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<年齢別>小学校バスケで教えてあげたいこと

僕は、ミニバスケットボール(通称ミニバス)で、小学生を教ています。
未経験者からお父さんコーチになったので、本などを読んで調べながら練習メニューを考えてきました。最初は、低学年を教えていましたが、最後は、上級生男子のヘッドコーチとしてチームを率いていました。そんな背景で、調べた知識を整理して、年齢別で、どういうことを教えるのが良いと考えたのかをご紹介します。

運動神経は遺伝する?

小さい頃から「運動神経」という言葉を聞きますが、医学的にそのような種類の神経はないようです。スポーツが得意な子を見ると、運動神経が良いと言いますよね。その正体について整理したいと思います。
「運動神経」と似ている「運動能力」という言葉があります。運動能力は、足が速いとか、高くジャンプができるとか、遠くまでボールを投げられるという能力を示します。比較的、単一な動きを示します。身長や筋力・骨格に依存することもあるので運動能力は遺伝すると言われます。一方で、運動神経は、状況に合わせながら、複雑な動きを、適切に実施することです。これらは訓練によって神経伝達を強化することができるため、運動神経は遺伝しないと言われます。だから、運動が苦手な父母からバスケの上手な子が育つ可能性は十分にあるのです。親からすると、自分にできないことを子供ができると、その成長が嬉しいですよね。

運動神経の正体

運動神経は「状況に合わせながら、複雑な動きを、適切に実施することです。」と言い切ったのですが、下に図解をしてみました。
仲間や敵の場所、ゴールの位置、ボールの回転などの状況を、視覚・聴覚・触覚を駆使して知覚します。それらを統合して、脳で、自分がどう動くべきかを判断して、適切に手足や身体を動かすように指示をします。その動作がボール等に作用させます。これらを連続的に実施することが運動神経の正体です。

運動神経の正体

 「身体を思い通りに動かす」という点で、武井壮の笑っていいともの動画は絶対に見ておく価値があります。どうやって能力を伸ばすべきかについても示唆があります。彼は、見たままに自分の身体を動かすことができるので、初めてのスポーツでも、上手い人の動きをすぐに真似できるので、スポーツ万能のようです。

バスケの試合では、これらを高速に実施していきますし、練習では、状況をパターン化して理解して、思い通りに身体を動かす練習をしていくということになります。文章を読んでいるだけでも、脳神経が刺激されそうですね。

ゴールデンエイジ

「ゴールデンエイジ」という言葉は聞いたことはありませんか?
子供のスポーツでは広く知られている考え方で、大人が何度やってもできない複雑なことでも、小学4年生から6年生ぐらいの子供は、一瞬で習得できてしまいというお話です。その背景にあるのが、スキャモン発育曲線で、スポーツの指導書に必ず出てきます。
いわゆる神経系の発育の最終段階で、9〜12歳には成人と同じに程度まで発達する。それまでの間に様々な運動にチャレンジして、神経回路を形成せさせることが重要であるという考え方です。もちろん、ゴールデンエイジ以降だと習得が不可能という訳ではなく、ゴールデンエイジだと簡単にできてしまうが、それ以降だと習得に時間が掛かるという話です。

これは脳神経ということなので、小さい頃にピアノを習った子が絶対音感があるとか、英会話の発音でLとRの聞き分けができるとかも同じ理屈なのでは?と思います。小学校の頃に覚えた歌はいつまでも忘れないという現象もあるようです。

スキャモン

年齢別の運動強化方針

スキャモン曲線は、身体の臓器の発達の話だが、以下の図は、いつ頃に何を強化すれば良いのか?を示しています。すなわち、指導すべきベストなタイミングを示しています。例えば、ねばり強さは呼吸・循環系と連動しており、10歳を超えた頃から上がってきます。小学校4年生以下までは、スタミナ的な負担を掛けるのを控えるべきで、中学生になるにつれて長距離走トレーニングなどを導入するのが効果的と示しています。
また、赤いカーブで記された力強さは筋力強化を意味しており、更に遅れて立ち上がります。つまり小学生での強化はオススメできません。中学生になって、自重を使った筋力トレーニング(腕立てや腹筋)を始め、身長の伸びが止まり骨格ができてきた高校生になってから、器具を使った筋力トレーニングを始めるのが良いことを意味しています。

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9歳の壁|小4の壁

小学生にバスケットボールを教える上で、もう1つ考えておくべきことがあります。それは、子供達のコーチの指示の理解力です。
「9歳の壁」や「小4の壁」と言われていますが、4年生を超えたあたりから、抽象的思考が理解できるようになると言われています。文部科学省も、低学年には具体的に近くできる内容にとどめ、小学4年生になるころに、抽象度の高い内容を教える教育指導設計をしているほどです。4年生に習う漢字熟語を見ると違いが感じると思います。例えば、客観、機転など、実物が見えない抽象概念を覚えます。これは、前述のゴールデンエイジと同じく脳神経の発達が関係しているのでしょう。
子供にもよるのですが、小学校低学年までは、複雑なことは理解できません。正直、落ち着いて話を聞くことすら難しく、体育館に蝶が飛んできたら、それに反応してしまいます。何度教えてもできないのが、普通なんです。

<年齢別>バスケで教えてあげること

ここまでに、運動神経についてと、子供の発育について調べたことを説明しました。ここからは、僕がコーチとして、父母として考えた、年齢別のポイントを記します。

■幼稚園から1・2年生

この世代は、シンプルで「バスケが楽しい」と思わせて上げることが重要です。当たり前ですが「おっ、凄いね!」「できたじゃん!」と、とにかく褒めて上げましょう。
達成感を感じるために「まずは100回連続でドリブルしてみよう!」などと簡単な目標を設定して達成したら褒めてあげるのが良いでしょう。家に、小さなゴールを作るのも良いかもしれません。我が家では、ハンガーを丸くしてゴールを作って、丸めた新聞を投げて遊んでいました。「1・2・ポイ!」とか「マリオジャンプ!」とか、リズム感や、面白い言葉を使って指導するのも効果的です。
コーチであれば、ハイタッチするなどスキンシップをすることで、関係性を作りましょう。この時にコーチや仲間との関係性を強化できれば、大きくなって怒る時の信頼残高を作れます。また、父母は練習を見学してあげてください。たまに、スマホをいじっている父母もおられますが、たくさん見てあげて、帰り道やお風呂で褒めてあげてください。

■3・4年生

プレゴールデンエイジです。ここでは、運動神経を強化することが重要です。別で紹介しますが、コーディネーション・トレーニングを行います。手と足をバラバラに動かしたり、目で見て状況判断したりするゲームの様な練習を導入します。この年代は、競争させると盛り上がります。しっぽとりなども効果的です。
この世代から、基礎の動きを正確にできるように注意します。練習に慣れてきて、適当にこなし始めるのもこの世代です。このタイミングで、基礎の動きがきちんとできるか?は高学年になった時、中高生になった時に大きく違いが出ます。苦手な手のドリブルや、ステップワーク、首や指先の使い方なども、しっかりと指示してあげてください。できなくても、やろうとしていれば、多くは時間の問題でできるようになります。
次第に、試合に出場することがある世代ですから、なぜこの練習をするのか?など練習の目的や狙いを説明すします。正直、多くの子はちゃんと理解できていませんが、5年生以上になって試合にでると、ピン!とつながって、急にできるようになりますので、将来の布石となります。

■5・6年生

正に、ゴールデンエイジです。コーディネーション・トレーニングは続けるんが望ましいのですが、練習時間のなかで実践練習も行いたいことを考えると、バスケの動きの基礎練習でまかないます。3・4年生で指導した基礎的な動きを正確にできるように指導します。機会があれば、下の学年の子に教える機会をもたせると本人の理解も深まります。
基礎練習から試合の状況を抜き出した実践練習が増えてきます。作戦ボードを使った説明も増えています。うちのチームでは、チームプレーが多いので、全員がお約束の動きがを理解していないといけません。バスケノートを書かせたり、試合の組めない週末に集まってミーテイングしたりします。ちゃんとノートを書ける子は抽象理解ができるようになるので、いわゆる「バスケIQ」が高くなり、運動神経や運動能力を補うプレーができます。父母の皆さんには「ノートを見てあげてください。そこに書かれている指示についてだけ、できているか?できていない?をアドバイスしてあげてください。」とお願いしています。
5・6年生は、子供扱いをせずに接します。ここからは僕の趣味ですが、仕事のようなチーム・ミーティングを行います。「今のチームはどのレベルか?」「自分達は、どこまで行きたいのか?」「何をすべきか?」「自分の改善すべきこと?」「明日から実行すること?」などを、ポストイットに書き出して、ホワイトボード貼って話し合っています。自分で考えたことを、チームメイトに共有し、次につなげます。クレバーな子は、明らかに頭角を現してきます。

子供達への期待

練習を通じて、バスケをうまくなって欲しいと思っていますが、それ以上に、それによって自信をつけて欲しい。夢中になって取り組む姿勢を身に付けて欲しい。嬉し泣き、悔し泣きをする豊かな経験を将来の人生に繋げて欲しい。と思っています。恐らく、ほとんどのコーチが思っているでしょうし、父母の皆さんも、究極的には種目は何だって良いと思っていると思います。

スポーツを通じて、コミュニケーション能力が上がります。親子のコミュニケーションが増え、良い関係が継続できます。スポーツ・チームに入っていると、コーチやチームメイトの両親など斜めの大人と話すことが増えます。もちろんチーム内で喧嘩して仲直りしたり、話し合うこともあるでしょう。
スポーツを考えてやっている子は、物事を頭で考える習慣が付きます。有りたい姿と現状から自己努力の関係などを理解できるようになります。社会で起こっている自称もスポーツに置き換えて考えられるようになります。

子供のやりたい気持ちを一番に

最後に、子供が「バスケをやりたい!」と言った時点で、すぐにボールを買ってあげましょう。バッシュも買いに行きましょう。子供が「やりたい!」って自発的に言うことなんて、そんなに回数ないです。背中を押してあげてください。「これ格好良くない?」と前のめりで向き合ってください。
仮に、すぐに辞めてしまったら、今どきは、メルカリで売れますから。。

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