フォール
とおくなった空は面持ちをすなおにさせる
ぽっかりくちをあけ、まばたきを忘れるトーコ
ゆったりとした白鯨の群れはあまりにも近くを泳ぐから
その影から出て また影にはいる ぼくら
うるおった地表のうえをすべる雲
虚空からの俯瞰へとぼくは連れ去られ
瞬間とてつもないスピードで
彼女の傍らへと墜とされた
ふたたび空を見上げて立ち眩んだ
つめたい突風があしもとをさらう こがねの葉っぱをふきとばす
ぼくは生きて居り、娘のやわらかな手をにぎりかえした
彼女のまなこはこの惑星の縮図なんだ
ちいさな鼓動は空の果てにつながっていて
世界は 例えようもなく美しい
初稿:2006/10/01
Ⓒ2022 Akira Yoshiyama and AKIRA
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