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もっと早くさくらももこのエッセイを読んでおけば良かった。

積ん読を消化する一方で同じ分、いやそれ以上にAmazonでぽちぽち本を買ってしまう日々が続いている。1週間ぐらい本の買えない環境にぶち込まれないとこの状況は変わらないかもしれない。


そんな中でkindleで結構本を読んだ。最初はスマホだったが、買ってから使わなくなっていたKindle whitepaperで読むことに。短い時間読むのではあまり効果は実感していなかったが、目が圧倒的に疲れない。

文庫本を風呂場に持ち込むとシワシワになってしまうが、このKindle専用端末ならその心配はない。別にスマホもシワシワになることはないのだが、水没した時に失うものが多すぎる。そういう意味でも安心安全(?)なKindle whitepaper。

Kindleで読む本を探していて見つけたのが、さくらももこの本だ。ちびまるこちゃんの作者。エッセイが面白いと以前友人から勧められていて興味もあった。

ポチった。

本の配送は数日かかるが、電子書籍は一瞬だ。これを漫画でやったら大変なことになる(実際すでになっているのだが)。


最初は「ふーん」というぐらいの気持ちで読み飛ばしていたのだが、どんどん引き込まれた。めちゃくちゃ面白い。本を読んであんなに笑ったのは久しぶりだった。

風呂場でケタケタ笑い声が響いてくるのだから家族からはだいぶヤバいやつだと思われたかもしれない。


睡眠学習のために買った音声再生機能付きの枕に、父親がいたずらをした時のやりとりが良い。

私と父は機関銃のように笑った。バージンボイスを「ーーーーーーー」に 奪われた枕は、少し震えているように見えた。

「機関銃のように笑った」

この一文を読むだけで笑ってしまうのは僕だけだろうか。

「バージンボイス」

いつか自分も使ってみたい言葉だ。何について書く時に使えるのかは全く分からないが。

引用部分の「」部分は実際に読んでからのお楽しみ(自主規制)。


それと、同級生の父親が亡くなる直前に放った一言として紹介されているのも衝撃的だ。

急に目をカッと見開き「ナッパ!!」と絶叫して息をひきとったそうだ。

さくらももこはこれについて「菜っ葉の空中遊泳でも見たのだろうか」と冷静なツッコミを入れているが、ドラゴンボールファンが読んだらこれはベジータになりきっているようにしか読めない。


スズムシのくだりもすごい。

あんなに女の気をひこうとがんばった男たちであったが、生殖が済んだとたんに、単なる栄養補給のリポビタンDと化す。なかなかムダの無い一生ではあるものの、意味の無い一生であるともいえる。

これはスズムシのオスについての話だ。

カマキリのメスが交尾後にオスを食べてしまうのは有名だが、スズムシも同じらしい。昆虫の世界は世知辛い。子供が生まれたら奥さんは母親になっちゃったと言うのだが、スズムシは交尾したら男をもはや栄養源としか見ていない。

まあ人間でも経済的に栄養源として考えられているオスはいっぱいいるのかもしれないな。そうはなりたくないけれど。でもリポビタンDになるよりはマシか。


シュールで独特な言葉遣いで、個性的な世界観を表現するさくらももこだが、その家族観もまた興味を惹かれる。

私は、親の所有物として生きてきたつもりはなく、親もそのような気持ちを持った事は一度もないと思う。 親にとって私や姉は、お腹の中からやってきた、これから一緒に喜んだり悲しんだりする、いとおしい仲間であった。

家族は「いとおしい仲間」だと言える人生は、素直に羨ましいと思う。良い意味でも悪い意味でも「絆」なのだと思っていた自分にとって、仲間という表現はとても、とても新鮮に響いてくる。

「家族だからこうしないと」「家族なのにどうして」

家族という言葉を義務感の範疇に引き込みたくなってしまいがちだが、そうではなく、もっと素朴に側にいる仲間だと思たら、人生はもっと楽になるのかもしれない。


笑えるし、考えさせられる。

さくらももこのエッセイ、次は紙媒体で読みたい。本棚に置いておきたい。これはきっと、心のリポビタンD。

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