人と組織.8-人も組織も賢くなる競争!
8月11日、日経新聞に、世界各国の政府や企業が、働き手のリ・スキリング(学び直し)に動き出したという記事があった。
新型コロナウイルス収束後の経済再開をにらみ、「今ある雇用の維持」から「デジタル関連などの成長分野」へ人材をシフトさせるためであると。
著名な日本の経営者の方が、「終身雇用の日本では、教育で人材競争力を高めるのが合理的である」と言われているが、そういう意味では、これからの企業間競争は、「学び直し」により、「より賢くなるための競争」といえるかもしれない。
変化する経営環境に的確に対応をするためには、古い体質から脱却して新しい体質に脱却しなければならないこと、そして、我々がこれまで経験から導いてきたパラダイムや直観をリセットしなければならないことは、自明の理であるが、これが簡単なようでなかなか難しい。
人間は、ずっとそのことを長くやっていたり、その業界で長らく仕事をしていると、その業界やその事業については、誰よりも精通している、或いは、わかっていると考えがちである。
そのために、これまで経験したことのないような変化等に接しても、これまで培ってきた自らの視点やパラダイムの中にそれを収めようとする。
然しながら、物事の本質を理解するためには、その業界やその事業への近さは、必ずしもプラスに働かないということが非常に多い。
むしろ遠くにあった方がよくわかる、よく見えているということは、たくさんある。
もうひとつ、人間には、未来は、最近の過去とほとんど変わらないものであってほしいという強い感情があるといわれている。
これにより、意思決定や判断を誤って決定的な状況に陥っていくというパターンはあまりに多い。
大事なことは、現実を直視して強い危機意識をもって未来を作っていく、そして、永続的な成長を目指して、常に自ら変革行動を起こしていくことが肝要であろう。
しかしながら、日本のリーダーは「解きやすい問題から手をつけ、難問は後回しにする」ことに長けた人材が多い。
それゆえ、問題の本質に切り込まず、目先の課題への対応に終始している場合が、非常に多いように感じるのは、私だけだろうか。
企業の低迷、衰退、消滅等の要因をどこに求めるのか?
企業経営の勉強会や今流行りの次世代経営者養成のテーマとして必ず取り上げられるものである。
企業の衰退や滅亡を「経営者の経営のやり方や経営能力に問題があった」という見方に立つか、「経営が順調であった間の判断や意思決定に、後々の失敗を招いてしまう何らかの要因が存在していた」という視点に立つのか。
MBA的には、大方は前者の見方であろうが、私は間違いなく後者である。
多くの企業組織を見てきて、この点に関する私なりの見解は2つある。
・短期的には一見、合理的と思われやり方を続けていくことが、長期的には状況を次第に悪化させていく。
・成功によるおごり、慢心や気の緩み
長期にわたる増収増益とか、拡大成長という成功は、長期的にはその中に失敗という種子を内包しているということではないだろうか。
成功というのは、いたく怖いことである。
「我々の事業は我々が一番よく知っている」、「よそ者に何がわかるか」等といった思い上がりと、耳の痛い話をしてくれる社内外の人間を遠ざける等といった動き。
要は、企業に永続性が必要であるとすれば、永続していくために何が大事で何が大事でないかということをよくわかっていないのであろう。
例えば、「成功の中に」、「うまくいっているという状況の中に」後々の失敗につながる芽を内包しているという知恵を身につけているにもかかわらず、何故、同種のことがたくさん生じるのだろうか?
非常に疑問が残る。
これは、頭ではわかっているものの、「自分達だけはそうはならないという驕り」と「本質を見てない、見えていない」というところであろう。
これまでの相次ぐ大企業の経営危機や経営破綻にも見受けられるように、人間というのはさほど賢くなったわけではなさそうである。
人間には、見えるものと見えないものがある。
知っているものと知らないものがある。
我々は、日々、ネットやテレビ、本等を通しておびただしい情報にふれているが、そうすると、「いろいろなことをたくさん知っている」という気持ちになったりするが、世の中は、知らないことだらけ、わからないことだらけ。
そう考えて謙虚になることがとても大事だと思う。
そういう意味で、リーダーに必要なことは、「自分が何も知らない」という自覚ではないだろうか。
無知で未熟な存在だと思えば、学ぶべきことがたくさんあることに気づく。
経営やマネジメントそして事業に必須な今の時代の新しい知識や感覚は、そんな自覚があってこそ学べるのではないだろうか。
また、「自分が何も知らない」ということを自覚する、そのことが、人間が成長していく上でもっとも重要なことである。
経営やマネジメント、人為的なものである限り、成功には謙虚である必要があるし、そういう意味で、これからの企業間競争は、「賢くなる競争」といえるのではないだろうか。
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