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【秋田杉は柔らかいって知ってた?】地域にはまだまだ知らないことだらけ

こんにちは。秋田県由利本荘市でごてんまりを作っています〈ゆりてまり〉です。

秋田県由利本荘市にUターンしてきてから、4年と少し経ちました。
秋田に戻ってきて感じたのは、「この地域のために何かしたい!」「盛り上げたい!」と考える人が想像以上にたくさんいること。
そして自分の知らないことが、この地域にはまだまだたくさんあることです。


何年か前、県内にある某大学の授業に参加させていただいたときに、こんなことがありました。

授業のテーマは「県内の特産品を使って地域を盛り上げる方法を考えよう」というものでした。
学生たちは6人ごとのグループに分かれ、その中にわたしのような地域で活動する作家や起業家が入り、地域を盛り上げるための具体的な方法を話し合いました。
とあるグループは秋田杉を使った商品開発を提案しました。

そのグループの学生は「秋田杉は硬いので××を作ったらいいと思います」
と提案しました。
しかし、会場にいた木工職人の方が「秋田杉って柔らかいですよ」と、学生が提案した内容を根底から覆す発言をしました。

確かに、秋田杉って柔らかいんですよ。
曲げわっぱや秋田杉桶樽のことを思い出せば、そのことはすぐ分かります。
硬かったら曲がらないですものね。

大変お恥ずかしいのですが、わたしもその木工職人の方の発言を聞いて、「秋田杉って柔らかいんだ!」と初めて気づきました。

ふだんから秋田良品市庭ごえんというお店に商品を置かせてもらっていて、秋田杉桶樽や曲げわっぱといった工芸品を目にしているくせに、そんな基本的なことさえ分かっていませんでした。


これが大学の授業で良かったです。
もし現実世界で、秋田杉の基本的特徴も知らずにアイディアを押し進めていたとしたら、秋田杉の魅力を活かしきれないモノが出来上がっていたかもしれないですからね。
それでは「この地域のために何かしたい!」「盛り上げたい!」と考えていたはずなのに、本末転倒です。
自分の理想を現実化させるためにも、学ぶというのは非常に重要だと思いました。


では、仮に地域の特産物について十分な知識があったとしたら、どんな提案ができるのでしょうか。
先ほどの例に出した秋田杉で言えば、こんな事例があります。

クルビス


「クルビス」というバネバネの木の椅子です。
木の椅子なのにバネ?
不思議に思うところですが、この椅子は積層合板を互い違いに組み合わせることで木材にバネ性を持たせる技術が応用されているそうです。

合板には柔らかさを生み出す針葉樹(スギ)と強度を生み出す広葉樹(ブナ等)を複合しており、強度計算のもと生まれた独特の構造により、木材特有の「撓り」と「強さ」が、新しい座り心地と人が座っても壊れない強度を両立しています。

無知のせいで「秋田杉は硬い」と思い込んでいたら、こんな「バネバネの椅子を作ろう!」という発想は絶対に出てこないでしょう。
わたしもこの椅子に座ったことがあるのですが、しっかりとした木の感触はあるのに、椅子自体がみょんみょんとバネのように動くので、なんとも不思議な感覚でした。
座った人が思わず「おもしろーい!! どうなってるの!?」とはしゃいでしまうような椅子です。

この椅子は秋田駅の待合ラウンジに設置されています。
誰でも座ることができるので、ぜひ座ってみてください!

この待合ラウンジも、素敵なんですよ。
クルビスの他に、秋田新幹線こまちの座席に使用している生地を使った椅子やロッキングチェア、県産オニグルミ材を使ったテーブルや川連塗りのテーブルなどがあります。

秋田杉には柔らかいという特徴があり、それは同時に傷つきやすいということでもありますから、たくさんの人が利用する公共施設のテーブルには向いていません。
そこに硬い広葉樹のクルミを使うのはさすがです。
各素材の特性を活かしながら、秋田の伝統や技巧を伝える空間づくりをしている点が素敵だと思います。


「この地域のために何かしたい!」と思うのは実に結構なことです。
しかし素材の持つ基本的特徴を理解しないままアイディアを押し進めると、結果的に自分の理想とはかけ離れたモノが出来上がる場合があります。
どんなに「美味しい料理を作りたい!」という気持ちがあったとしても、素材の特徴やそれにあった調理法を知らなければ、まともな料理にすらならないのと同じです。
素材の良さを生かすも殺すも、シェフの腕次第です。
わたしも作家として変なモノを作ってしまわないよう、勉強したいと思います。


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