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映画『マンディンゴ』を観て。

まだ息子のお父さんと一緒に住んでいたとき、いろいろな黒人映画を一緒に観たんですよね。その時の記録が残っていたので、こちらに発表させていただきますね。

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『マンディンゴ』を観たのが、2006年の2月。
息子がまだお腹の中にいるときです。
なんでそんな時にこんなヘビーな映画を観たんだろう……。

2月は『黒人歴史月間』なので、その一環として観たようだけど、もっと楽観的なものがいいのにねえ。
とはいえ、いろいろと知りたい時期だったので、観て良かったという感想になっていますね、メモをみたら。

では、行ってみましょう。

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この映画の時代背景は『風と共に去りぬ』と同じ時。
最近では映画で描かれた差別の表現に問題があるので、一時配信を取りやめることを決定していますね。
個人的にはあまり面白いと思ったことがないんですが、母がビビアン・リーが演ずるスカーレット・オハラに骨抜き状態でした。

『風と共に去りぬ』が表の映画なら、『マンディンゴ』は裏の映画。
白人としては(もしくはアメリカとして)世間にしられたくない奴隷と、その奴隷を扱っている白人家族模様についてのお話。

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時代は1820年代。場所はディープ・サウス、ニューオリンズ。

ニューオリンズは湿地帯というのも大きく手伝ってか、この地域にはたくさんの『綿の土地:コットン・フィールドがあった。もちろん働いているのは黒人で、その黒人たちを扱っているのは白人。

主人公はいわゆる地主である白人家族の長男。そんな彼は当時としては「他の人より見解が広い人」として描かれている。

もちろん「白人」なので「正妻」は同じ白人が良いんだけど、奴隷である若い黒人娘たちの「処女」はみんな貰えちゃう特権を持っている。黒人娘たちに反抗する意志なんて認められる訳がない。

ある日主人公の彼はいとこのお家であてがわれた黒人女性に、恋に堕ちた。もちろん彼は彼女とは結婚できないので、自分の家に奴隷として向かい入れ、でも奴隷以上の待遇を、もてなしを彼女にする。

その後日、彼が奴隷市場に行ったときに『マンディンゴ』を手に入れた。
当時は黒人同士で拳闘するのを白人がお金を賭けて観るのが流行っていて(多分、格闘技の大元はここからきているのであろう)、そこで勝ち上がった人。喧嘩の強い(そして白人の欲求を満たしてくれる)黒人のことを『マンディンゴ』と呼んだようだ。

白人の彼は、黒人の彼女と「マンディンゴ」をそれはそれは大切にしていた。彼はとくにマンディンゴがお気に入りで、自分のボディーガードとして、いろんな所へ連れて行っていた。

そして主人公の彼はいとこの妹(もちろん白人)を嫁に迎える。
ところがこの娘が「処女」じゃなかったことから悲劇が始まる。

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「うちの家族や友達はこの映画は観れない」と、当時旦那が言っていた。「あまりにリアルでハードだから」ということらしい。

そう言えば20代半ばに現代美術家である韓国人の所で働いていて、彼女の作品の関係上、日本と韓国の歴史を触れることとなって、韓国が製作した韓国の天皇制を時の日本軍が破壊したというドキュメンタリーを元にしたドラマを見せられた。

「あきつ、どう思う? 日本人としてどう思う?」

普段仕事をしているとき、韓国人だの日本人だの関係なかったのに、この時だけ彼女から問われて、何も返す言葉がなかった。

だって習ってなかったし、何よりも内容がハードでヘヴィーで、どう答えたらいいのかわからなかったのだ。

それと同じように、もしかしたら同列にしてはいけないのかもしれないけれど、アメリカに連れて来られたアフリカ人が奴隷にされたのは周知の事実。そして彼らが受けてきた屈辱的行為も。

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「お前は黒人じゃないから、俺たちのことなんて分かりゃしない」
「俺たちは奴隷だったんだからな!」

と、彼と一緒に生活していたとき、彼だけでなく他の黒人からも言われたことがある。
いつまでもそんなこと言っていないでよ、今は21世紀だよ、奴隷だったのはあなたじゃないでしょう? と当時は思っていたし、彼と喧嘩したときは実際に言ったりもした。でも、この映画を観たときに本当に言葉を失った。

彼らがそう言うのは仕方がないことなんだな、と、妙に納得したのを覚えている。

この映画に出ている人達は「奴隷だけど、人間としての誇りは忘れない」と言った高揚感が感じ取れたと思ったけれど、それは所詮は映画で作られた物語の中だから? とも思った。

そして映画に使われているブルースの威力にも感動をしたのを覚えている。
鳥肌が立った瞬間だった。

ブルースの師匠、マディ・ウォーターズの旋律が哀しいほどマッチしていて、彼の音楽が骨身にしみる映画になっている。

ブルースは彼らの髄から作られた物なんだ、と確認できる。

今流行の音楽だって、例えばラップにしても彼らの話のリズムからよくわかる。初めてハーレムで彼らがストリートで話しをしているのを聞いて「ああ、ラップだ」と思ったのを覚えている。

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この映画の感想として「内容がディープで見終わった後はどこかへ放り投げ出された感じで落ち着かないけれど、とても良い映画」とメモには書いてある。

奴隷になってしまった黒人だって、立場によっての苦悩、当たり前だけど人格あり、支配者である白人にも人格がある。別に「黒人だから」「白人だから」という枠組みにはめられないドラマがある。でも、この時代背景だからこそ、この映画をよりいっそう良い物にしているだろう。
歴史ってやはり偉大。

とも書いてあった。

さてこのマンディンゴ。
アメリカのプライムで無料で観られます。

Amazon prime videoや Netflix で Black Lives Matter に関係する、つまり差別や黒人社会に関する映画やドキュメンタリーが無料で多く見られます。

どれもこれも気合いを入れないと引きずられてしまう、堕ちてしまうものが多いと思いますが、ゆっくりでいいので、観てみるのもよいかもしれません。

マンディンゴ、せっかくだから観てみようかしらね……。

2006年生まれのアメリカ人とのハーフの男の子のいるシングルマザーです。日々限界突破でNY生活中。息子の反抗期が終わって新しいことを息子と考えています。