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【朗読】肩乗り悪魔の神対応

朗  読:のりてるぴか様
編  集:ひすい(のりてるぴかJr.)様
作品掲載:ベリショーズlight 『肩乗り悪魔の神対応』
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08FB729TG?notRedirectToSDP=1&ref_=dbs_mng_calw_5&storeType=ebooks
*動画案内の下に原作を掲載しております。

肩乗り悪魔の神対応  *一部音声と異なる部分があります

夏休みも終盤に入り、悟は毎日憂鬱だった。

「あー、まじでヤバい……」
「何や、辛気臭い」
不意に耳元で声がして、悟は椅子から飛び上がった。

「な、何だおまえ」
「ワイか。ワイは悪魔や」
「あ、あくま?」

悟は呆気に取られたが、黒ずくめの衣装に小さな角、先の尖った尻尾まで、いかにも悪魔らしい外見ではある。

「そや。ちょいと覗いたら坊がアタマ抱えよってん。こら美味うまそうやと」
「何だよ、人をメシみたいに」
「何言うてん、悪魔は人間の不幸が大の好物なんや。知らへんのか。ところで何悩んでんねん」

戸惑いながらも悟は答えた。

「夏休みの自由研究が手つかずで困ってんだよ」
「ほな、学校したろか?」
「ば、馬鹿言うな」
「あかんか?」
「当たり前だろっ!!」
「めんどいやっちゃなー。まあええわ、当分邪魔するで」

その日から悪魔は悟の肩に居座り続けた。
家の中はおろか、塾にまでついてくる始末だ。

「悟くん!」
同じクラスの葵から声をかけられ、悟はドギマギした。

「ねえ、自由研究終わった?」
「ま、まだ……葵ちゃんは?」
「私、昨日終わったよ。悟くんも頑張ってね!じゃあまた来週」

そう言うと、葵は横断歩道に向かって駆け出した。
不意に悟の肩が軽くなる。

「危ないっ!」

悟は葵の手を掴んで引っ張った。
二人のすぐ前を信号無視の車が猛スピードで走り抜ける。

「何すんだよっ!」
悟は大声で怒鳴った。葵が走り出す瞬間、悪魔がひらりと離れて葵の肩に飛び移ったのだ。
そうとは知らない葵がぽろりと涙をこぼした。

「怒るなんてひどい……」
「ち、違うんだ、これは……」

初めて見る葵の涙に悟は慌てた。
だが葵はさっと身を翻すと、今度こそ走り去ってしまった。

「……なあ、ほんまごめんて。えらい別嬪べっぴんやったからつい乗ってもうたんや。でも坊、カッコよかったで。きっと彼女も……」
「いきなり怒鳴りつけた僕を大嫌いになるさ!満足か、この悪魔!」

悪魔を悪魔と罵っても仕方ないのだが、今回ばかりは応えたらしい。
「……堪忍な」
小さな声で呟くと、悪魔はふっと悟の肩から消えてしまった。

翌週悟が塾に行くと、驚いたことに葵がおずおずと近づいてきた。

「あの、この前はありがと……悟くん、自由研究できた?」
「う、ううん、まだ……」
「私、手伝おうか?もしよければ、だけど」
「え……」

見れば葵の肩の上に、くだんの悪魔が乗っているではないか。
「じゃ、じゃあ頼もう、かな」

悪魔はニッと笑って親指を立てると、小さく手を振りながら光にとけて消えていった。

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