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【デート費用に5万円】横手市の若者交際応援事業についてどう思う?

少し前から、秋田県横手市の若者交際応援事業がSNS上で話題になっています。

https://news.ntv.co.jp/n/abs/category/life/ab14be78f36a5c49e68ba463b4d6c18135

この事業は、市内に暮らす若者の結婚を後押しする目的で作られました。
若者の結婚を後押しするため、交際にかかった費用の一部を市が助成するという内容です。
なかでもデート費用には最大5万円まで助成が出るということで、「カップルのデート代が5万円まで出るんだって!」と話題になりました。

「カップル」といっても、18歳以上(高校生を除く)39歳以下の男女カップルのみに限られます。
申請には誓約兼同意書の提出が必要です。
同意書には「申請時点で独身であり、将来結婚し、子どもをもつ意向があります。」という一文があることから、事業の対象は男女間の異性愛のみで、将来結婚し子どもを産み育てる意思を持つ若者限定ということが分かります。
若者の交際を応援する事業というより、急速な人口減少に悩む自治体の「とにかく子どもを産んで欲しい」思惑が明け透けに現れた政策と言えそうです。


わたしはこのニュースを新聞で知ってはいたのですが、対象の年齢ギリギリだし結婚するつもりもないし、そもそも横手市の事業ということで、完全にスルーしていました。
なんか変なことやってるなー、くらいの感想しか持たなかったというか。
つまりこのニュースを「じぶんごと」としてとらえることが出来なかったんですね。
しかしFacebookを見ていたとき、このニュースについて書き込んだ人の意見を目にする機会があり、なかなかハッとさせられました。
抜粋していくつか紹介します。

「誰の、どんな声を聞いてこれに至ったのだろう。」
「ただ圧倒的な吐き気と不愉快さがあって」
「そもそもなぜ行政が個人の自由である出会いや結婚に干渉できるのか。その権利はあるのか。」
「私たちに対するdisrespectしか感じない。馬鹿にされている気分」

書いたのは、わたしと同じ事業の対象になりうる年齢の女性です。
歯に衣着せぬ表現と感情的な言葉は、他人への配慮を意識してない分、いかに彼女が「じぶんごと」としてこのニュースをとらえ、言葉を発しているかが分かります。

わたしも今一度「じぶんごと」として考えてみましょう。
子どもが産まれた後で「こんな制度がありますよ」と助成してくれるなら有り難いですが、制度を通して「子どもを産んでくれ」と行政から暗黙のプレッシャーをかけられるのはありがた迷惑です。
「子どもを産んでくれ」という暗黙のプレッシャーは、自分の体をまるで勝手に他人から使われるような気持ち悪さを感じます。

絶滅危惧種の保全活動をする人が、少しでも繁殖可能なうちにオスとメスを引き合わせようと考えるのは、当然のことです。
つまり横手市の事業は、ブリーダーとしてなら正しいと言えます。
しかし対象とされているのは、同じ人間です。
子どもを産むことへの無言のプレッシャーや、眼差しの非対称性を感じて、「我々は"飼われて"いるのか?」という疑念を持ったり、反発を感じる人がいてもおかしくないと思うのです。
はっきり言語化できなくても、「なんか変な感じがする」「気持ち悪い」と感じる人は多いのではないでしょうか。
実際わたしも、このニュースを聞いた時にはっきりコメントを残すことはしませんでしたが、「なんか変なことやってるなー」とは思いました。

先ほどご紹介した女性の意見は、「理論的に間違っていない」事実と、「でも自分の感覚としては超絶気持ち悪い」という2つの真実に挟まれた結果うまれたのではないかと思います。
簡単に否定できるなら、さっさと吐き出してしまえばよいでしょう。
しかし自分の中に「どちらも否定できない」2つのものがあるとしたら、スムーズに吐き出すことができません。
だからこそ「ただ圧倒的な吐き気と不愉快さがあって」という表現になったのではないかと思います。


横手市は少子化対策の一環として、「若者交際応援事業」とともに、マッチングアプリサービスの利用料を支援する「若者出会い応援事業」も新設しました。
この2つの事業は、市の39歳以下の若手職員が提案したものだそうです。

両事業は昨年、市の39歳以下の若手職員が中心となり少子化対策を協議する中で提案。市によると「結婚後や子育ての支援も大事だが、人口減少で出会いのハードルが高くなっている。結婚に至るまでの交際こそ援助するべきだ」といった意見があり、事業化に至った。
事業費として、本年度の一般会計当初予算に計約1600万円を計上。デート費用支援は500組、マッチングアプリサービス支援は100人の利用を想定している。

令和6年6月5日『秋田魁新報』


事業の対象にされている方も39歳以下なら、この事業を立案した方も39歳以下なんですね。
果たしてこの事業に1600万円を投じた意味はあるのか。
高校生は対象外とされていますが、高校を卒業したら彼ら彼女らはすぐに事業の立案者/対象者になり得ます。
もしかするとこのテーマは、高校生のディベートにもってこいかもしれません。

さて、横手市の若者交際応援事業について、皆さんはどう思いますか?

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