ギリ使える粗大ゴミ
勝手にフランスの歴史とフランス語を解説するコーナーです。いよいよ粗大ゴミですが、やはりそのまま捨てるには惜しいものですから、ここに納めます。
今からおよそ400年前、17世紀中頃のフランスに、ルイ14世という国王が即位しました。
「世界史といえば、何を思い浮かべますか?」といろんな人に質問したら、おそらく「フランス革命」が1位になるんじゃないかと思いますが、それに次いで「ルイ14世」もいい順位につけるのではないでしょうか。それくらい、なんとなく有名な人だと思います。
さて、ルイ14世といえば、「太陽王」の異名を持つ、ブルボン朝絶対王政の最盛期を築いた国王として知られています。
ブルボン朝のような、「〜朝」というのは、「〜家の人が世襲で治めている国」といった意味です。フランスの歴史では、他にもカペー朝やヴァロワ朝などの王朝がありましたが、それらの変遷はあくまで為政者の変遷であって、フランス王国という国そのものは変わっていません。日本の歴史でいえば、鎌倉時代が源朝、江戸時代が徳川朝といった感じでしょうか。
そして、絶対王政というのは、王様が絶対的な権力を持った国(政体)という意味です。こちらは分かりやすいですね。
この話は実はかなり深くて、私も完璧に理解はできていません。「国」の意味が現代の感覚とは異なっていますからね。このあたりのお話が、実はフランス革命の歴史的意義といった話にも繋がってくるのですが、興味があれば調べてみてください。私もまだまだ勉強します。いずれその話も記事にするかもしれません。
話を戻すと、つまり、ルイ14世というおっちゃんが(即位時はまだ幼少期ですが。)絶対王政のブルボン朝を引き継いで、フランスの勢いを絶頂までバイブスぶち上げたという感じです。
さて、そんなルイ14世が言ったとされるこんな言葉があります。
「朕は国家なり。」
うむ。かっこいい。。一応ですが、朕(ちん)というのは、天皇や皇帝の一人称です。1945年の昭和天皇による終戦時の玉音放送は、
「朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ、(中略)爾臣民ニ告ク。」
という一文で始まります。
「私(=昭和天皇)は深く世界の情勢と帝國(=日本)の現状について考え、(中略)あなた方国民に告げる。」
という意味です。
話を本筋に戻します。「朕は国家なり」はフランス語で、
L'État, c'est moi. (レタ セ モア)
といいます。L'État は、Le État を引っ付けたもので、「その国」という意味です。le(ル)は「その」という意味で、英語の the に相当します。(文法用語で言うと定冠詞というやつです。)
État(エタ)は「国」という意味で、英語の state に相当します。ですから、le と État を合わせて「その国」となるわけです。
しかし「ル エタ」では母音が連続していまい、「レタ」となってしまいますよね。なのでこれらは引っ付けられて L'État (レタ)となります。「その国」は、もちろん具体的にはフランス王国のことを指しています。
次に、c'est(セ)ですが、「それは〜です。」という意味で、英語の it is に相当します。この場合、後ろにあるのは moi(モア)という単語ですが、これは「私」を意味しますので、c'est moi で「それは私です。」となるわけです。(勘のいい読者様はお気づきかもしれませんが、c'est も ce est の2つが引っ付いてできたものです。順にそのまま it is に対応します。)
さてまとめます。以上のことから、L'État, c'est moi.(レタ セ モア)を直訳すると、
「その国、それは私です。」
The State, it is me.
となります。ルイ14世が言ったとするならば、もう少しお洒落に翻訳して、
「朕は国家なり。」
となるわけです。
いやしかし、なかなか面白い言葉ですね。「私こそが国家なのだ。」とは、まさに絶対王政の絶頂期を象徴する言葉ですし、たった6文字ですが、この美しい日本語を生み出した最初の人にもただ感服です。
ちなみに、私は小学生か中学生くらいの時に「朕は国家なり。」と初めて聞いた時、「省略したら『ち◯こなり。』やん。」とひとりで面白がっていました。こんな不届き者は、17世紀フランスだったら0.1秒でグッバイですね。今が平和な21世紀で良かった。
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