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「唇に塗り込み」「星が落ちて」「頬の色」(詩)



【唇に塗り込み】

分からないことからは手を引っこ抜いて
透明化を深める凹みに
この手をまっすぐにさしこんでみて
指先をくすぐる泡の小ささの細々
含まれているのは空気だけじゃない
あふれた光
白く
青く
淡く
つよい
私の皮膚にうたう
その一音ごとに唇をあてよう
さみしい方向を向かないで
いつでもこの先はずっと
かすれる願望すらも拭いとる


【星が落ちて】

私に落ちた星は
かえりたいようになく

私に流れ着いた孤児は
足より目が丈夫で

私に生い茂る森の
土はどんどん私を作り変えていく

正しい道を教えてといったのに
結局この胸を指すしかない

星の落ちたくぼみに湧いた透明に
さあ 名付けようと
新しい移住者はとても
無邪気に私を解いていく


【頬の色】

外面のいい かわいいさん
私の頬をつねってちょうだい

蝶の羽くらいしとやかに
世界にかかわれたら

歩きやすいヒールの先鋭
足指の先を高らかに進んで行って

傾ぐ首に世界の新譜がのっかって
かわいい水色に整っていく

満たしていく穴の数
一杯になったら 塞がった?

たりない道は土を盛って舗装して
小石を降って世界に慣れろと踏みしめる

悲しいままの悲しみよりも
雑多を耳に飾り付け

たくさんの音を立てながら
たくさんの爪の色をなびかせながら

かわいい口先ひとひらを 友に
ふくらむ頬の色を差す


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