八月、某、月明かり
最低だ 最低だ 僕の全部最低だ
君を形に残したかった
想い出になんてしてやるもんか
『ヨルシカ/八月、某、月明かり』
これからとても長い話をします。みんなの嫌いな不幸話です。みんなの嫌いな自分語りです。
最近は人間関係の歪み、会社の横暴さ、低気圧や私生活の諸々が重なって非常に参っていました。そういう心のぐちゃぐちゃを言葉のぐちゃぐちゃにして、noteに吐き出そうかなと思います。
正直、生き辛いです。コミュニケーションが苦手です。人が嫌いです。まずはそういった自分がズレてしまったきっかけから話そうかな、と。
12年前の春。大切な人がマンションの6階から飛び降り自殺をしました。当時の彼女はとても冷たい人間で、人が傷付くことも平気でできる人間でした。他人の感情機微に乏しいといった感じで。
彼女は多くの人から嫌われていて、疎まれていて、自分もそんなに好きではありませんでした。それはたぶん彼女自身も気付いていて、もしかしたら生き辛さを感じていたのかもしれません。
ある日の夜、彼女から電話がかかってきました。理由もなく、なんてことない話を延々として、
「あ」
「なに?」
「月」
「月?」
「すごく綺麗」
見上げてもその日は曇りで月は見えなくて。
「ねぇ、本当に同じもの見てる?」
「わたしっておかしいのかなぁ」
「おかしいよ。君は」
「そっか。やっぱり私っておかしいんだ」
言って笑う彼女にどこか違和感を覚えましたが、笑っていたので大丈夫だと思いました。電話が終わって数分後、彼女が自殺をしたそうです。
普通に話していた彼女が、笑っていた彼女が、見えない月を綺麗だと言った彼女が、その数分後に飛び降り自殺。携帯越しの彼女は本物だったのか。あの夜、本当に同じ月を見ていたのか。本当は、違う光で見てたんじゃないかって。
たぶん、そこで自分はズレてしまったのだと思います。歪んでしまったのだと思います。考え方も、生き方も、捉え方も、接し方も、呪いも。死生観も。様々なことが、色々な感情が。自分の中に、ズレが生じてしまったのだと。
彼女が飛び降り自殺してから数日、助かって「しまった」彼女のお見舞いに行くことにしました。どんな顔して会えばいいか分からないまま、彼女と対面して、色々と真相に触れられずに話をしているとあることに気付きました。
彼女の話し方も、趣味も、好みも、性格も、なにもかも自殺する前の彼女とは違っていました。そのとき、「自殺する前の彼女は、確かに飛び降りて死んだんだな」と思いました。それは彼女が意図したものなのか、自然とそうなったのかは分かりませんが、昔の彼女は死んだことにして、今の彼女に向き合おうと思いました。
ある日のこと「そうだ。これ見てよ」と渡されたのがダンボール箱で、中を見ると千羽鶴が入っていました。彼女のことを嫌ってる同級生から千羽鶴? と不思議に思いましたが、彼女から「どれでもいいから鶴を開いてみて」と言われて開いてみると、紙に悪口が書かれていました。
一枚一枚、丁寧に。「これ全部?」「たぶん。やべーね」やべーねって言いながらダンボール箱をひっくり返して、いくつもの色の鶴が夕陽に照らされて光って床に落ちて。その中心にいる彼女がとても綺麗で、嫌いで、鮮明だと思いました。
長くなってしまったので今回はこの辺で。とりあえず、少しずつ自分の生き辛さを知ってもらえたら幸いです。ありがとうございました。
改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652