#創作大賞感想『白山の蛇』 ひよこ初心者さん
ご本人がおっしゃるように、この作品は『普通の高校生は人形劇の夢を見る』『ひとりぼっちの高校生は少女の面影を見る』に続く第3話です。つまり三部作の最終話ですね。
(続きが生まれそうな気配ではありますが)
更にご本人がおっしゃるように、前2作を読まなくても、単独で充分楽しめます、はい。
でもですね。
読んで。
前の2作を読んでおいた方が、絶対楽しめます。
もし「前のは読んでないけど、先に第3話読んじゃった」という方は、ぜひ前に戻ってみて。
そうするとすでに読み終えた第3話の面白さが、するめを味わうみたいにじわじわ沁み出してくるから。
さてその第3話、『白山の蛇』です。
前2作と較べると、色彩というかトーンがぐっと抑えられた感じがします。
白と黒のモノトーン、そして時に、さっと一瞬だけ鮮やかな色が差し込む感じ。深い雪の中で、凛と花を咲かせる緋色の椿がまさにそうですね。
映画『シンドラーのリスト』で、白黒の画面の中で突如鮮やかな赤いコートを着た少女が登場する場面を思わせます。
さてストーリーの方は、触れるとどうしてもネタバレになってしまうので、あんまりスジについては書けないです。
むしろ私が本作を読んで思ったこと。
ひよこさんは、人物の風貌描写が上手い。
私事ですが、実は私はあまり風貌描写をしません。それが物語上必要であれば書きますが、それ以外はほんとにちょろっとだけ。あとは読者の中でイメージ膨らませてもらえばいいかな、と。
実際、拙作『蒼に溶ける』でも、具体的な風貌描写はほとんど書いてないです。でもひよこさん自身が、名前も挙げられるぐらい身近な人の中で「あの人みたい」と思って下さっている。そういうの、ありがたいですね。
でもひよこさんの風貌描写は、とても丁寧かつうるさくないという、まさに過不足のない按配です。
ちょっと挙げてみますね。
長髪は白く、華やかな柄の着物と相まって人形のような印象を与える。だがその人形の目は充血し虹彩が細く見え、爬虫類のそれを思わせる。その瞳を少しだけ細めた。(第2話)
ひいいいいい。
でも懲りずにもうひとつ。
控え目な声が後ろからかかる。振り向くと一人の女が立っていた。襷たすきで袖を上げ細く白い腕をさらしている。その腕が海老茶色の前掛けを持ち上げ軽く手を拭く。黒髪は下の方でまとめ、薄紫の組み紐が揺れる。目が合うと泣き黒子のある目元で柔らかく微笑んだ。その微笑みに俺は胡蝶を思い出す。(第3話)
うーん、風貌と情景がうまーく織り交ぜられて描かれてますね。
いいねえ、ぱっとその場の様子が目に浮かびます。
こういう感じでさらりと描写できるといいですけどねえ……精進しよう。
この記事を書いている今日は、7月31日。創作大賞応援週間最終日です。
長く続いたお祭りも今日が最後。みなさんお疲れさまでした。
自分の作品を多くの方に読んでいただけたのも嬉しいですが、こうやって他人様の書かれたお話を読んで、いろいろ勉強できたのも大変な収穫だったと思います。まして感想文書くとか、なかなかないですからね。
でも他人様の作品を読むと、自分のものの粗さも目についてしまって、ちょっとばかり凹みます。でもそれもまた収穫のひとつだし、また次に繋げていくためのエネルギーにできたらいいなと思います。
たくさんのエールや気づきをくださった皆さまに、心から感謝いたします。
さて、最後に一言。
澪がかっこいいからもっと出番増やして!!!
第1話・第2話はコチラ ↓
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