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【稲妻強盗と蝮のお銀】資料まとめ ほんとにあった話でも、集合的無意識と言われて仕方なくない!?【資料の盆踊り】

⚠️資料紹介の他、個人の感想が多く含まれます。

わからないものはわからない。それに苦しめられた人は多いだろう。
宇宙の果てがどうなってるか分からなくて、もがき苦しんでしまうくらい宇宙の果てを見てみたい人がどこかにいるかもしれない。
それどころか、病気を治す方法が分からず、もう死んだ方が楽なのでは無いかと苦しみを解く方法で滅茶苦茶になっている人もいるだろう。

……私の今の問題は、歴史上の好きで好きで仕方のない人たちが「ただの文字」だと感じてしまう苦しみだ。
ある本の参考文献、またはある人が「○○という本に詳しく載っている」と言うものだからそれを買う。全てを知るような満足を期待する。でもそれは似たり寄ったりなことが書いてあり、結局ただの文字でそこにあなたたちはいなかった。
もはやもう、間違いも合ってるもなんでもいいから「文字でないあなたたち」が欲しくて、霊視の占い師に頼らせて頂いたり、神頼みをしたりまで(今回神頼み系の話はありません)


こんにちは。歴史創作オタクのツムギです。

「歴女だね」と言われても、好きな所を好きなだけ精神のせいか「そうでもないよ」ってよく言っちゃいます。本もよく面白い所だけ先に読んじゃって、あまり興味の無い所がなかなか進まない。

この記事でも触れた歴史人物最推しのこと、「ステラー」をどこで知ったのと色々な人に言われる。

生き物好きなのもあり、なんちゃら科なんちゃら属とか分類していた時
「残念な生き物辞典とかでステラーカイギュウはよく知られるようになったが、その“ステラー”について知った人はいただろうか。どんな人だったろうか」
と調べていたら夢女になっていたという、いわゆる「知識の芋づる」です。

前置きが長くなりました。関係無い話が長くてすみません。

今度こそ本題……知識の芋づるいってみよう。

「稲妻強盗と蝮のお銀」を私が知ったのは、多分おそらく、これを読んでいる人の9割方はここから知っただろうか?と思いますが…(他の経由というのもあり得ますが、おそらく……)

野田サトル先生の「ゴールデンカムイ」です。

作家志望的に、歴史や民俗の解像度にとんでもなく衝撃を受けた作品です。
(私は「無料期間」で本編一周だけですが全て読んでいます。11はKindleで購入しています)

「ゴールデンカムイ」は実に「知識の芋づる」を感じまくる作品です。
野田先生は、一つ一つアイヌの民俗史、日本のみならずロシアなどなど、歴史をくまなく調べ、全く中途半端ではないリアルな作品に仕上がっています。詳しい人にたくさん聞いたり、貯金を使い尽くすほどに資料を買ったと聞き、羨ましいくらいに全てを注ぎ込んでいます。物語を造るのはこれほど覚悟が必要なのだろうと痛感します。

稲妻というあだ名の明治時代に有名だった強盗が、蝮の刺青を入れた女盗賊と出会って〜♪というすばらしいラブストーリーですが、なんとも不思議なことに、野田先生曰く明治時代、実際に二人はいたらしい。そして先生は、この二人とそっくりなアイヌの民話も見つけます。どちらかが創作だと思われているかもしれませんが、資料に則った話ということを記述してあったのが、絵本雑誌MOEのインタビューです。

こんな物語を描きたいと思わせられたほどすごい話です。

さて。ということで二人は存在します。それは一応資料にあるからです。でも色々芋づるで調べれば調べるほど集合的無意識感の激しさにアタイの頭は仮面舞踏会。どんどん書いていきますが、みなさんもきっと「ウソなの?ホントなの?」と血迷うはずでしょう。

「稲妻強盗と蝮のお銀」関連の史実がのってる資料から、ゴールデンカムイのような二次創作、そして全く関係ないのにも関わらず意外とヒントかも?類似人物、これらをまとめました。あくまでも私の知っている範囲内です。個人の感想も一部含まれますので、ちゃんと自分の感想を持ちたいという方はぜひ全部読んでみてください。

まず資料から。

資料!
舞え資料!資料の盆踊り!

北海道行刑史
野田サトル先生が絵本雑誌「MOE」にて解説していた資料である。犯罪者の記録、民話どちらかが野田先生の創作なのではないかとよく思われているだろうと先生は仰っていたが、どちらも先生の元にやってきてくれた資料なのである。
そのうち、この本には稲妻小僧の他、有名な樺戸集治監の犯罪者数々、ボウタロウのモデルだろうとも思われる「海賊房次郎」のことも載っていた。

茨城に稲妻というあだ名のやべえ奴がいて、10代の時に見事な刺青の女盗賊と仲良くなり、明治の脱獄王とも言われた五寸釘寅吉とも三角関係(寅吉はお銀のことが怖くなって逃げるが、稲妻は寅吉とすごく仲良くなってはるばる樺戸でも一緒に釜の飯を食う)
この本には「本土に置いてきた彼女に会いに行くために脱獄をした」と書いてある(本当かどうかは置いておいて)リアル「強く儚い者たち」っぽい書き方にときめいたアタイ。

(な・なんと強く儚い者たちも民話元ネタらしいから、大好きです)
でも、北海道行刑史はあくまでも行刑資料なので、そういう楽しい所は割と少ない……稲妻小僧の説明もすごく箇条書き感を感じて、「ああ、しょせんは文字か」、その文字だけで想像するという悲しき楽しみだけだ。野田先生もそうやって想像(意味深)したんだろう。

実話集として書かれたものがある。

坂本慶次郎 : 稲妻強盗 (近世探偵実話集 ; 第1)
国立国会図書館デジタルコレクションで読める!
……でもスマホのちっちゃな画面で昔の字(昔の文章は不親切よ)を読むなんて辛すぎる
大体目を通して見たけど……と思って調べたら解説してくださっている人がいた!(またまた楽しいトコだけ読んでんじゃネーヨ!)

近所に住んでいたら嫌すぎるという内容と説明しており、ああ、確かにそんな内容だと思いました(作家失格)

殺すぞは挨拶。そして、やっぱりすごいのは当時のドキュメンタリーとしては本当に不思議で想像膨らむ話なんです。だから私はこのような伝説とかに、漠然と夢を見てしまうのかもしれない。

探偵十種 : 近世実話
こちらも実話集。大正時代へと時が進んだからか?前のよりは少し分かりやすい造りだ。写真付きだぞ〜!


新聞資料はこちらを参考にしました。もう昔の新聞読みたくねえ……(デジタルコレクションはめんどくさかったから()みなかったのですが、後々見たいです)

…読んで思うのは、やっぱりどれが正解でどれが不正解なのかわからないことだ…。
本当に「あることないこと書かれてる」のか、それとも本当にジャーナリズムなのか。
霊言聞きたくなる気持ちも分かってくださるだろうか。


お次は二次創作である。私の知っているものはゴカム以外だったら吉田昭の「赤い人」である。


二次創作!
みんなの解釈知りたいな^〜!

吉田昭「赤い人」
歴史小説で、あまりセリフが無い。
この作品でも「北海道行刑史」を参考にしたらしい。お銀も超一瞬出てくる。寅吉強い。肝心の稲妻への印象だが、この作品ではサイコパスさというか、冷酷さを強く表現している印象を受ける。ゴールデンカムイと比べてここまで違うのか、と改めて創作解釈への関心が深まった。
囚人たちの絶望と希望……。小説として書かれたものなので、資料には申し訳ないが、資料の盆踊りするよりは断然面白いので皆様も読んでみて頂きたい。

ゴールデンカムイ
個人的な話をしよう。私がこの作品を読んだのは確か、大学二年生の夏であった。最終回目前の無料配信の時である。
私は高校生から大学生にかけて、斎藤隆介(モチモチの木などの)などといった「創作民話」を探求していた。

斎藤先生の言う創作民話は、「ある地域の民話から自分なりに解釈した物語」ですが、やっぱりその人の思想がモロ出る、そのうち「創作民話って結局なんだ!民話は民話だろ!」ってなってしまい……
今ははっきり言って「創作民話」は死語なくらい、消えてしまった印象があります。

斎藤先生も当初から「説教臭い」、社会主義のメッセージだかなんだかと言われたりしてしまっていた。
でも、自然や歴史から煌めきを集めて自分のココロで書いていく、という作業を見つめてきた斎藤先生を、私は尊敬している(散々書いてるじゃないっすか!?)

そんな「ああ、創作民話死語だなぁ……もっとおもしれーやり方はないんか……」となってる中、この話に出会った。本当に私の中の何かが変わったくらい自分にとっては大きい話だった。創作民話がどうとかじゃ無いんだけど、「この作者は、自然や歴史からまだ知らない煌めきを集めてるんだ」と強く思った。

さて、そして二人の印象ですが、周りが見えてないほどに愛し合ってますね。そして若干詩人です。凶悪犯罪者が詩人……。


そして、次は類似人物です。
なぜ類似人物という項目を立てているかというと、ゴールデンカムイのあの話に対し、ネットに「この人物がモデルなのではないか?」という、推測の情報が多いというのが、また謎に謎を生んでしまっている原因だと思うから、そして世界には彼らにびっくりするくらい似ている人がいるということを皆さんに知ってほしいからです。
ではいきます!ビックリしてください!

ボニーとクライド
まず、「ゴールデンカムイ」内にて「ボニーとクライドの何年前にも……」という記述があるように、多少野田先生が意識しているとも思われます。

キャプテンサンダーボルトとメアリー・アンバッグなにしろ「サンダーボルト」ですからね!特別ですよ。こちらはオーストラリアのアウトローです。
先住民のハーフで強く賢い女性、アンバッグは、サンダーボルトに字を教えブッシュレンジャーとして、恋人として共に旅をしたといいます。
サンダーボルトとアンバッグには子供が3人おり(早逝した子も含む)彼女は彼以外とも子供が多くいましたが、歴代の男は全員彼女が生きている間に死にます。
彼女は色々な人に「サンダーボルトが死んだ後、彼女も32歳で死んだ」と書かれましたが、それは全く噂話で、ひっそりと71歳まで生きています。それを考えると、野田先生の書いたあのオチなんかは「本当にそれでいいのだろうか?」と考えることがたまにあります。平家物語の静御前だって助かって消えてゆくし……。

鬼神のお松
この絵、すごくデジャヴがある。
「鬼神のお松」というのは不良盗賊娘の代名詞だったのだろうか?前述した海賊房次郎の妹のあだ名も「鬼神のお松」と書いてある。だが現代はその言葉すら聞かない。


ここまで来ると「お銀って……集合的無意識じゃね……?」って、若干私も考える。答えが分からなすぎる。そのため東京の奥地へ向かい、霊能力者に頼もうととか考えてしまう。

それにしても、彼女の本心はどうだったのだろうか。10代の頃から20年も愛し合うが、相手は女は犯すわ、見ず知らずの女に言い寄って北海道脱出を手伝って貰ったり、遊郭に行くわ……

私だったら彼女をどう描く?
私的にはきっと、お銀ちゃんは椎名林檎よりcoccoだと思う。

なかなか話題にはならない歴史の脇役たち。この記事を書くように布教をしたい、いや、いつまでも自分だけの空想の友だちでいて欲しくもある。

「刀剣乱舞」のような「歴史に存在した創作上の萌えキャラ」も楽しいけど、みんなに知られていると、巨大コンテンツと、密かな歴史のカケラに比べちゃうと、秘密感が少ないというかさ……。(ゴールデンカムイも大きいコンテンツになったが、稲妻編は何故かほとんど話題にならないからセーフ?)
もちろん巨大コンテンツは「みんなで楽しめる」というすごく大きい利点があるから好きだ。逆に、ステラーやお銀のような「芋づるの末見つけた人々」を好きでいるのを、私はすごく孤独に感じる。
刀剣乱舞のオープニングである「あなたと 私と」は、前のオープニングの方が良かったと言う人もいるが、私にとっては限りなく解釈一致だ。色々な歴史の繋がりが現代のゲーム越し、私にわざわざ会いに来てくれているという、その始まりの歌が。

さて、ということで。
あなただったら、どう解釈して絵描くのか。

中学生の頃の自分が書いたような、時代考証もクソも無いようなしょうもない作品でさえ、その「拾ったナニカ」に感動して解釈して、創ったはず。

歴史や民俗史そのものには著作権が無い(死後70年経ってない人物は別として)
大河ドラマに出てくるような、幾度も多様な作家様方に使われてる人物だって「自分が絵描くなんて遅い、既に先人が使い古してしまった」なんてのは言い訳に過ぎない。

もちろん誰も注目してないモノガタリを拾って、再び何かを始まらせることも良し。
アタイはそれに毎日夢中だ
野田先生の物語に感動した理由の一つも、先生の拾い集めへのリスペクトだ。

資料やスクラップの文字の山から、「もうこの世界からいなくなったあなた」の輝きを集める。
ふと何処からか、物理的ではないが、あなたの匂いがする……いや、しない。やっぱりただの文字の匂いである。
それも夢の束の間、今日も絵描いてゆくのよ。

絵描くのよ。
まだ知らない秘密がその文字の向こうに……。

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