が女の子だからいらないといったらしい。
それを聞いた祖母の母親の兄が怒り狂い、
祖母を引き取って育てた。
そのあとに祖母の父親が再婚して生まれたのがシズコさんで、
女だからと言って祖母を引き取らなかった家には、
結局女しか生まれなかったらしい。

祖母の件で怒髪天だった曾祖父の意向で、
その家とは疎遠になっていて、
曾祖父が亡くなって、
向こうの家でも代が変わって、
やっと家同士の交流が再開され、
祖母はシズコさんと会ったらしい。

二人に遺恨がなかったのか、私は知らない。
でも祖母が痴呆になる前は、互いに連絡を取り合ってきたみたいなので
姉妹としての、互いを理解しているみたいだ。

そんなシズコさんは少し離れた場所に暮していた。
夫婦で暮らしていたが、夫さんが先に亡くなった。
遺族年金がけっこうな額入ってくるのと、もともとお金を貯めるのが
上手な人だったらしく、家を二件、キャッシュで買っている。
ひとつは昔から住んでいる家。
もう一つは数年前に新しく建てた、二階部分に独立したシャワー、トイレ、小さなキッチンがあり、シズコさんはおいおい古い家を処分してそっちに
うつり、上の階を人に貸そうと思っていた。
そんなシズコさんは、夫さんが亡くなってから一人で暮らしていたわけではない。
夫さんの妹のトミさんと暮らしていた。
夫さんは妹が心配だったらしく、
亡くなる前にシズコさんに
「妹を頼む」
と言われていたらしい。
最初は、二人での暮らしもうまくいっていたらしい。

それが破綻したのは、
トミさんのお金の使い方と、
シズコさんの融通のきかない性格のためだった
のかな、と私は思ってる。
分からないけど。

そこからの、
母に養子に来てほしい、という話になる。

シズコさんは、仲のこじれたトミさんには遺産を残したくない。
トミさんは、兄の遺産でもあるのだから、妹である自分がもらうのは当然。

解決策として、弁護士さんに間に入ってもらい、
母を養子に迎えることで母に遺産をすべてもらってもらう。
トミさんにはいくらかのお金をわたし、古いほうの家を譲る。
というかたちに落ち着いた。

そんなわけで、私は婿をもらったのに
(ただただ私が祖母の苗字を気に入っていて変えたくなかったから)
母と苗字が違う。

そんな一件があってから、一人暮らしになったシズコさんを
形だけでも娘になった母はちょこちょこ気にかけていた。

シズコさんが腰の骨を痛めて入院すると連絡がきたのが今年にはいってすぐだった、気がする。
治すのは時間薬とリハビリしかない、というやつで、
それなのにシズコさんの年齢(90歳!)を考えると
痛くても早めにリハビリを始めてないと筋肉が衰えて
そのまま寝たきりになるかもしれない。
歩けるようになっても、杖なりが必要だろうし、
そのうえシズコさんには痴呆の兆候がでてきている、
とのことだった。

ここから、我が家の問題になってくる。

母は、祖母(97歳で徘徊が始まっている)と家の猫を連れて
シズコさんの家に移り住む、と言い出したのだ。

私の母は70歳。
背の低い、メタボ体系の、そのために胃がよく痛くなり、
お金の使い方が荒っぽく、料理が苦手で、掃除はほぼしない。
年に二回ほど小さな事故を起こし、一度は免許を取り消されている。
家にいればミステリーチャンネルを付けっぱなしで、
常にごろごろしている。
母のちょっと遅れるは最短で30分で、人との約束は破って
相手からの電話がくるまでがセット。
明るい性格と世話好きで外に出るのが好きなために交友関係はひろく、
わりと好かれている。
母親でなければ、私も面白く見ていただろうと思う。
誰かの世話をするために、自分の世話を他の誰かがしてくれなくては
いけない。そういう人だ。
自分の約束は何よりも優先するので、
私が働いていても、祖母と猫のすべてをぽんっと放り出して出かけて行く。
私の諦めの良さは、間違いなく母に培ってもらった。
そんな母の性質ぷらす、母と祖母は折り合いが悪い。
母曰く、祖母は学校の先生をしていて、子供のころ少しも母親らしいことをしてくれなかった、祖母曰く、自分は本当の子供ではないのに育ててくれた
曾祖父たちに迷惑をかけられないと思っていたうえ、曾祖父が母を恐ろしく可愛がって(そして今の基盤を作ってしまった)、自分に子育てをさせてくれなかったから仕方ない、という。
母はその祖母の話も言い訳だと断じていて、
だから今、母親としての責務を負わなかったのに子供としての責務を
自分が負っていることに腹が立つ、のだと思う。
私から言えば、いやいや母もかなり私のこと祖母に丸投げしてたよね?
病気になっても仕事は休んだりしてくれたことないし、
夜遅くまで出歩いていて、先に祖母と休んでいようものなら
機嫌わるくなったりしてたじゃない?
でもあなた私に物凄く子供としての役割を押してくるじゃない?
どゆこと??

まあ、私の話は置いておいて、、、
毎朝、毎夜、ご飯をこぼすとか、母のいう事を祖母が無視するとか、
言う通りに祖母ができないことで物凄く大きな声で怒鳴り散らしている母が
祖母を連れて(それも徘徊する、カギは開けられる97歳)、
90歳で痴呆がはじまっていて介護が必要なシズコさんの世話をしにいく、
(しかも猫まで連れて)というのはどうにも無謀なことだと思った。

何より、今の家からシズコさんの家は車で二時間かかる場所にある。
私は車を運転できないし、電車にも乗れない。
仕事もフルで入っていて、子供がまだ小さい。
何かあったときに、私がここから動くことはとても難しい。
今の生活も、母、私、夫がいてまわるように作ってきたのだ。
それを放り出されたらこちらも生活を変えていかないといけない。

だから、シズコさんをつれて今住んでいる家にいっしょに
暮らしてもらえばいいのではないか、と提案した。
今住んでいる家は大きくて、シズコさんがきても手狭にはならないし
大きく生活を動かすこともない。
母が体調を崩しても私が支えることはできるだろう。
そりゃ、シズコさんがどうしても自分の家で暮らしたいというのなら
お金の心配はないのだから使えるもの目一杯つかって
週末なり、月に何度かなり、母が会いに行けばいい。

それに母は反対した。
理由はシズコさんが我儘で、とてもじゃないけどいっしょに生活なんて
できない。シズコさんだって今まで一人で好き勝手生きてきたのに
誰かと一緒になんて暮らせない。

いやでも、遠くで何かあっても私はすぐに動けないんだよ。

大丈夫、ケアマネが何とかしてくれる。

母が事故にあって、家族の承認が必要な何かがあってもすぐに行かれないんだよ

大丈夫、それもケアマネが何とかしてくれる。

母が風邪なり、体調を崩してしまったら?

ケアマネが、、、

嘘つけ、ケアマネさんがそんなことまでしてたら過労で倒れるわ!
ほんの少し動いたらしんどいと半日ベッドにいてテレビ見てるのに、
その大丈夫はいったいなんなの。

母はとにかく私たちには迷惑はかけない、の一点張りだった。
もう子供の駄々のように、何かあっても私たちに
連絡はいかないようにする、困ったことがあっても自分たちで解決する。

そんなわけにはいかない、何か母のほうで問題が起こったら
私のところに連絡はくるし、連絡がきたら知りません、
手を出さない約束してます、では済まない。
もう二人と猫たちの命の責任を一人で負うには
母は年を取りすぎている。
それを何度も話して、やっと
ちょっと考えてみる、
というところまで落とした。
めちゃくちゃ疲れた。

シズコさんの病院は三か月しか入院ができない。
その期限がくるのが四月の終わりだった。
四月の初めまで、母はやっぱり向こうで祖母とシズコさんと
暮らすほうが、、、と言っていたが、
シズコさん自身が嫌だと言っているわけではないのだから、
本当にいっしょに暮せないのか一月でも暮らしてみてもらえばいい、
というところで決着がついた。
そのまま暮らせそうなら、それでいいし、
どうしても無理ならこの家から通える施設を探すというのもある、と。

シズコさんはめちゃくちゃ寒がりだということで祖母との
二人部屋になる部屋にシズコさんの好きな色の絨毯を敷き、
ベッドを介助用のものをレンタルし、
二人部屋をラティスで仕切ろうと言うので材料を買ってきて
さぁ立てようか、となったところで
やっぱり母も同じ部屋に寝るからラティスはいらないと言い出し、
急遽母のベッドを移動し、
母が使っていた部屋を夫の仕事部屋にもらい、二階にあった仕事部屋を
シズコさんが来るので移動していた子供二人の部屋にし、
まあシズコさんはこちらに来てもすぐリハビリのできる施設に三か月は
入ることになっているからゆっくり家中引っ越しをしよう、
と考えていたのに、シズコさんを連れて帰ってきた母は
「あれ?言ってなかった?施設にはいれるのは二週間後になったから
それまで一緒に暮らすよ」
とこともなさそうに言い出し、
そのあとは仕事がコロナで休みに入ったので少しゆっくりしようと
思っていた私はフルで母の引っ越しを手伝い、
夫の荷物を運び、子供部屋を整えた。

入院ですっかり食が細くなったシズコさんにご飯をつくり、
食べないのをなだめすかし、少しだけでも食べてもらう。
痴呆がはじまっているので、頭の中が白い霧に覆われていくようで
さっきまで分かっていたことが分からなくなる、こわい
迷惑を掛けずに生きてこられたのに、ここにきて迷惑ばかりかけるように
なってしまって辛い。
そういうシズコさんに
「何回でもきいてくれたらいいよ、
うちはもとから人数多いし、家を大きいところ借りていたから
一人くらい増えても大丈夫だよ。
迷惑かけてこなかったなら、しんどいときくらい
かけたっていいんだよ」
何度も繰り返した。
今も一日に何回もそういうシズコさんに繰り返している。
すこしでも一人になると「さみしい」と母を呼ぶ。
母はシズコさんがうちに来たその日に
「あんなに同じこと聞かれたら頭がおかしくなる。
一人でみるなんて無理だった」
と言い出していた。
そりゃそうだろ。

シズコさんはもうすぐ施設に入る。
三か月したらまた戻ってくるのだけど、その時にはもう少し
彼女の居場所を居心地よくしておいてあげたい。

それにしても、母が私に
「な、すごい我儘でこまる」
と言うけれど、あれで我儘になるなら
母のはもう迷惑行為だよ。
一応喉から出しはせずに
「ふーん」
と返すにとどめているけれど。

本当に、母よ
そろそろ家族に対しての「ほう・れん・そう」くらい
しっかりしてくれ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?