葉山の海歩き
先日、思い立って湘南の葉山の海へ車で出かけた。
第三京浜、横浜横須賀道路を経由し、逗子で一般道へ、そして葉山の御用邸前を左折して立石駐車場へと。
立石とは、波打ち際に突き出した高さ12m、周囲約30mの巨岩の呼び名だそうである。
この地は古くから景勝地として知られ、初代歌川広重が『相州三浦秋屋の里』を描いたということで「かながわの景勝50選」にも選ばれている地とのことである。
立石駐車場の横にたたずむレストラン「DON」は、若いころから私のお気に入りのお店である。
創業して40年を超えるのではないだろうか?
目の前に相模湾、そして快晴時には富士山を望める佇まいで、一見カリフォルニアを思わせる陽光等で、私は若い時からとても好きな海辺のレストランのひとつであった。
私の好きなメニューは、シラスのサラダ、オニオングラタンスープ、ワタリガニのパスタ、鮮魚のカルパッチョ等である。
今年の4月以来、2か月振りに訪れた葉山の海は、真夏が近いということもあって輝きが一層増しているように思えた。
前回訪れた4月もそうであったが、今回も強く感じたことがある。
それは、大学生の時代から、私は、夏休みになると海辺の生活を満喫しながらこの地で長期間、アルバイトをし、社会人となってからも幾度と訪れていた場所であったが、往時と今とでは何かが違うのである。
かって、石原慎太郎さんが執筆した「太陽の季節」、弟の石原裕次郎さんの主演で大ヒットした映画の舞台でもあった葉山は、大変な数の観光客が押し寄せるような場所であった。
また、日本のヨット発祥の地でもあり、観光客に人気の「海水浴場」や歴史的建造物なども多く、「葉山ブランド」という言葉も流行った時代もあった。
然しながら、現在は、以前の華やかさが失われてきたのか、或いはコロナ禍による影響だろうか、的確に表現できないのだが、いずれにしても往時にこの地に流れていたものと、今のそれとは、全く違ったものになってしまったように思えてならない。
陽光降り注ぐ紺碧の海と立石の巨岩は、何も変わらずに存在しているのだが、すっかり変わってしまった私の状況や年齢が、往時との違いを強く感じさせるのだろうか?
往時の匂いと記憶から未だ、抜け出せないでいる私にとって、葉山の地は、単に往時の思い出に浸るだけの地となってしまったのだろうか?
寂しくもあり、残念でもある。
十年ひと昔という言葉のように、十年を一区切りとして世の中をみたとき、その間に著しい変化があるためか、ものの見方も感じ方も大きく変わってしまうのかもしれない。
世の中の一切のものは、常に変化し生滅して、永久不変なものはないということ。
まさに諸行無常を強く感じた葉山へのドライブであった。