AIによるディベートは、世界トップディベーターとの試合で感情も揺さぶる

つい先日、AIが世界トップディベーターとの試合を行ったことはご存知でしょうか?IBMの「Project Debate」では、過去にイスラエルのトップディベーターとAIが対戦し、AIが勝利したことから話題になりました。ではその次は、ということで世界大会準優勝、ヨーロッパ大会優勝等輝かしい成績を残している世界トップディベーターとの試合が行われました。

動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=m3u-1yttrVw

多くのディベート経験者が固唾をのんで見守る中、結果は人間の勝利。チェスのようにはまだいかない、というコメントが踊りました。

私も試合を見たのですが、競技者の審査員として試合を見ても人間の勝利でした。(もちろん、まさにこのトップディベーターの方と一緒に審査委員団も経験したことがあるので、心の中で応援はしてしまっていたかもしれませんが…)ただ、他の多くのディベート経験者の方も同じ意見でした。ただ、特筆すべきなのは、圧倒的にAIのディベート力が高いということです。それは、皆さんが想像される、証拠や根拠などを集められていることだけではありません。感情面にも訴えかけてきているところがすごいのです。

議題は、「保育園に補助金を拠出すべきか否か」でした。例えば、肯定側に立つAIの2回目のスピーチは下記のようにはじまります。

"...I sometimes listen to opponents and wonder.  What do they want?  Would they prefer poor people on their door steps begging for money?  Would they live well with poor people without heating and running water?  Giving opportunities to the less fortunate should be a moral obligation of any human being..."

貧困層に対して機会を提供する重要性を、感情に訴えかける描写を通じて訴えていることは言うまでもありません。

事実、否定側の人間も感情面により訴えかけざるを得ない戦略をとっていました。(もちろん、もともとそれが上手な方ではありますが。)

特に、即興型ディベートにおいては論理・感情の両面での訴求が重要となります。やや単純化すると、評価基準にもなっているからです。下記は、私が授業などでも用いている即興型ディベートのご紹介に関する参考資料です。

正直な感想として、AIがここまで来たか、ということと、今後はAI x 教育という掛け算で、よりディベート/プレゼン教育・研修が推進されると良いな、と思った日でした。そんな期待を持った試合でした。

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