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「気泡」から「やさしい手」までの解説のような

昨日に引き続き、
詩の解説のような、
です。

では、
よければお付き合いください。


気泡をひとつひとつ
割っていくように

夢が
光が
姑息さが
割れる時
きれいに砕け散るといい

せめて
と思える何かが
きれいに無へ還るのが
ひとはとても
好きだから

「気泡」

ひとってきれいなものがすきですよね。
だから日頃は見たくないものもきれいに砕けてくれたら満足なのかしら、
と思った詩でした。


本を一生愛しています
本を一生愛していきます
本に一生愛されて
生きていくのを許します
それはとても幸せです
そしてとても浮世です
けして離れないものだと誓います

「本を」

本への求愛です。
毎日言ってます。


重なっていく
紅に
あかねに
重ね滲むかるい夜
とじこめる
解放が一枚ずつ
重ねられていく
海に 島に
鳥に 望遠鏡に
この髪に
あなたのうでに

夜へと

「遠い景色の」

旅行中、何枚も何枚も夕景を汗だくで撮ってくれていた光景を、
描写しようとしたらこういう詩になるんですよね。


光の舌先が
魂の膜を舐める

影を探して
顔を背けるあなたを

そっと染めしめて
とろりと罅を入り組ませ

光の舌は滴の底をあてては
圧倒的にあなたを包む

「朝」

あなた、と書いていますが、これは私の実体験。
朝の光の白さに纏わりつかれたら、
もう降参して起きるしかございません。


小さいものを見つむ見つむ
それは
おおきなところへ
ひろがる広がる一点と
それほど変わりないものと
思われませんか

「大きいも小さいも」

大きなものを突き詰めていくことと、
小さなものをつきつめていくことは、
結局同じ出口で向かい合うことになるでしょう。


愛するひとの手は温い
それを取るためには
冷たい水に
私は手をひたさなくてはならない

樹々の肌に
こする頬を
たとえるやさしさが
私には未だ足りない

あなた
手を差し伸ばすときには
どうか私に
時間を戻す魔法を下さい

「魔法を下さい」

あなたの手は冷たいのです。
それをあなたには気にしてほしくはない。
もうあたたまらない手ならば、
私の手をいくらでも冷やしておきましょう。
その為の時間稼ぎを魔法と呼びます。


時を駆け
耳を抜けていく空
それをとり戻す術はない

雲を置くこともない
闇に探し物をしないで
取り出した光の尊さを比さないで

与えたさえずりの
どこが欠けれいったのか
あしたの果ては生まれてもいないのよ

「明日の果て」

おわりとはじまりを、
幾度言葉を代えて駆け抜けてきたでしょう。
そしてその度に、これほど形はかわれど、
本質は同じ事を言っているのです、
そしてだからこそ、
言い続ける意味はあるのです。


踊る手が
つむる唇が
音を摘む爪先
とじることのない夜に
広がっていく

眼を開いて
遠い星は放り込まれる
受け入れる準備を
あの空が去っても

遠い星は生まれここへ
踊るように生まれここへ

眼の限りをひらいて

「まなこのかぎり」

世界はあなたを受け入れたいと思うと同時に、
あなたに受け入れられたいものなのですよ、という詩。


外へ
外へ行く
音が飛び出す
空間が遮られることのできない
心を通って飛び出していく

外へ
外へ
どこがどこかも忘れたあとへ

外へ
外へ
どこまでも留まることの許されない光へ

「外へ」

ここからの詩は、
一夜の、
いえ本の数時間?一時間?もう時間の分からなくなるような音楽の演奏会で、27編の詩を書きまして、
その1編目だと思います。
さて、これがどんなふうに音楽を詩に変換していったのか、
どうぞおたのしみください。

遠くから指が弾く
私の胸は軽い音
どこまでも追いつけず
インクは湿って置いておかれ
重なる音たちに
哀れみと親しみを
撫でてあげられる

魂の無い人形でも踊るでしょう
夜のつづきを願うでしょう
どうかこのまま
私の胸を弾いて
それに果敢な糸を張って
より軽く差し出すのです

「軽い胸」

胸の奥の心臓の筋を直接弾きまわされているような音楽でした。


最果てに匂いを生むのは
魂の思いのこし
灯火のように
うつくしくはとりこぼせない
染み零れていく
思いが咲く
果てで微か綻びのように
かおる

「最果ての匂いの花」

音楽には匂いもあるようです。

タイトルを知らない歌が
足音を掬いながら
やってくる

笑い声を包む
弔いを芯として
つよく あわく

正しさを論じる手をとり
その口を歪ませる歌が
やって来る

「タイトルを知らない」

私は失礼ながら、
演奏をされている間、ずっと書き続けていたので、
正直音楽の説明や、そのタイトルを知ることが出来ませんでした。
それさえ、すべてうつくしい夜の思い出です。


やさしい手で撫でて
やさしい子の頭は丸く

やさしい口付けでつないだ
やさしい子に夜はなつき

やさしい頷きで繰り返した会話で
やさしい子はあたたかく笑う

「やさしい手」

そういうものであることを夢のように希求している。

音楽は強い。
どんどんと心を引っ掴みだしてくるものでした。
また聞きに行きたいと思っています。

ここからはそのため、しばらくそういう詩が続きますが、
意外にも色んな詩が書けたと思いますので、
お楽しみにしてくださったらうれしいです。

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