見出し画像

スタートアップにおける2年間の新卒エンジニア育成のふりかえり

こんにちは。
SpecteeでVPoEをしております、おーのAです。
2022年から、2度、そして今年度3回目の新卒メンバーを迎え入れたので、過去の経験をまとめたいと思いました。

私の経験談で書きますが、どなたかのご参考になれば幸いです。

前提

  • 弊社では新卒からの採用は長期インターンからの採用しか行っておりません。

  • 会社の方針や働き方についてミスマッチが起こることは最低限に抑えられています。

新卒メンバーの熱量を持続する

大事なのはこれだけと言っても過言では無いです。熱量さえ持続できれば新卒メンバーはガンガン成長してくれます。

私が新卒のとき、既存メンバーとの熱量の違いに打ちのめされた経験があります。特に、私は新卒がいわゆるJTCだったため、既存メンバーはあまり熱量が高いとはいえず入ってから、「え、会社ってこんなもんなの?」入社前とのギャップを感じていました。

一般論で言うと主語がデカすぎるとは思うのですが、新卒メンバーはやる気に満ち溢れ、熱量がとても大きいです。特に新卒の会社でスタートアップを選ぶような人たちの熱量の高さは本当に素敵だなと思います。そのようなメンバーの熱量をいかにして持続していくか、私はとても大事にしてきました。

以下、どのようなことに取り組んでいたか述べます。

進捗を支援する

新卒に限った話ではありませんが、「マネージャーの最も大切な仕事」でも紹介されている通り、進捗を出せるように支援することが重要です。

新卒メンバーの進捗を支援する、何をしていたか簡単に述べていきます。
1つ目は(突然スクラムの文脈で恐縮ですが)、プロダクトバックログアイテム、以下PBIを細かくすることを意識していました。とにかくスプリントに終わらせられるPBIをたくさん作ること。これにより、チームの進んでいる感覚を得られていたと思います。

逆にPBIが難しく、なかなか進捗が出ていない時もありました。そのような時にはチームの勢いが失われる感覚がありました。

ユーザーストーリーとして完結しないようなPBIも組んでいて、バックエンドだけ、調査だけ、といったPBIであっても良いので、とにかく終わるようなサイズにしていました。

また、スプリントレビューには取締役も呼んで開発成果を見せることで、メンバーの進捗を出せている感覚を養えていたと思います。

スキル獲得の支援は適度にする

本当にスゴイなと思うのですが、新卒メンバーの興味関心・成長意欲の高さには驚かされてばかりでした。

例えば、CI/CD何それ?と言う状況から静的解析、単体テスト、デプロイパイプラインの組み方を学んだり、あっという間の成長は眼を見張るものがあります
私からは間接的に「やってくださいねー」と言っただけで直接的な書き方を指導したわけではなくても、他のプロジェクトのリポジトリを参照したり、ググったり、ChatGPTに投げたりして、あっという間に自分達のスキルとして獲得していく姿は本当にすごいなと思っていました。
(私の保身のために言っておきますが、投げっぱなしのゼロサポートではありません)

やってみたけどうまくいかないこと、ちゃんとできてないこともあります。しかし、そういったネガティブなところに目を向けることはあまりしませんでした。彼らの成長する姿を見て、できるようになったことに目を向けて「いいじゃんいいじゃん」と肯定することが大事です。

「ちょっと気になってる」を全力応援

XXの技術のことがちょっと気になっているという話が出たりします。それが直接的にプロダクトに結びつくことで無いこともあります。
だからと言って否定するのではなく、全力応援することを行なってきました。直接的に会社の支援制度を使って支援できた、というわけではありませんが、取り組みたいことを個人的には応援するよ、という表明をしています。

また、熱量が高いため非常に感度が高いので外部のコミュニティ活動なども積極的に参加を表明してくれます。このような活動にはなるべく会社として支援で参加できるように努めてきました。今年に入ってスクラムフェス福岡で初登壇してくれたメンバーは昨年からカンファレンスへ積極的に参加してくれていた新卒2年目のメンバーでした。

支援・応援することが組織としても良いモメンタムを生んでいると考えています。

新卒メンバーであるがゆえに、何かに取り組みたくても、気を使ってなかなか言い出せないという雰囲気も感じていましたが、背中をそっと押してあげると勢いよく加速していく姿に改めて新卒メンバーの熱量の高さを感じています。

違和感を察知

新卒メンバーは初めての社会人生活であるがゆえに、違和感を感じていても言い出せない、もしくは、そもそも今の状態が「そういうものなのかな」と思ってしまう時があるようです。

組織運営的な観点で言えば、悪く言うと都合がよい利点でもあるのですが、必ずしも組織運営が健全であるわけではありません。そういった意味では、新卒メンバーのフレッシュな視点というのはとても貴重です。

この観点では、1on1や雑談の時間を効果的に活かしています。特に、普段との様子の比較や数ヶ月単位での比較を気にしながら対話をすることを重要視しています。

そのうえで直接的に聞いてみることが多いです。何がその様子の変化につながっているのか、それはポジティブな変化なのか、ネガティブな変化なのか、など。

基本的には他メンバーの1on1と何ら変わりありません。しかし、経験上、新卒メンバーは気を使ってなのか、気になっていることがあっても取り繕おうとすることが多いと思いなと思っています。だからこそ、取り繕おうとしている仕草、言葉に敏感になることが大事です。この件、後の「言葉だけが本心ではないので信じてはいけない」でも触れます。

やりたいこととのズレを合わせこむ

新卒で入ってくるメンバーは配属先のやることのイメージをあまりできてない場合が多いと思います。弊社の数人の新卒メンバーを見てきてそのように思います。

具体的には、機械学習エンジニアとして配属したメンバーが複数人いましたが、直近で彼らはプロダクトのエンジニアとして働いています。ただ、会社都合での異動でもあったことだけは記載しておきますが、結果的には選択肢を提示した上で選んでもらったことであり、組織都合で無理矢理、と言うわけではありません。(完全に弊社特有の状況ですが、この時期、機械学習エンジニアの採用があったので別の領域に移動できたということは記載しておきます)

1on1で話をしていると、メンバーの彼らの興味関心を知ることができます。特に新卒メンバーは新しいことを吸収したいと言う気持ちが強い傾向があるので、興味関心を惹かれていることをキャッチするのはそこまで難しくないと思います。

「あ、こんなことをやりたいのかな?」「ここやってる時楽しそうだな」という様子をうかがい知るのはそこまで難しいことではありません。

やりたいこととのミスマッチは本人のモチベーションに大きく影響していきます。そこには、せっかくの高い熱量が下がる危険性をはらんでいます。せっかくスタートアップを選んでくれているのだから、スタートアップの組織の柔軟性を活かして柔軟な対応をすることが大事です。

ただ、繰り返しになりますが、選択肢を提示した上で最終ジャッジは本人に選択してもらいました。

補足:熱量が高くない新卒メンバーはいないのか?

少しだけ補足しておきます。
熱量が高くない新卒メンバーもいるのでは?と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。私の素直な回答として「分からない」です。必ずしも元気さだけが熱量の証ではないと思うし、実際、彼は熱量低めなのかな?と思っていたメンバーがガンガンチームを引っ張っている姿も見ました。

私が観測する限りでは入社時の熱量が高くない新卒メンバーは「いない」と思います。ただ、入社後の状況で熱量が下がってしまっているメンバーはいると感じています。こういった状況に陥らないようにマネージャーが適切にサポートしていくことが重要です。

新卒メンバーの支援における反省点

サポートできない状況を作ってはいけない

私の経験として、私の他の業務との兼ね合いで彼らのサポートを薄めにした結果、大きく負担をかけたり、つらい思いをさせてしまったことがあります。

もちろん、彼らを信じて様々なことを委譲していくとはとても良いことです。しかし、新卒メンバーに委譲する上では、特に注意深く委譲していくことが重要だと考えます。

新卒メンバーにおいては熱量が高いが故か、社会人での失敗経験が少ないからか、原因は不明ですが、ダニング=クルーガー効果の「完全に理解した」の山への到達が早いように思います。場合によっては、「完全に理解した」の山からなかなか「ナンモワカラン」になかなか落ちていかないこともありました。もちろんそれらの経験を経て成長へとつながっていくので必ずしも否定するものではないです。しかし、その結果負担をかけ、つらい思いをさせてしまうのは好ましくない事態です。

こういった事態を避けるために、できていること、できていないことを認知してもらうことがとても重要です。委譲する際には、Management3.0のワークであるデリゲーションポーカーなどを用いて丁寧に行なっていくことが大事です。

言葉だけが本心ではないので信じてはいけない

「違和感を察知」でも記載しましたが、新卒メンバーと接していて彼らの中に言葉にならない違和感がある場合が多々あります。
実際、溜め込みすぎたが故に辛い思いをさせてしまったことが何度かありました。私としては本当に苦い経験として記憶されています。

何がいけなかったかというと、「あ、でも大丈夫です!」とか「何とかなってます」「頑張ってみます」と言った言葉を鵜呑みにしてしまったからだと思います。

蓋を開けると、社会人歴の長いメンバーに言いたいことを言えていない状況や、頑張りどきだと思って空回ってしまう状況を作ってしまっていました。

熱量の高さが故に、ある程度社会人経験のある落ち着いたメンバーとの不整合が生じやすいです。また、マネージャーに負担をかけたくないと言った気づかいもありました。

たくさんのメンバーと1on1をしてきましたが、「言葉で取り繕う」という傾向が新卒メンバーでは特に顕著に現れると思います。マネージャーとしては、言葉をそのまま受け入れるのではなく、コーチングのスキルなどを用いて何がどう大丈夫なのかにんちしてもらうことや、どう頑張るのか具体的行動につなげてもらうことが大切です。

モチベーションの低下を個人の問題にしてはいけない

新卒メンバーを見てきて、モチベーションの上がり下がりの振れ幅が大きい傾向があるように見えました。

そうすると、それに慣れてマネージャーとしてある程度のモチベーションの波があることを許容しがちです。しかし、それがチームへの違和感が故だったり、言葉にしにくい違和感だったり、個人の問題でないことがほとんどでした。

パフォーマンスが落ちていて、かつモチベーションが下がっているな、と思ったらそれを個人の問題だと思ってしまうと対策を打とうという気になりません。しかし、モチベーションの振れ幅が大きいがゆえ、下がった状態を放っておくと戻すことが難しくなります

逆に支援をしっかりしておけば、モチベーションの戻りが早く、再度熱量高く活動してくれるのがフレッシュな新卒メンバーの良さだと考えています

まとめ

2年間を通じて、私自身の未熟さで辛い思いをさせてしまったこともありました。そういった経験を経て学んできたことを整理してみました。2年間の話なので、まだまだ書ききれていないこともたくさんあると思います。

私たちのチームには今年も新卒メンバーが入ったので、彼とは2年成長した私として接していけると良いなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?