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THINK TWICE 20210926-1002

9月26日(日) わたくしの好きなモーズ・アリソン

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ザ・クラッシュ、ヤードバーズ、ザ・フー、ヴァン・モリソン、エルヴィス・コステロといった、イギリスのアーティストがこぞって彼の楽曲を取り上げているもんだから、ずっとイギリス出身だと思いこんでいた、ジャズ・ピアニスト/ヴォーカリストのモーズ・アリソン。初めてミシシッピ州ティッポ *1 生まれのアメリカ人で、2016年に89歳で亡くなりました。

*1 ティッポはいわゆる非法人地域(Unincorporated Area)のひとつ。非法人地域とは市町村といった、あらゆる自治体に属さないコミュニティのこと。もちろん日本には類する区分はありません。人口が極端に少なく、法人化する意味がない、というパターンや、住民の何かしらの意図によって選択されることもあるらしいのですが、この看板が象徴するように、モーズの出身地であることが地域の誇りになっているようですね。

ぼくがもっとも好きなモーズのアルバムは『Western Man』(1971年)。

ベースにチャック・レイニー、ドラムにビル・コブハムという最強のリズム隊を従えたトリオ編成で、軽妙で、脱力感のあるモーズのヘタウマなヴォーカル曲を中心にした作品。プロデューサーはジョエル・ドーン───アトランティックでハービー・マン、ローランド・カーク、ヒューバート・ローズ、ユセフ・ラティーフを手掛けていた彼が2008年に亡くなったとき、ロバータ・フラックやドクター・ジョンらと共に、モーズも追悼コンサートで演奏しました。

おすすめ曲はなんと言ってもA面1曲目の「If You Only Knew」。それとB面4曲目のレフティ・フリゼルのカヴァー「If You've Got The Money, I've Got The Time」が素敵です。

レフティ・フリゼルは1950年代に活躍した、カントリー・ミュージックを代表する歌手で、若き日にボクサーを志したくらい、腕っぷしの強い人だったようですが、モーズのヴァージョンは柳に風というか、自分からは決して手を出さず、相手のパンチを不思議な動きでゆらりゆらり交わすような雰囲気になってるところが大好きです。

このあと19時から村上春樹さんのラジオでモーズ・アリソンの特集がありまして、ぼくのおすすめとかぶるかどうか、楽しみに聞こうと思います。

それにしても。モーズ・アリソンの歌声を聴いていると、セサミ・ストリートに出てくるカーミット・ザ・フロッグを思い出してしまうのは、ぼくだけでしょうか?


9月27日(月) WORD IS LIFE

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録画していた日曜美術館「横尾忠則 ART IS LIFE」を観る。

「けっこう前から絵を描くことに飽きているけど、絵を描くことに飽きた自分が描く絵に興味がある。だから描くことをやめていない」と横尾さんがインタビューで話していて、思わず「わっ」と声が出ました。

あらためて自分の生活を眺め直すしたとき、ほとんどの行為がそれに当てはまる。その最たるものがこのnoteなわけ(笑)。

とっくの昔に飽きてるし、いつ止めてもいいと思ってるけど(止めないまでも更新頻度をもう少し落とすとか)、そのことはとりあえず置いといて、週に一回、かならず更新を続けている。そして、そのときいったい自分が何を書くのか───なんのために、とか、どううまく表現するかなんて向上心もすっかり抜けてしまったあと、自分がそれでも何について、どんなふうに書くかということに、興味を失っていないので、続けている。

書くことに飽きた他の人の文章は読みたいと思わないし(笑)自分の言葉だからギリギリ興味が持てる。だから、書いてる。それに誰かが価値を付けるか、付けないかなんて、いっさい興味がないという境地に至る───それこそがつまり《WORD IS LIFE》ってことになるんでしょうね。


9月28日(火) 待たせたな

今年公開が決まっている観たい作品。

・ドゥニ・ヴィルヌーブ『デューン 砂の惑星』(リメイク)
・スティーブン・スピルバーグ『ウェスト・サイド・ストーリー』(リメイク)
・『マトリックス レザレクションズ』(謎の復活)
・『ゴーストバスターズ アフターライフ』(こっちも謎の復活)

来年公開が決まっている観たい作品。

・クリント・イーストウッド『クライ・マッチョ』(御年91歳。今度こそ遺作になりかねない……)
・ウェス・アンダーソン『フレンチ・ディスパッチ』(待たせすぎ!)
・ギレルモ・デル・トロ『ナイトメア・アリー』(それより前にNetflixでストップモーションアニメ『ピノキオ』が公開されるはず)
・アピチャートポン・ウィーラセータクン『メモリア』(『ブンミおじさんの森』の監督の新作で、ティルダ・スウィントン主演)
・マット・リーヴス『ザ・バットマン』(ロバート・パティンソンに主役が交代)

そして、日本公開のアナウンスはまだ無いけれど、ポール・トーマス・アンダーソンの最新作『Licorice Pizza』も来年には観られるかな。

サンフェルナンド・バレーが舞台(PTAがここを舞台に選んで映画を撮るのは『ブギー・ナイツ』『マグノリア』『パンチドランク・ラブ』に続いて4本目)で、時代設定は1970年代(PTAが70年代を描くのを撮るのは『ブギー・ナイツ』『インヒアレント・ヴァイス』に続いて3本目)の青春映画。

主演は三姉妹バンド「HAIM」の末っ子アラナ・ハイム、男の子のほうは亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンの実の息子、クーパー・ホフマン。熱いねえ。


9月29日(水) SURVIVAL

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学食でごはんを食べながら、大学の同級生たちと他愛ない会話をしていたとき、なんで『ゴルゴ13』が床屋の待合によく置いてあるんだろう、というよくある話題から、同席していた友人のひとりが「さいとう先生の実家が床屋で、先生も漫画家になる前は散髪屋してたんだよ」としたり顔で言ったけれど、劇画の鬼のイメージと散髪屋のイメージが結びつかず、誰もまともに取り合いませんでした。でも、さっきウィキペディアにそのとおりのことが書いてあって、友人への申し訳なさと共に、剃刀をペンに握り変え、84歳まで現役を続けたさいとう先生への尊敬の念で胸がいっぱいです。

いま思えば、デューク東郷の髪型がどんなに動いてもいっさい乱れなかったのも、さいとう先生の理容魂の証だったのでしょうか。

ただ、ぼくはゴルゴより、どちらかと言えば『サバイバル』派。『サバイバル』が再読したくなり、電子書籍でまとめ買いしました。

主人公の少年サトルが突然、たったひとりでサバイバル生活に放り込まれ、無い知恵を振り絞って、生き抜くために戦いはじめる導入部分に、まだ小学生だったぼくは、もしも自分が同じ境遇になったとしたら? と想像して震え上がったことを今でも鮮烈に覚えていますし、ふつうなら旅の相棒となるような存在(たとえば『母をたずねて三千里』のアメデオとか『未来少年コナン』のテキィのような)が、無情にも一瞬で死んでしまったりするのも新鮮でした。

ひさしぶりに読み返すと、ラスト近くの展開は完全に忘却の彼方で、新鮮な気持ちで読みました。元プロ野球選手の辰野とのエピソード以降の───今は〈正伝〉から切り離され、『Another story』という外伝扱いにされている地熱発電所のある都市の話なんかは、けっこうしっかり覚えているけど、いよいよサトルが家族と邂逅できそうになる最後の村の話なんかはまったく覚えていなかったですね。

これも聴き覚えあるな〜。

荒廃した地球上を少年が知恵と勇気を振り絞って、たったひとりで生き抜くという物語の軸に、他の作品からの影響をうまいことブリコラージュしたのが『サバイバル』で、のちに知る『ホール・アース・カタログ』とか、あるいはぼくがコーマック・マッカーシー(『ノー・カントリー』『ザ・ロード』『ブラッド・メリディアン』)を大好きになったのも、原体験としてこの『サバイバル』があったんじゃないか、と思ったり。

そもそも『サバイバル』が連載されていた頃って、邦画も洋画もテレビも漫画も、パニック系やディザスター(災害)物がオンパレードで、巨大化した蜘蛛が(『巨大クモ軍団の襲撃』)街を壊滅する話とか、ネズミが人間に集団で襲いかかる(『ウィラード』)とか、そういう作品が年がら年中テレビで流れてた時代でした。

その裏付けとして、今、たまたま見つけた1982年の『ゴールデン洋画劇場』の放送リストを参考までにご覧あれ。

https://eigattehontoniiimonodesune.hatenablog.com/entry/15339085

大げさでなく3回に1回はその手の映画ですよ。まあ、それを娯楽として楽しめてた時代が懐かしいというか、それから40年後にまさかほんとうにこんな状況になるとは思いもしなかったですけど(笑)。


10月2日(土) LIFE DURING WARTIME

今日は祖母の誕生日。

大正5年(1916年)生まれだったので、もし生きてたら、105歳。つまり、第一次世界大戦のまっただなかに生まれた、彼女が30歳まで戦争と共に人生があったということ。

もっとしっかりその頃の話を聞いておけばよかったなあ、と、この歳になってよく考えてしまいます。

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