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フランス語学習のすゝめ

 勝手に身の回りのフランス語を解説するコーナーです。さらに願わくば、読者の皆様をフランス語学習へと誘えたらいいなというコーナーです。読者そんなにいないけど(定期)。

 行列のできるケーキ屋さん「キルフェボン」

 人気のタルト・ケーキ屋さんの「キルフェボン」。とても美味しくて、いつも行列ができている超人気店ですよね。

 さて、キルフェボンはフランス語の Qu'il fait bon. という文のカタカナ読みです。看板にもこの文がお洒落な筆記体で書かれています。意味は、「なんて良い天気なんだ。」という感動を表しています。

 まず冒頭の、Qu'il(キル)ですが、これは Que(ク)と il(イル)が引っ付いたものです。なぜ引っ付くかというと、「ク イル」だと母音が連続してしまって「キル」と発音する方がスムーズだからです。
 そして、はじめの Que は、単に文の頭につけて感動の意味を表す単語です。すなわち、Que を差し引いた il fait bon(イル フェ ボン)は、感動の意味が差し引かれて、単に「良い天気だ」という意味になります。

 では、この il fait bon を解説していきます。まず、はじめの il(イル)が主語になるのですが、これがいきなり説明が難しく、「天気や状況を漠然となんとなく表す主語」で、特に決まった訳がありません。
(英語をご存知の方は、同じく天気や状況を表す it があるのを知っていると思いますが、それと同じです。)

 そして、天気を指す il が主語に来たら、動詞として fait(フェ)を使うことがお決まりになっていますので、

il fait 〜.(イル フェ 〜)

で、「〜な天気だ。」「天気が〜だ。」という意味になる決まり文句です。そして、bon(ボン)が英語の good に相当する、「良い」という意味の形容詞ですから、これを後に置いた

il fait bon. (イル フェ ボン)

で、「良い天気だ。」という意味になるわけです。(※大文字のアイと小文字のエルが紛らわしいので、あえて文頭を小文字にしていますが、本来は大文字です。)

 ただし、実際には天気が良いことを言いたい時には、「美しい」という意味の beau(ボー)を使って

il fait beau. (イル フェ ボー)

と言うことが多いです。他にも形容詞を変えてやれば、

il fait chaud. (イル フェ ショ)
暑い(天気だ)。

などと言うこともできます。

 【ここから沼地】
 天気を表す主語と動詞 il fait は、同じく英語の it is と同様に、対応する明確な和訳はありません。この動詞の fait は、元は faire(フェール)という形で、主語が il の時には fait と活用することが決まっています。faire は、英語の do に相当する語です。すなわち、一応のところ単語帳などでは訳は「する」とか書かれますが、実際には英語の do と同じく、実に多様な意味を表すことになります。
 faire は、そうしたよく使われる動詞の癖に、活用が不規則なので初学者泣かせです。フランス語の動詞は、元の形にした時に、大部分が -er で終わりますので、-re で終わっている時点で既にマイノリティーです。さらに、他の -re動詞とも少し違った活用をします。
 活用を覚えることは本当にしんどいのですが、そこにある種のマゾヒスティック的な喜びを見出した時、気づけばフランス語学習の沼にハマって抜け出せなくなっているのです。

 というわけで、「Qu'il fait bon. なんていい天気なんだ。」の解説でしたが、なかなか良い言葉ですよね。

 なにかと大変なご時世ですし、そうでなくてもみんなそれぞれ大変な何かを抱えて社会を生きていて、そして娯楽といえばスマホぐらいなものですから、どうしてもふさぎこみ、下を向きがちです。

 日常生活で少しでも空を見上げて「なんて良い天気なんだ。キルフェボン!」と言える暮らしができたら素敵ですね。そしてティータイムにはもちろん、「キルフェボン」のケーキを。

 私、キルフェボンのケーキ食べたことないのですがね。

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