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チープな初日

 最も印象深かったのは、コンビニが全然コンビニエンスでなかったことです。違う言い方をすれば、日本のコンビニがコンビニエンスすぎることを知りました。
 空港から市街の大きな駅へ出て、四週間の滞在を予定していた学生寮にたどり着くと、私は荷解きをして街の散策に出かけました。そこにはけたたましく鳴り響く信号機やその柱に備え付けられた筒状の灰皿など見慣れる者がたくさんありました。その中で最も私の目を引いたのは、見覚えのある看板でした。
「7 ELEVEn」
 そう書かれた看板を見ると、私は高揚と安堵を感じました。予期せぬ報酬を受け取った高揚感と有事の際の駆け込み寺を見つけた安堵でした。しかしその安堵は薄れてしまいます。なぜなら、そう、オーストラリアのコンビニは全然便利じゃなかったのです。
 コンビニに入って最初に驚いたことは、レジに鉄格子がはめられていることでした。店員さんがまるで囚人のように見えました。防犯対策ということで理解はできます。彼の後ろには黄色いラベルでタバコの銘柄が印字された棚が並んでいました。
 そしてさらに驚くことは、品揃えが悪いことです。そもそも日本の一般的なコンビニの三分の一程度の空間で、品数は少ないことは仕方がないでしょう。でも、そもそも棚がスカスカなのです。スナック類は割と充実していましたが、絆創膏やエタノールなどは欠品があるほどの品薄状態でした。
 まさか海外に来て最初に衝撃を受けることがこのようなチーオプなことになるとは予想していませんでしたが、そうなってしまったのだから仕方ありません。
 私は、コンビニを後にすると、道路(とトラムの線路)を跨いで向かい側にあった酒屋に立ち寄りました。そこで4.99ドルと書かれた白と赤両方のボトルワインを見つけて、私は赤いボトルをレジへ持っていきました。
 少し沈殿物があったけれどその渋い味わいは、その時の私にはとても調子が良かったことを覚えています。

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