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NHK俳句への投稿作・2月号②

2月号①の続きです。郵便投稿で見落としがちな絶対に気をつけてほしいことの理由により、しばらく一ヶ月遅れで掲載しています。


選者:夏井いつきさん 兼題「おでん」
週末の飯屋おでんの汁売り〼
ウィンナーがおでんの〆で悪いかよ
残るのはおでんの汁のやうな人

蛇泳ぐひかりのむちとして泳ぐ  夏井いつき

作者はきっと、泳ぐ蛇の美しさにみとれている。みなさん蛇を見てきゃっ怖い!と思われるでしょうか。私の住んでいるところはまあまあな田舎ですが、なぜかあまり蛇に出会ったことはなくて、だから蛇がいたら珍しさからじいっと観察してしまいます。シマヘビっていう全国どこにでも普通にいる蛇。なかなか綺麗ですよ。マムシには遭遇したことがない。蛇に脚があったら、ナメクジに殻があったら可愛らしさが生じるのはなぜなんでしょうか。


選者:山田佳乃さん 兼題「薬喰」
悪食の言ひ訳数多薬喰
深山に散骨希む薬喰
呑んべえのおっさんが来る薬喰

蓬伸び初む刈られても刈られても  山田佳乃

蓬の緑の美しい季節が巡ってきました。早春、私が一年で一番好きな時期です。そう蓬は生命力すさまじくって刈ってもどんどん伸びてくる。土筆やイヌノフグリは踏んだらかわいそう、とけるのに、蓬は「そのへんの草」くらいに思われている。おいしいのにね。むかし祖母が土手の蓬を摘んで草餅にしてくれました。蓬も土筆もほろ苦い早春の味。


選者:村上鞆彦さん 兼題「ストーブ」
ストーブにかき餅並べ休日や
ストーブは鍋を置く台三世代

クローバーに置く制服の上着かな  村上鞆彦

クローバーに制服の上着を置く場面を考えます。山田佳乃さんも2月号で書かれているように、昼間の校舎外と読みたい。春、田んぼ道を歩いている。水を張る前なので蓮華やクローバーが広がってて、その上を蝶々が舞っている。空には雲雀がぴいぴい鳴いている。なんかいい気持ち。そのまま田んぼに入っていって、上着脱いで、なんか、ぼうっとしたくなった。


選者:高野ムツオさん 兼題「靴」
初氷割るに相応し赤ヒール
履いてきたスニーカー捨つ初商
雪に靴とられて入試校舎まで

蓮根に空飛ぶ話もちかける  高野ムツオ

一生を泥の中で過ごす、あるいは天ぷらになって人間の胃の腑に落ちる運命の蓮根に空飛ぶ話をもちかけるというのは「石に花咲く」的なあり得ない行為に思えるのですが、高野さんにこんなユーモラスな句があるんだと私の中で発見でした。この句からことわざができました。「実際にあり得ないこと」=「蓮根空飛ぶ」。


「先生」と呼ばれるのが苦手な方も結構いらっしゃることがわかったので、「先生」表記をやめました。先生って付けられるの、おいやかもなあ・・・と思いつつ、一度そう表記したので変えられない・・・悶々としながら今までやってきましたが、思い切ってやめることにしました。表記が変わっても、もちろん敬意は変わりません。


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