想いをつなぐ
皆さん、「風の電話」ってご存知ですか?
会えなくなった人に想いを運んでくれる電話のことです。
東日本大震災の被災地、岩手県大槌町の海を望む丘の上にたたずんでいる白い電話ボックス。
中に置いてあるのは、電話線につながっていないただの黒電話。
この「風の電話」は、震災の2年前、庭師の佐々木格(いたる)さんという方によって作られました。
「癌」で他界した従兄弟と残された家族が、永遠につながることができる何かを、造れないかと考えたのが始まり。
佐々木さんは、中古の電話ボックスと黒電話を調達し、自分の庭に設置しました。
そして、周囲を「メモリアルガーデン」として整えたのです。
完成したのは偶然にも、東日本大震災の直後の2011年3月。
この風の電話には、これまで、国内外を含めて数万人の人たちが訪れているといわれています。
それは、一体、何故なのでしょう?
亡くなった人は見えない、声も聞こえない。
でも電話の向こうに、その人を感じることができる。
電話線はつながってないものの、亡き人との想いは、つながっている。
それが、生きる希望になり、心の再生力になるのかもしれません。
また今、亡くなった家族や友人が使っていたSNSのアカウントに、死後もメッセージを送り続ける人たちが、増えているそうです。
なにげない出来事を報告したり、生きていた時には伝えられなかった想いを吐露したり...」と。
それは、お礼であり、お詫びであり、感謝であり。
決して既読マークはつかないけれど、スマホの中では、今でも生き続けているのでしょう。
人は誰もが死ぬと、肉体はなくなりますが、目には見えないその人の魂のようなものは、どこかで生きているということなのかもしれません。
それゆえ、その人と自分とのつながりは、いつまでもなくならないのだろうと。
そう考えると、亡くなった人とつながっていたいという思いは、どの時代においても、どの国においても、形は変わっても極めて自然なことなのかもしれません。
命日にお墓参りに行ったり、花を手向けたり、仏壇の遺影に手を合わせるといったように。
20年以上前に、日本でも大ヒットした「千の風になって」という歌がありました。
それも、ある意味では同じなのだと思います。
肉体は滅んでも、精神や霊はどこかで生きている。
そして、残された人とは、「ずっとずっとつながっている。」
いや、「つながっていたい」という思いは、人間の普遍的な願いなのかもしれません。
「風の電話ボックス」の中に、「風の電話の詩」として掲げられている筆書きの詩があります。
. . . . . . .
あなたは、誰と話しますか。
風の電話は心でします。
風をきいたら想いを伝えてください。
想いはきっと伝わるでしょう。
. . . . . . .
思いもよらない大切な人の、突然の別れ。
残された者は、亡き人との別れを惜しみ、悲しむ。
そこに寄り添い、立ち直りのきっかけとなるものは本当にあるのでしょうか?
もし、あるのだとしたら、それは、「亡き人への風の電話」や、「亡き人へのメッセージ送信」など、目には見えない想いやつながりが、もたらしてくれるのかもしれません。
あなたは、誰と話しますか。
風の電話は心でします。
風をきいたら想いを伝えてください。
想いはきっと伝わるでしょう。
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