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詩集「喚」掲載作品
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2021年2月の記事一覧

滲煤

滲煤

綴ろうと期待して
墨の欠片を握ってみたが
掌中から溢れ 零れてしまった

惑う
焦燥が企んで 駆り立てた

彎曲した思考が「鸚鵡だ、所詮、鸚鵡だ」と喚いている

嘴は餌を啄んで飛ぶと 貪り笑っていた
肥やせば飛べず 飢えても飛べない
丁度の塩梅は 飼育しないに限るだろう

天も波にも藻掻いて沈む
黒濁が酩酊を呼び込んで
そうして また 廻り続けた

夜呼

夜呼

不快感が背を這っていきます
あなたの言葉がどうも濡れて滲むので
燃やしてまおうと思いました

ズルズル 這っています
やるせなさでしょうか 或いは 弱さでしょうか

呱呱の声でハッとして あなたが去った逮夜を思い出しました

それでも心中は鉛の鯨浪が 喰い尽くすように襲うものですから 塞ぎ込む以外にありません

暗闇であの子が泣き止まないので 見上げてみれば
針の音だけが薄ら笑って こちらを見てい

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鬱雨

鬱雨

精髄から中枢に声がかかる
「一度帰って解受したらどうだ」
そうだなと思った
それなら帰るべきだ
支度をして荷物を持って扉に挨拶をした

日は待ってはくれないぞ
急いで向かおう
切符を買って乗り込んだ
さぁさ向かおう
日は待ってはくれないぞ

隣の席から尋ねられた
「お父さんとお母さんが夜に喧嘩ばかりするの」
「寝ぼけたことばかり言ってちゃいけないよ」
「あぁ 眠いな」
「違うのよ テレビが言ってい

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朧月

朧月

切って繋げて 切って繋げて
あぁ これじゃ光が零れてしまう
雲間が裂けぬよう 神様は
切って繋げて 切って繋げて
幾度も繰り返していらっしゃる

どうしてまた そんなことをなさるのか
さては お月様に心を寄せておられたようで
あまりにも可愛くってたまらないものだから
私たちに見せるのが厭うていらっしゃる
お月様は優しいから 照らして見せて下さいます
皆が見上げるその事に妬心しているのですね

だか

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