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そんな時代もあったね ~人生で最初に勤めた会社の女性の働き方とは

昨今の男女の役割についての議論を見ていて、ふと当時を思い出したのでつらつらと書いてみました。
以下は今からだいたい25~30年ほど前の話です。あの頃ですら、友人たちからは「相当ヤバい会社」と言われていました。少なくともこれが当時のスタンダードでなかったことは確かです(笑)

*なかなか過激なのでご注意ください(笑)

①女性の外出が原則不可

・営業職不可(ないのではなく禁止)
・単独出張不可(男性が連れて行くのはOK)
・どうしてもの場合は制服を着ていくこと
・社用での運転禁止(プライベートでも車の運転は推奨はされていない)

②とてつもない頻度のお茶当番
・お茶当番が3種類ある(部署内・全体・部署担当)
・男性社員の好みを覚えて淹れる(ミルク・砂糖の有無など)
・社内会議時は全員(多い時は50人ぐらい)のお茶を淹れ、かつポットに数本作り、さらに1時間に1回、お茶を出し直す
・社長の趣味で高級なティーセットを購入し、客の前で本格的な紅茶を淹れさせる(さすがに数か月で廃止)
・夏は冷えた麦茶を作るため、無給で1時間早出(日に2回作る)

*ちなみに社員への日常のお茶淹れは途中で廃止になった。出すのは客と会議のお茶のみへと変更。

③その他の日常
・女性社員全員に花を生ける業務あり
・自分の真後ろにあるFAXの送信をやらせる(コピー取りは常識)
・夏は常に部屋の室温を18℃に設定(外から帰社した男性が暑いので)

④男性優先が基本
・座席表で女性の名前はひらがなで書かれる(男女区別のため)
・朝礼などで一室に集合した場合、男性の後で退出しなければならない
・飲み会や親睦行事などでは、お酌をしなければならない
・女性社員の体を触る、手を握るなどの行為は普通にある
・バレンタインデーは役員自らチョコを要求する

⑤女性の働き方
・「女性は結婚したら仕事をやめるべき」が社内公式見解
・自立業務があるのは総務・経理のみ。あとは男性のサポート職しかない
・女性(私)が作成したシステムを男性社員が作ったことにされた
・経理のベテラン女性社員(10年)より、入社したての男性大卒社員の方が給料が高い
・入社式で、ある先輩女性社員が「仕事はよい花嫁修業になる」と挨拶
・別の先輩女性社員から「上司の明らかなミスを見つけたら?」と質問され
   ↓
「指摘する(もちろん言い方に気をつける)」と回答
   ↓
「やっぱり新人類。上司のミスは指摘してはいけない」と真顔で説教。
   ↓
「でも会社の損失になりますよね?」と反論
   ↓
「それは上司が考えればいいこと。私たちには関係ない」と言われた。

⑦振り返って
ざっとこんなところでしょうか。
これらはあくまで「女性の立場」についてのハナシであり、それ以外のことになればもっといろいろあります。
会長が会社の金をつぎ込んで美術品(贋作多)を買い込み、そのせいで社員のボーナスがものすごく少なかったとか(笑)

男女差別がどう、ということはここでは問いません。
ただ、自分が卒業して最初に入った会社はこんな感じだった、という単なる過去の事実です。
当時の私は若かったのでそれはそれは頑強に反抗し、結果としてそれなりの立場を得ましたが、社内での評判は見事に賛否両論だったようです。
女のくせに可愛げがないと陰口を叩かれる一方で、ちゃんと応援してくれた人もいました(笑)

後になって「あの会社での経験は無駄ではなかったな」とは思います。
あの狂気のようなお茶淹れ業務が正しいとはまったく思えませんが、逆に業務の合理性というものを考えるきっかけになりました。
そして「自分たちが正しい」と信じている人たちの、微塵も揺るがない頑なさを身をもって知りました。もちろんそれは当時闘っていた私にも当てはまるのですが。

またそれは同時に、既に現代の社会からは取り残されつつある、今の自分へのいましめでもあります。
私自身が今の社会(もしくは若い世代)に、古い物差しでもって「○○すべきじゃないか」と考えているかもしれない。いや、多分にあると思います。
人間、なかなか自分の中の価値観を変えるのは難しいよな、と。

にもかかわらず、この会社で出会った人たちとは、今でもわずかながら交流があります。お世辞にも女性に対してフラットな会社ではなかったですが、だからと言って悪いことばかりではありません。

この会社から教わったことは本当にたくさんありました。pcというものが一般的になりつつあった時代、わずかに先取りする形で目一杯勉強させてもらいました。
頑迷な慣習をぶち破り、私が社内で初の女性単独出張(しかも定期的に)を成し得たのは、その勉強を助けてくれる方々がいたからです。

確かに先輩女性社員の方々は、私とはずいぶん違った価値観を持っていました。でも「仕事はよい花嫁修業」と言った私の直属の先輩は、実際には本当に優しい人だったのです。生意気な私をとてもとても可愛がって下さった人でした。
(のちに残念な事件が起こり、その方は会社から浮き、同僚とも仲違いしてしまったのですが)

風の噂では、もはや創業者一族はとうの昔にいなくなり、今はまったく関係のない人たちが経営していると聞いています。私が知っている人も、もう数えるほどしか在籍していません。その方々がどうしているかも知りません。
(交流があるのは辞めた方ばかりなので)
せめて今は、男女問わず働きやすい環境であればと願っています。

あの頃に独学で覚えたプログラミング(VBA)は、なぜか今でも少しばかり使えます。10年前に医療系の専門学校で得た知識はかなり忘れてしまったのに。若い頃に覚えるって大事なことなんだな、とつくづく思います。
少なくともその後の私の社会的な土台を作ってくれた会社だった、ということは疑いのない事実です。

ありがとう、私の最初の会社さん。

(了)

*最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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