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【カナダ】「非公開の親密な個人的関係」とは何か 大手銀行CFOの解雇

BNN Bloogbergによると先日、カナダ最大手の銀行ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(以下「RBC」という)のCFOであるアン・ナディーン氏が解雇された。同氏は他の従業員と「非公開の親密な個人的関係」にあり、当該他の従業員は昇進や報酬アップなどの優遇措置を受けていた。そのことがRBCの行動規範違反となったようだ。当該他の従業員も解雇された。

カナダや米国の多くの大企業の行動規範では、従業員同士の個人的な関係は会社に報告しなければならないと規定している。「非公開(undisclosed)」というのは会社に報告していなかったということ。例えば、職場の上司と部下という関係で、かつ個人的に親密な関係にあると、今回にように社内で権力をもつ上司が部下を不公正に優遇したり、逆に部下から脅しの材料にするなどハラスメントの原因にもなりかねない。よって報告を受けた会社は、該当する関係者を別々の部署に配置するなどの措置をとることになる。

「個人的な関係」は、恋愛関係に限られない。親戚関係、ビジネス上の関係、金銭上の関係(貸し借りがあるなど)も含む。いずれも職場における不公正な扱いの温床になるからだ。

報告を躊躇する従業員が多いことは容易に察しがつく。まず北米では、個人のプライバシーに関する意識が高いため、行動規範に規定されているとはいえ、個人的な事情を会社に報告するのは相当ためらいがあるだろう。次に、いつ報告するかが難しい。最初はそれほど深い関係ではなくても、既成事実を重ねていくうちに報告すべきタイミングを逸してしまう。最後に、人間の判断が、見ず知らずの他人よりも親しい人を優先して傾向があることが研究で明らかにされている。2点目と3点目は人間の判断のバイアスが影響している(参考:Why Good Accountants Do Bad Audits)。

同じ記事によると、ナディーン氏への退職金は支払われない見込み。RBCの年次委任状(株主総会の参考書類のようなもの)によると、このような場合に経営幹部への退職金は支払われない。同氏の2023年における報酬総額は410万ドル(約4億5000万円)とのことだから、退職金も相当の金額になっただろう。似たケースとして、2019年に約120億円の退職金を返還した米マクドナルドのスティーブ・イースターブルック氏の事案がある。返還の一部経緯はこちら

RBCは、HSBCのカナダ事業を買収したばかり。おそらく統合作業を含め、会社全体に与える影響は小さいと思うが、急にCFO代行を頼まれたキャサリン・ギブソン氏は大変だろう。

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