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「防潮堤を選ばなかった町、女川町で聴いてきた話・プロローグだよ」

 2019年夏、宮城県女川町を初めて訪ねました。港、きれいな街並み、おいしい海鮮、駅と駅の真上にある温泉。

 そんな女川町が、津波の被害に遭った被災三県で唯一防潮堤を選ばなかった町だということもこのとき初めて知りました。

 はた目には女川町の再生は成功しているように見える。10年目を迎える今、「遊びに行こうよ!」ってまっすぐ言える町だよ。

 2019年10月、令和元年台風19号の被害に多くの人が遭いました。関東地域も、福島県も、たくさんの土地で多くの方が水害に遭ってこれから復旧、再生しないといけないこともたくさん。

 あんまり考えたくないけど、多分また今後も災害は起きる。

 そのとき、女川町は再生の一つのモデルケースになるんじゃないのかな。そして防潮堤を選ばなかった町には、治水に臨む何かヒントがあるんじゃないのかな。

 そう思って台風19号の翌月、女川町に行ってきました。

 震災当時、女川町町会議員だった方、防潮堤の担当者だった方と三時間お話しできたよ。

 震災をきっかけに親しくなった、同じく津波の被害に遭った岩手県の友人と行った。彼女は震災復興に関わる仕事をしています。

 その友人が女川町のお二人と話したあと、
「本当は行政の人と話すのは気が重かったんだ。自分の地元のことを考えたら、いい話ができる、聴けると思えなかった。ああいう方たちがいるんだってことが知れて、希望になった」 
 そう言ってた。

 わたしもたくさんたくさん大切なことを聴いてきました。

 一概に、治水の答えがある話ではないです。ダムはいるのかいらないのか、防潮堤は必要なのかそうじゃないのか。簡単に二つに一つで答えが出るようなことじゃないよってことが、わかったと思う。ちょっと難しい話かもしれない。伝わるように一生懸命書きました。

 町の再生の話も、たとえば自分自身、一人の人間のこととしても大事なことが聴けた。

 たくさんの人に聴いてほしい話です。四回連載で始めるね。堅苦しい話も入るけれど、どうしても読んで欲しい。そのプロローグです。

 聴いてきた話の前に、今の私の話をします。ちょっと聴いてやって。

 今年の3月11日がきたら、震災から10年目と数えます。

 毎年その日の気持ちを書いてきた。どうしようもなく落ち込む気持ちを書き続けた頃もありました。でも前を向いて、何かできることがあるならがんばらなきゃって気を張って走り出したのが3年後だったと思う。

  2016年4月14日に熊本地震があって、その年に熊本に行き震度5の余震を経験しました。そのときにわたしは「震災のあと感じないようにしていた恐怖」を初めて感じた。

 恐怖を感じたら生きてけないから、感じないようにしていた蓋が開いた。そんな感じでした。恐怖を感じるようになってしばらくはかなりメンタルがやられてた。

 自分のこともなんとかちゃんと見ながら、津波の被害に遭った海岸を毎年歩いて、岩手県の友人と出会い、女川町の人々にも出会った。

 突然ですが、わたし今一年遅れで大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」をオンデマンドで観ています。

 たまたまなんだけど昨日の夜、第23回「大地」を観た。

 大正12年の関東大震災の日のこと。10万人以上が亡くなったり行方不明になったりした地震です。

 今までもドラマや映画で関東大震災を描いた映像はたくさん観てきた。
 でも初めて「自分の経験したこととシンクロ」して観た。

 あっという間に変わってしまう町、風景。行方がわからない人、再会して命があることを確認して抱き合った人。

 思い出しながら観て、すごく泣いた。

 それはわたしには、10年目を前にして多分いい変化だった。
 怖いこと悲しいこと辛かったことが、自分のことだったとやっと実感できた。

 阪神淡路大震災から25年目の、1月17日目の翌日だったというのもあったと思う。阪神淡路を経験した方々の言葉にたくさん触れたあとだった。誰かの経験、自分の経験が、また誰かや自分の力になったり助けてくれたりする。

 悲しくて辛くて怖かったことが、ちゃんと自分のことだと思えて、10年目を迎えます。

 震災との距離は、本当にみんな一人一人違うと思う。
 でも10年が経てば何かしらは心も動いて、変わる。そのときとは違う場所に、きっといる。

 時間は誰にでも等しくやさしいよ。

 やさしい場所に、できれば少し早くいけるように。

 そういう言葉を伝えられたらと願って、女川町で聴いたことを連載します。

 もうすぐスタート。読んでね!


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