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変化の激しい時代のSaaS企業の磨き方

最近の金融市場変化やウクライナ情勢などの地政学的変化に伴い世の中荒れ模様となっています。この2年でSaaS市場は活況でありPSRの倍率も軒並み高い水準になっていました。

先日、One capitalさんのエントリーでも素晴らしい記事が出ておりました。

MRRの獲得スピードがPSRへ最も高い相関であった時代から、収益性が問われる時代へと当たり前と言えば当たり前なのですが変化してきています。

そもそも何でSaaSはPSRなのか?

SaaS企業はプロダクトを作る前のProblem Solution Fitのフェーズ、MVPを考えProduct Market Fitをするフェーズ、獲得したuserをActive化させてバケツの水漏れを最小化するフェーズ、獲得方法を科学してCACを効率化させるフェーズ、Up & Cross Sellingを誘引するフェーズ、そして開発をし続ける「永遠のβ」という構造です。先に開発費用が出るし、人数も必要も必要。なのでJカーブにおける死の谷が長いのが特徴でもあります。

そうなると当たり前ですが成長はしているけれども常にコストが先に出る状態が長くなるため、資金調達を繰り返し、事業を成長させるケースが増えます。コロナ前およびこの金融&地政学的変化の前はお金が余っている状態で資金調達はしやすかったことからMRRの成長率がその会社の時価総額に最も大きな影響を与えていました。

しかしながら、元々SaaSとは将来の高い期待収益を生み出すからPSRという評価軸で企業価値算定がなされてきた訳です。

そもそもSaaSとはどうやって将来の期待収益の高さを証明し続けるべきなのか

SaaS先駆者たちが道を切り開き、彼らが上場をしていくプロセスでSaaSには事業の成長性、健全性、収益性の観点からさまざまな指標が生み出されていきました。一つひとつは何となく知っていてもそれが連環されていることがあまり声として上がってこないのは不思議です。

Unit Economicsとはその事業のROIを示しています。3xルールというのは他にも記事がたくさん出ていますからそちらに解説は譲りますが3xとは将来的に「粗利率」が高い前提で作られています。

そうなると、当たり前ですが「粗利率」が高くない限り3xを超えててもROIは合いません。SaaSだとCSの費用は売上原価ですし、一部の開発費用も売上原価に計上されます。売上成長が高くてもサポートやサクセス費用が線形で増えていけば粗利率は低い状態となります。

また、皆さんも知っての通り、SaaSにおけるLTVの計算にはARPUと月次のレベニューチャーンレート、そして粗利率で構成されています。よくこの月次解約率が1%を切るとか2%水準などと記載されているのですが、1%ってみなし契約継続期間が100ヶ月となりますし、2%で50ヶ月となります。こんなに実際にユーザーが使い続けるかなんて正直分からないのでUnit Economicsは実は理論値でしかなかったりします。

そうなってきますと、当たり前ですがPayback Periodという指標が次に重要になってきます。これは1社受注するのに必要な回収期間を示します。Payback Periodが12ヶ月を切ることが求められるのは年契企業が多いため少なくとも12ヶ月未満じゃないと投資回収できないからだったりします。

また、直近のマーケティング活動とチャーンの関係を示す指標であるQuick Ratioや、既存顧客からの追加発注を示すNRRなどは健全に成長をし続けるための指標として重要になっていきます。

上の図にもあるようにそれぞれの指標は連環し合っており、指標そのものの良い悪いだけで判断をするのではなく、そこの原因と対策をしっかりと定めていくことが重要になっていきます。

EX: CACを下げるという命題設定の場合、いかにOrganic比率を増やしてBlendec CACを下げるかみたいなことが重点テーマとなり、Owned mediaの強化や指名検索を高める施策が実際のHowとなっていくように。

これからのSaaS企業の成長戦略

  1. 収益性を高めるためにUnit Economicsを高める

  2. Payback Periodをしっかり短くする

  3. Quick Ratioを新規獲得と既存からの追加受注により4を目指す

  4. 粗利率を70%を超えて最大限高める

  5. 新規のみならず既存顧客からの追加発注を高めNRRを最大化する

シンプルに言ってしまうと「将来の期待収益」を高めるためには上記5点が必要になってきます。もちろんSub指標としてのSales efficiencyやMagic Numberなどにも基準がありますので知りたい人はご連絡ください。

最後に

僕はアナリストではないですし、経済学者でもないのでこの不況状態の出口は見えません。しかしながらコロナ禍を経験し日本においてもSaaSを使う企業は劇的に増えました。ユーザーがソフトウエアを使わなくなるどころかより生産性や効率性は問われる時代に入っています。

人が使われるものを作り、収益をしっかりあげていく。という商いの原理原則に変わりはありません。売上だけをあげる時代ではなくSaaS企業においてもPSRで評価を受けるには中身も磨かなくてはいけないのある意味当たり前だと思っています。

このカオスから新しいSaaSのフェーズが始まると僕は思っています。より中身を磨きユーザーに愛されるプロダクトおよび事業は長い目で見るときちんと市場から指示を受けられると思います。(実際にUSのtop tierのSaaSのPSRは30倍とか下がったとはいえ、ついています)

日本のSaaS業界がより進化するチャンスと捉えてこの状態を業界全体で乗り越えられたら幸いです。

僕の経営するdeflagは、SaaS企業の伴走をする会社です。少しでも相談したい方などはお気軽にfacebookのDMからご連絡ください。 


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