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『ワーキング・プア アメリカの下層社会』3日目ブックカーバーチャレンジ

ブックカーバーチャレンジ3日目の今回は、元ニューヨークタイムズ記者のデイビッド・K・シプラー氏が2004年に出版した本。日本語版は2007年に出版されています。

あたしは2001年の10月から、つまり、同時多発テロ(セプテンバー・イレブン)以降から黒人の都、ハーレムに住んでいます。

2005年にハーレム生まれ育ちの黒人男性と結婚。
だけど日本でぬくぬくと育ってきたあたしとしては、黒人のメンタリティーがどうしてもわからなくて、それを知りたくて買った本。

読んでいろんな事が納得したのを覚えている。
と同時に、働いても働いても幸せになれるとは限らないことがわかって絶望して、読み返したいとは思わなかった。

あたしは結婚する前に、ハーレムにある中高が一貫となった公立学校で、日本語を教えている日本人先生のボランティアをしたことがある。高校生はある程度座って授業を受けられるけれど、中学生はそうじゃない生徒たちも多かった。

中学生のあるクラスに先生とちょっと問題にしていた、どうしても落ち着きのない女子生徒がいた。ところが新学期が始まったら、真面目に授業に取り組んでいて一体何があったんだろう、と授業後にちょっと話を訊いてみた。

父親が捕まって刑務所に入ってしまった。
母は私たちの生活費を稼ぐためにもう一つ仕事を増やしたので夜中まで帰ってこない。幼い妹と弟の面倒をみなきゃいけないから、勉強する時間が取れなくなり、授業中に全てをやらなくっちゃいけなくなった。

と言っていた。

確か彼女は14歳だったと思う。
彼女のお母さんは最低賃金で働いているから(確か当時は8ドル弱くらい。そしてここから税金が引かれる)、いくら稼いでもたかがしれている。

あたしが何かを言ったところでアジア人のあんたに何がわかるって思っているはず。だから彼女は「仕方の無いことだ」とたいしたことじゃない、という感じで言ったと思う、やや諦めながら。

諦めているの、人生を! 14歳で!

この負のスパイラル

そんな「負」のスパイラルがぎゅっと詰まった本。

そして、あたしが今現在でも覚えていることは
『シングルマザーの子どもはなぜシングルマザーになるのか?』
ということ。

読んで「なるほど!」と妙に納得したのを覚えている。
そこには『人種』なんて関係なくて。
アメリカの闇の深さを教えてくれた本です。

トランプが大統領になった時、2015年にベストセラーになった『ヒルビリー・エレジー』という本。こちらの本は白人低所得者層の話ということだけど、書評を読んで、これもアメリカの闇を書いていると思った。そして低所得者のメンタリティーに人種は関係ない。いや、黒人だから、白人だからと思っているからこその問題もあるけれど、基本的なメンタリティーはあまり変わらないんじゃないのかな。
英語本を持っているので、いずれ読むつもりです。

コロナのおかげでアメリカの貧困さが浮き出てきている形になってきているけれど、それは今に始まったわけではなくて、2005年の派生したハリケーン・カトリーナ(ニューオリンズが壊滅)でも浮き出た問題。でもそこを見ないでリーマンショックが起こり、さらに混乱。

2008年には黒人大統領になり、多くの人々はオバマさんに託したけれど……

アメリカにあった『アメリカンドリーム』はもうないと思う。
人々は生活に疲れていると思う。
疲れた人達の、出口の見えないデッドエンドな物語。

読み終えた後に放心状態になり、そして落ち込ませてくれた本。
当時1歳半だった息子とどうやってハーレムで生きていこうか、真剣に悩んだ。日本に戻ったほうが幸せなんじゃないか? とも考えた。

本が出版されて16年。
ちょっと読み返してもいいかな。

アメリカは建国500年くらいだけど、闇は深い、深いです。


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2006年生まれのアメリカ人とのハーフの男の子のいるシングルマザーです。日々限界突破でNY生活中。息子の反抗期が終わって新しいことを息子と考えています。