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いとけない (詩)

とにもかくにも 美しいんだ
うつせるものすべてに うつしこんでしまいたい
瞳に 湖に 月面に
夜の海 あの暗闇に浮かぶぽっかりとした明りにも

白百合を貼り合わせ
若木の露をあつめあつめ
経った今生まれたばかりの血を
小指にすくって

春のなだらかさを肩に
夏の生々しさを首裏に
深い深い黒の影を通して
身をきしませる寒さで
線を整えて
世界の決まりを 胸に縫い合わせよう

何ともからまりいかれない 美しさだ
たちどころにうつろう あらゆるもののなかで
かきけせない哀れな
この手を走り出した いとけなさ

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