人と組織.2-組織における非合理さ

時折、クライアントである企業の経営陣から「わが社の若手社員の活性化」という依頼を受けることがある。

我々の場合は、仕事を始める前に、まず、対象となる若手社員の人たちと意見交換をする場を設けてもらい、対象者の意識や考え方の一端に触れる機会を持つことにしている。

そして、冒頭に「我が組織の課題」といったテーマで参加者が感じている組織上の課題を提起させ、参加者間で意見交換をさせるのだが、その際、参加者からかなりシビアな指摘が出てくる場合が多い。

例えば、

・うちの上司は、「部下に言っていること」と「自分がやっていること」が全然違うのは何故だろうか?

・会議など公式の場で「日常感じていることへの問題」をはっきり述べるとその場では、「君の意見は尤もである」的態度を示してくれるリーダーが、現実的には、「その種の意見を批判や否定」と受けとめるのは何故だろうか?

・うちの会社では、会議などで「億単位の事業の失敗や投資に関する議論」に時間を費やすよりも、「お茶菓子代やタクシー代の使い方への議論」に時間をかけるのに何故だろうか?

一見、笑い話のような課題ではあるが、課題そのものは異なっても、現実にこの手のレベルの課題は、組織の中には、非常に多いというのが現実である。

若手企業人からすると「なんて理不尽なんだ」ということであろう。

経済合理性を追及しているはずの企業組織で、このような理不尽なことが起きるのは何故だろうか?

多くの企業組織で汎用的に見受けられる課題は、

・組織としての決め事が徹底して実行されない。

・仕事のやり方が、これまでと本質的には全く変わってない。

・会議や打ち合わせ等で仕事の本質に向けた活発な議論がなされない。

・組織間に壁があり部門を超えて価値連鎖を追求しようとしない

・関心は自分の仕事だけで周囲や他部門に対して求めることをしない。

・現状の悪さ加減を冷やかに指摘はするものの自らが主体的に当事者としてそのことの解決のために動くようなことはしない。単に評論しているだけ

例えば、このような問題をどう捉えるかかであろう。

業績が上がっていれば関心を持たなくてもいい問題かもしれない。

景気が良かった時代、作れば売れた時代は、こうした小さな問題なんかを解決しなくても業績は上がった。

それは、市場の成長がこの手の問題を吸収してくれたから。

然しながら、本当にこれからの成長しない経済環境の中でこのような問題を解決せずに放置したままで業績が持続的に上がるのだろうか?

業績は好調だが、組織の実態は低調。

経営がうまくいかなくなる企業というのは、必ずといっていいほどやがて苦境に陥るような問題とか事象が、かなり前から組織の中に内在していたのであるが、些細な事、大した事では、ないと放置され続けてきたことがもたらした結果なのである。

そして、それが、やがて外部環境の変化への適応を妨げるような組織体質や風土につながっていくのである。

企業や組織の問題には「大きな問題」と「小さな問題」がある。

大きな問題とは、業績に関わるような問題、業績が悪化すれば、マネジメントの形相は変わる。

その為に、マネジメントは「小さな問題」を切り捨てる。

何故ならば、小さな問題は「大勢に影響ない些細なこと」だと捉えているからである。


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